物語の続きを君と
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8.
Erwin side
「エルヴィン分隊長。例の件について報告が」
「ああ。頼む」
彼女とメモを挟んだ本のやり取りをしなくなってから数ヶ月が経った。季節は移りゆき白い息が冬の訪れを表している。あの場所に行きたいが、ここ最近悪い噂を小耳に挟み内地へ行ってもあの本屋へ足を運ぶどころではなくなってしまった。
今、それについて内密に頼んだ調査報告を聞く。
これについては噂を聞いた直後、後々彼女にも関係してくるのではないかと推測して自分と関わらないようにしていることもある。自分が彼女と接点があっては不利なことがあると踏んだからだ。
それは何故か。
彼女の服装から身の振り方、話し方、全てを見て良い家柄の出ということは接してみて分かった。
——彼女は恐らくどこかの貴族の令嬢の可能性が高い
噂というのは権力を持った貴族の話だ。
まだ彼女が貴族令嬢と決まったわけではないが可能性がある限り不安要素はなくしておきたい。今の内ならまだ関係性も周りには知られていないはずだ。
──彼女を巻き込みたくない、その気持ちもあるが…
そうならないであってほしいという願いが頭の片隅にチラついて消えなかった。
「ジェンキンス氏?」
「はい。渦中の人物の周りに複数の貴族が関わっているようです。一番近くにいる貴族の名がジェンキンス氏ということが判明しました」
部下からその名前を聞いて瞬時に彼女の顔が浮かんだ。
──まさか、な…
考えを振り払うかのように目を閉じる。
「では、そのジェンキンス氏について調べてくれ。くれぐれも周知されないように。苦労かけるがよろしく頼む」
「はっ!」
次の指示を出すと部下は返事をして部屋を出て行く。
ーーーーー
数週間後。
ジェンキンス氏について調査していた部下から報告が上がる。渦中の人物の周りにいる他の貴族達のことも調べてもらっておりある程度のことは予想はついた。
「やはりな」
今報告を聞いていたが自分が考えていた通りで一言呟くと部下に背を向けて窓辺に立つ。
「ジェンキンス氏は命に関わるような弱みを握られているようです。それを利用して表と裏、両方であの男 の駒として動いることが分かりました」
今その弱みについて調査中です、と部下が話すのを聞き自分もそれについて考える。
──命に関わる程の弱み…
考えられるられる候補をいくつか思いついているところで部下が更に言葉を続ける。
「それからこれは噂とは直接関係はないかと思われますがあの男と彼との繋がりでもありますので報告を…」
「なんだ?」
「はっ。彼の家族に娘が何人かいるようでその中から自分の息子と婚姻を結ぶ手はずを踏んでいると」
「そうか」
念のためそれについても調べるように部下に頼んで仕事に戻る。渦中の男に関係する事なら小さな情報でも逃したくはないところもあるが調査をして男に近付けば近付くほど胸騒ぎがして落ち着かない。
──彼女でなければいいのだが…
しかしその予感は当たってしまう。
彼女と連絡を取らず例の噂の件を調べ始めて半年になろうとする頃、渦中の男の息子とジェンキンス氏の娘の婚姻の話について調査報告を聞いた。
「ハル…?」
「はい。婚姻の話について調査した結果、ハルという女性であることが判明致しました」
その名前を聞いた瞬間、嫌に心臓が脈を打った。部下に背を向け窓から外を見る。同姓同名かも知れない、だがほぼ彼女で間違いはないだろう……。
──彼女はもうすぐ婚姻を結ぶ…
恐らく彼にとっては娘を人質にとられるようなものだろう。しかし婚姻は婚姻。その事実を知り彼女の笑顔が遠のいてしまうのを感じた。
「それから彼の弱みですが……」
部下からその話を聞き目を見開いた。
ここでも自分の推測が当たる。彼女と話した事を思い出してある考えに至っていたからだ。そういうことなら彼も彼女も救えるのかもしれない。
