物語の続きを君と
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6.
ヒロイン side
途中であの本屋の前を通り過ぎる。だが、戻って本屋の扉を開けた。そこには店主が本の整理をしており自分の姿を見かけると嬉しそうに微笑んでくれる。
「いらっしゃい」
「こんにちは」
「おや。どうかしたのかい?」
店主の優しい声に目頭が熱くなりポタポタと涙が溢れ落ちていく。
「おじいさん……彼に…会ったんです…」
「そうか…その様子じゃと兵服を着た彼に会ったんじゃな?」
店主から兵服を着た彼と聞いて驚いた。
「えっ?おじいさん知って…?」
「もちろんじゃ。彼を若い頃から知っておる」
ニッコリと話すおじいさんの顔を見て涙が止まる。
「どうして、言ってくれなかったのですか…?」
静かに問いかけると店主は近寄り優しく微笑む。
「本当の彼を知ってほしかったからじゃよ」
「本当の…?」
先程の彼の方が本当の姿のように見えたが店主には違うのだろうか。言葉の続きを待つ。
「そうじゃ。彼は真っ直ぐな瞳をしておる…真っ直ぐさ故に強くも弱くもある……だから心配しておっての。だが君と知り合ってから彼の纏う雰囲気が変わった…」
もちろんいい方向に、と店主が続ける。
「君は、先程会った彼が本当だと思うかの?そして嫌になるか?」
店主の言葉に冷や汗をかく。
先程馬車で出会った彼は嫌で、嫌いと言ってしまったから。
「私は彼に酷い事を…」
「だが彼にはそれも想定内じゃろうの」
店主を見ると笑っている。
──嫌われると分かって、笑って…
「でも彼は私を利用したのかも…そう考えたら…」
「それは…違うとわしは思うがのぉー…」
「どうしてそんなことが言えるんです?」
「確かに君達二人はこの本屋で何度も一緒の空間を過ごしておった」
それを聞いて目を見開き驚いた。
まさかとは思ったが、彼とは客として同じ本屋に一緒にいたというのだ。
「じゃが、二人とも互いには目もくれず本ばかり見ておったからいつもやきもきしておったわい」
ふぉっふぉ、と話す店主を見て目をパチクリとさせる。
──じゃあ、もしかして…
「そうじゃ。あの時あそこの棚に本を置いたのはわしじゃ。うまいこといってくれて満足したものよ」
鼻の下に整えられた髭を触りながら少しだけ意地悪な笑みを零すおじいさん。
「そしてあの時の彼は君のことを知らない。いや、知ることがなかったのじゃ。初めて会ってるにすぎん。もしお主が貴族の娘とあの時知ったとしてもどこの娘かまでは分からんじゃろ」
店主の話を聞けば聞くほどはめられたような気分になるが何故か嫌な気持ちにはならないのが不思議だ。
「君達の物語はもう始まっておる…運命が動き出したんじゃ。あとは選ぶといい」
「…選ぶ?」
「そうじゃ」
店主は真っ直ぐこちらを見ると優しい表情で口を開く。
「生きてる以上、いつも選択の連続じゃ。その結果がどうであろうとな…彼とのことは自分のしたいように選ぶといい」
「でも……」
「大丈夫。君ならうまくやっていける」
「どうしてそんな事が言えるのですか?」
「それは…秘密じゃ」
店主は人差し指を口元に当てニッコリと笑っていた。なんだか腑に落ちないことだらけでどこから手をつけて考えたらいいのか分からない。
「おじいさんの話は結局何が言いたいんですか…?」
「そうじゃのー…君達の物語を後押ししたいだけじゃよ」
「私達の物語……でも何故私なんですか?」
「君がいいのだよ」
やはり店主の言ってる事が分からず胸がざわついて落ち着かない。
「また彼に会えるのじゃろ?君のしたいように決めたらいい」
まるで預言者のように話す彼に驚くばかり。
「おじいさんは一体何者なんですか…?」
全てを知っているかのように話す不思議な雰囲気を纏う店主をマジマジと見つめ聞いていた。
「ただの歳を取りすぎた老いぼれじゃよ」
ふぉっふぉ、と笑う店主。
少しむくれるが店主がまた仕事に戻るためそれ以上話が出来なかった。
──私達の物語って一体…
店主に挨拶をして店を出ると先程の意味深な会話を思い出す。あれは一体どういう事なのだろうか。考えれば考えるほどまるで自分と彼は何かの縁で繋がってるように聞こえてしまう。
