あんたの温もりがいい
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5.
「…ちょ……兵長」
体を優しく揺すられ目を開けると彼女の顔が目の前にあった。
「兵長。朝ですよ…でも体が……」
眉をひそめてこっちを見る彼女。
それを見ただけでどうなってるのか分かった。
ーーまたガキの体になっちまったか
「おいっ!イバイ!起きろ!」
「こらっ!まだイバイくんは小さいんだから無理に起こさないの!」
バンっ!と勢いよく扉を開けるなり弟が叫ぶ。
こっちは寝起きが最悪で機嫌が悪いというのにさらに眉間に皺がよる。
"兵長、顔が怖いですよ"
ボソっと耳打ちされ視線だけで彼女の方を見るとクスリと笑っていた。
「さっ。あんたはお母さんの所に行きなさい」
「えー。イバイと遊ぶー」
「イバイくんは起きたばかりでこれからご飯なの」
ちぇ、と弟がつまらなさそうな顔をして部屋を出て行った。
「すみません、兵長。弟がうるさくて」
女は弟が出たのを見て苦笑しながら話しかけてきた。
「いあ(いや)…」
「兵長は兄弟とかは?」
「いてーな(いねぇな)」
「そうなんですね…一人は寂しくなかったですか?」
そんなことを聞かれ地下街での出来事や一緒に過ごし仲間の顔も思い出した。すると温もりを感じて顔を上げると女に抱きしめられていた。
「兵長…ごめんなさい…変なことを聞いて……」
だからそんな悲しい顔をしないで下さい、とぎゅっと抱きしめられた。
ーー悲しい顔?この俺が?
自分はそんな顔をしたつもりはないが女がそう言うくらいだ。そうだったのだろう。抱きしめる女の温もりはやはり心地よく思わず抱きしめ返した。と、言っても体は小さいので肩の辺りを掴んだだけだが。
「べちゅにたなちくない(別に悲しくない)」
そう言うも上手く喋れず舌打ちをすると女が小さく震えている。
「へいちょ……笑ってないですからね…」
彼女の口からそんな言葉が聞こえ眉間に皺が寄る。
「あたってんだじぇーか(笑ってんじゃねーか)」
「いえ、そんな…ふっ…」
小さく震え笑いを堪えてる女をひと睨みすると目が合った瞬間に顔が青ざめていた。
「ご、ごめんなさい…」
「あぁ」
低くはない声で短く応答をする。
彼女は今日非番のようで朝はゆっくり過ごした。今は彼女の膝に抱えられて座っている。そうしないと弟がちょっかいを出してきて面倒だからだ。膝の上で腕組みをしていると彼女の母親がそれを見て笑っていやがった。悪いわけではないが人に笑われるのは気に入らない。しかも今は子どもの姿だ。尚更気分が悪くなる。女はそれを感じ取ったのか「あんまり笑わないであげて」と声をかけていた。
ーーしかし…やはり人様の家は落ち着かねぇな
女の服を引っ張ると耳打ちする。
「ここおでりゅ。とんぶにいちぇ
(ここを出る。本部に行け)」
「本部にですか?」
女が小声で確認するのでコクンと頷く。
わかりました、と女は返事をすると着替えに行く。
自分も昨晩洗っていた子供服が乾いたようでそれに着替える。
ーーまぁ…細かいところは気になるが仕方ない
自分で着替えようとするが上手くいかずイライラが募る。
ーー着替えづれぇな…
「兵長。いつも通りにしてしまうと着替えづらいですよ。出来ると思いますのでゆっくりやってみて下さい」
女が小声でそう話しかけてくるのを横目で見て小さく息を吐くと女の言うようにゆっくり一つずつ確実に服を来ていく。そうすると案外着れるもので達成感が芽生え顔が綻ぶ。しかし体は子どもでも頭の中は30手前の男だ。緩んだ気持ちを引き締めるかのようにすぐに鋭い視線を女に向けた。
女は微笑むと自分を抱き上げ調査兵団の深緑のマントを羽織る。
「準備が出来たようなので行きましょう」
女は母親と弟に急な用事を思い出したと言って家を出る。弟は少し寂しそうにしていたが最後は「ばいばい」と手を振り、自分も手だけ挙げるとニパッと笑って見送っていた。
家を出るとマントに隠れるようにして身を少しだけ縮め女の腕に抱きかかえられる。女の温もりと歩く振動と鼓動の音を体で感じ睡魔が襲ってきた。
「兵長。本部に着いたらどこに向かいましょう?」
女が質問してくるが既に微睡んでいる。
答えなければと口を動かすが眠たさには勝てなかった。