彼に内密に会う手筈を踏みその時を迎えた。
季節は雪がしんしんと降り注ぎ、本格的に冬の到来を告げていた。
Erwin side
「エルヴィン分隊長。例の件について報告が」
「ああ。頼む」
彼女とメモを挟んだ本のやり取りをしなくなってから数ヶ月が経った。季節は移りゆき白い息が冬の訪れを表している。あの場所に行きたいが、ここ最近悪い噂を小耳に挟み内地へ行ってもあの本屋へ足を運ぶどころではなくなってしまった。
今、それについて内密に頼んだ調査報告を聞く。
これについては噂を聞いた直後、後々彼女にも関係してくるのではないかと推測して自分と関わらないようにしていることもある。自分が彼女と接点があっては不利なことがあると踏んだからだ。
それは何故か。
彼女の服装から身の振り方、話し方、全てを見て良い家柄の出ということは接してみて分かった。
——彼女は恐らくどこかの貴族の令嬢の可能性が高い
噂というのは権力を持った貴族の話だ。
まだ彼女が貴族令嬢と決まったわけではないが可能性がある限り不安要素はなくしておきたい。今の内ならまだ関係性も周りには知られていないはずだ。
──彼女を巻き込みたくない、その気持ちもあるが…
そうならないであってほしいという願いが頭の片隅にチラついて消えなかった。
「ジェンキンス氏?」
「はい。渦中の人物の周りに複数の貴族が関わっているようです。一番近くにいる貴族の名がジェンキンス氏ということが判明しました」
部下からその名前を聞いて瞬時に彼女の顔が浮かんだ。
──まさか、な…
考えを振り払うかのように目を閉じる。
「では、そのジェンキンス氏について調べてくれ。くれぐれも周知されないように。苦労かけるがよろしく頼む」
「はっ!」
次の指示を出すと部下は返事をして部屋を出て行く。
ーーーーー
数週間後。
ジェンキンス氏について調査していた部下から報告が上がる。渦中の人物の周りにいる他の貴族達のことも調べてもらっておりある程度のことは予想はついた。
「やはりな」
今報告を聞いていたが自分が考えていた通りで一言呟くと部下に背を向けて窓辺に立つ。
「ジェンキンス氏は命に関わるような弱みを握られているようです。それを利用して表と裏、両方で
今その弱みについて調査中です、と部下が話すのを聞き自分もそれについて考える。
──命に関わる程の弱み…
考えられるられる候補をいくつか思いついているところで部下が更に言葉を続ける。
「それからこれは噂とは直接関係はないかと思われますがあの男と彼との繋がりでもありますので報告を…」
「なんだ?」
「はっ。彼の家族に娘が何人かいるようでその中から自分の息子と婚姻を結ぶ手はずを踏んでいると」
「そうか」
念のためそれについても調べるように部下に頼んで仕事に戻る。渦中の男に関係する事なら小さな情報でも逃したくはないところもあるが調査をして男に近付けば近付くほど胸騒ぎがして落ち着かない。
──彼女でなければいいのだが…
しかしその予感は当たってしまう。
彼女と連絡を取らず例の噂の件を調べ始めて半年になろうとする頃、渦中の男の息子とジェンキンス氏の娘の婚姻の話について調査報告を聞いた。
「ハル…?」
「はい。婚姻の話について調査した結果、ハルという女性であることが判明致しました」
その名前を聞いた瞬間、嫌に心臓が脈を打った。部下に背を向け窓から外を見る。同姓同名かも知れない、だがほぼ彼女で間違いはないだろう……。
──彼女はもうすぐ婚姻を結ぶ…
恐らく彼にとっては娘を人質にとられるようなものだろう。しかし婚姻は婚姻。その事実を知り彼女の笑顔が遠のいてしまうのを感じた。
「それから彼の弱みですが……」
部下からその話を聞き目を見開いた。
ここでも自分の推測が当たる。彼女と話した事を思い出してある考えに至っていたからだ。そういうことなら彼も彼女も救えるのかもしれない。
彼に内密に会う手筈を踏みその時を迎えた。
季節は雪がしんしんと降り注ぎ、本格的に冬の到来を告げていた。