──考えすぎよね…
小さく息を吐くと重い足取りで帰路に就く。
ヒロイン side
途中であの本屋の前を通り過ぎる。だが、戻って本屋の扉を開けた。そこには店主が本の整理をしており自分の姿を見かけると嬉しそうに微笑んでくれる。
「いらっしゃい」
「こんにちは」
「おや。どうかしたのかい?」
店主の優しい声に目頭が熱くなりポタポタと涙が溢れ落ちていく。
「おじいさん……彼に…会ったんです…」
「そうか…その様子じゃと兵服を着た彼に会ったんじゃな?」
店主から兵服を着た彼と聞いて驚いた。
「えっ?おじいさん知って…?」
「もちろんじゃ。彼を若い頃から知っておる」
ニッコリと話すおじいさんの顔を見て涙が止まる。
「どうして、言ってくれなかったのですか…?」
静かに問いかけると店主は近寄り優しく微笑む。
「本当の彼を知ってほしかったからじゃよ」
「本当の…?」
先程の彼の方が本当の姿のように見えたが店主には違うのだろうか。言葉の続きを待つ。
「そうじゃ。彼は真っ直ぐな瞳をしておる…真っ直ぐさ故に強くも弱くもある……だから心配しておっての。だが君と知り合ってから彼の纏う雰囲気が変わった…」
もちろんいい方向に、と店主が続ける。
「君は、先程会った彼が本当だと思うかの?そして嫌になるか?」
店主の言葉に冷や汗をかく。
先程馬車で出会った彼は嫌で、嫌いと言ってしまったから。
「私は彼に酷い事を…」
「だが彼にはそれも想定内じゃろうの」
店主を見ると笑っている。
──嫌われると分かって、笑って…
「でも彼は私を利用したのかも…そう考えたら…」
「それは…違うとわしは思うがのぉー…」
「どうしてそんなことが言えるんです?」
「確かに君達二人はこの本屋で何度も一緒の空間を過ごしておった」
それを聞いて目を見開き驚いた。
まさかとは思ったが、彼とは客として同じ本屋に一緒にいたというのだ。
「じゃが、二人とも互いには目もくれず本ばかり見ておったからいつもやきもきしておったわい」
ふぉっふぉ、と話す店主を見て目をパチクリとさせる。
──じゃあ、もしかして…
「そうじゃ。あの時あそこの棚に本を置いたのはわしじゃ。うまいこといってくれて満足したものよ」
鼻の下に整えられた髭を触りながら少しだけ意地悪な笑みを零すおじいさん。
「そしてあの時の彼は君のことを知らない。いや、知ることがなかったのじゃ。初めて会ってるにすぎん。もしお主が貴族の娘とあの時知ったとしてもどこの娘かまでは分からんじゃろ」
店主の話を聞けば聞くほどはめられたような気分になるが何故か嫌な気持ちにはならないのが不思議だ。
「君達の物語はもう始まっておる…運命が動き出したんじゃ。あとは選ぶといい」
「…選ぶ?」
「そうじゃ」
店主は真っ直ぐこちらを見ると優しい表情で口を開く。
「生きてる以上、いつも選択の連続じゃ。その結果がどうであろうとな…彼とのことは自分のしたいように選ぶといい」
「でも……」
「大丈夫。君ならうまくやっていける」
「どうしてそんな事が言えるのですか?」
「それは…秘密じゃ」
店主は人差し指を口元に当てニッコリと笑っていた。なんだか腑に落ちないことだらけでどこから手をつけて考えたらいいのか分からない。
「おじいさんの話は結局何が言いたいんですか…?」
「そうじゃのー…君達の物語を後押ししたいだけじゃよ」
「私達の物語……でも何故私なんですか?」
「君がいいのだよ」
やはり店主の言ってる事が分からず胸がざわついて落ち着かない。
「また彼に会えるのじゃろ?君のしたいように決めたらいい」
まるで預言者のように話す彼に驚くばかり。
「おじいさんは一体何者なんですか…?」
全てを知っているかのように話す不思議な雰囲気を纏う店主をマジマジと見つめ聞いていた。
「ただの歳を取りすぎた老いぼれじゃよ」
ふぉっふぉ、と笑う店主。
少しむくれるが店主がまた仕事に戻るためそれ以上話が出来なかった。
──私達の物語って一体…
店主に挨拶をして店を出ると先程の意味深な会話を思い出す。あれは一体どういう事なのだろうか。考えれば考えるほどまるで自分と彼は何かの縁で繋がってるように聞こえてしまう。
──考えすぎよね…
小さく息を吐くと重い足取りで帰路に就く。