「おでの……」
そこまで言うと意識を手放してしまった。
「…ちょ……兵長」
体を優しく揺すられ目を開けると彼女の顔が目の前にあった。
「兵長。朝ですよ…でも体が……」
眉をひそめてこっちを見る彼女。
それを見ただけでどうなってるのか分かった。
ーーまたガキの体になっちまったか
「おいっ!イバイ!起きろ!」
「こらっ!まだイバイくんは小さいんだから無理に起こさないの!」
バンっ!と勢いよく扉を開けるなり弟が叫ぶ。
こっちは寝起きが最悪で機嫌が悪いというのにさらに眉間に皺がよる。
"兵長、顔が怖いですよ"
ボソっと耳打ちされ視線だけで彼女の方を見るとクスリと笑っていた。
「さっ。あんたはお母さんの所に行きなさい」
「えー。イバイと遊ぶー」
「イバイくんは起きたばかりでこれからご飯なの」
ちぇ、と弟がつまらなさそうな顔をして部屋を出て行った。
「すみません、兵長。弟がうるさくて」
女は弟が出たのを見て苦笑しながら話しかけてきた。
「いあ(いや)…」
「兵長は兄弟とかは?」
「いてーな(いねぇな)」
「そうなんですね…一人は寂しくなかったですか?」
そんなことを聞かれ地下街での出来事や一緒に過ごし仲間の顔も思い出した。すると温もりを感じて顔を上げると女に抱きしめられていた。
「兵長…ごめんなさい…変なことを聞いて……」
だからそんな悲しい顔をしないで下さい、とぎゅっと抱きしめられた。
ーー悲しい顔?この俺が?
自分はそんな顔をしたつもりはないが女がそう言うくらいだ。そうだったのだろう。抱きしめる女の温もりはやはり心地よく思わず抱きしめ返した。と、言っても体は小さいので肩の辺りを掴んだだけだが。
「べちゅにたなちくない(別に悲しくない)」
そう言うも上手く喋れず舌打ちをすると女が小さく震えている。
「へいちょ……笑ってないですからね…」
彼女の口からそんな言葉が聞こえ眉間に皺が寄る。
「あたってんだじぇーか(笑ってんじゃねーか)」
「いえ、そんな…ふっ…」
小さく震え笑いを堪えてる女をひと睨みすると目が合った瞬間に顔が青ざめていた。
「ご、ごめんなさい…」
「あぁ」
低くはない声で短く応答をする。
彼女は今日非番のようで朝はゆっくり過ごした。今は彼女の膝に抱えられて座っている。そうしないと弟がちょっかいを出してきて面倒だからだ。膝の上で腕組みをしていると彼女の母親がそれを見て笑っていやがった。悪いわけではないが人に笑われるのは気に入らない。しかも今は子どもの姿だ。尚更気分が悪くなる。女はそれを感じ取ったのか「あんまり笑わないであげて」と声をかけていた。
ーーしかし…やはり人様の家は落ち着かねぇな
女の服を引っ張ると耳打ちする。
「ここおでりゅ。とんぶにいちぇ
(ここを出る。本部に行け)」
「本部にですか?」
女が小声で確認するのでコクンと頷く。
わかりました、と女は返事をすると着替えに行く。
自分も昨晩洗っていた子供服が乾いたようでそれに着替える。
ーーまぁ…細かいところは気になるが仕方ない
自分で着替えようとするが上手くいかずイライラが募る。
ーー着替えづれぇな…
「兵長。いつも通りにしてしまうと着替えづらいですよ。出来ると思いますのでゆっくりやってみて下さい」
女が小声でそう話しかけてくるのを横目で見て小さく息を吐くと女の言うようにゆっくり一つずつ確実に服を来ていく。そうすると案外着れるもので達成感が芽生え顔が綻ぶ。しかし体は子どもでも頭の中は30手前の男だ。緩んだ気持ちを引き締めるかのようにすぐに鋭い視線を女に向けた。
女は微笑むと自分を抱き上げ調査兵団の深緑のマントを羽織る。
「準備が出来たようなので行きましょう」
女は母親と弟に急な用事を思い出したと言って家を出る。弟は少し寂しそうにしていたが最後は「ばいばい」と手を振り、自分も手だけ挙げるとニパッと笑って見送っていた。
家を出るとマントに隠れるようにして身を少しだけ縮め女の腕に抱きかかえられる。女の温もりと歩く振動と鼓動の音を体で感じ睡魔が襲ってきた。
「兵長。本部に着いたらどこに向かいましょう?」
女が質問してくるが既に微睡んでいる。
答えなければと口を動かすが眠たさには勝てなかった。
「おでの……」
そこまで言うと意識を手放してしまった。