物語の続きを君と
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5.
ヒロイン side
どれくらい時間が経っただろうか。
話が終わったのか解放され父の元へ向かった。
父の姿を見つけたが思わず立ち止まる。悔しそうな怒っているような複雑な表情をした父の顔を見て声をかけることが出来ずにいた。
バンッ!!
父がテーブルに向かって手を叩きつけて体を震わせている。
「くそっ…調査兵団…分隊長……エルヴィン・スミス…」
──エルヴィン・スミス…
彼が父をこのようにさせたのか。
何をしたのか分からないが何故父を追い詰めたのか知りたくなった。
父の秘書を呼んで彼に会えないか聞いてみた。
難しいと言われたが父を助けたいと言って必死に頼み込んだ。分かりました、と秘書は折れ便宜を図ってくれた。父の事を教えてもらう見返りに自分の貯めておいた貯金からそれなりの金額を渡すと言っている。
一週間後、いよいよ彼と会う日がやってきた。
買い物に行くと家族には伝え、家を出て離れた所でマントを羽織り顔を隠した。馬車で密会する事になっており言われた場所まで歩みを進める。
程なくして馬車が来たので乗り込む。フードを深く被って前がよく見えない。すると手が差し出されその手を取って馬車に乗り込んで座る。お礼を言おうとフードを外して前を見ると心臓が一つ大きく脈を打ち驚愕した。
──まさか…そんな……
「こんな形で君と再開することになるとは」
そう話す男は半年前に口付けを交わした彼だった。
「あなたは…調査兵団の…」
「ああ」
「分隊長、エルヴィン・スミス…?」
「そうだ」
「そんな……」
そこで事実を知って絶望的な気持ちになった。
「父と何を話したのですか…?」
馬車が動き出したがそんな事よりも目の前の人物から目が逸らせない。
「君が知ってどうする」
「父のあんな姿を初めて見ました。父と何をお話されたのか分かりません。でもあんな姿はもう見たくないのです…」
そう伝えるが彼は黙ったまま無表情だ。
「君は…知らない方がいいだろう…」
「何故っ?!」
怒りが込み上げて立ち上がると馬車が揺れてバランスを崩した。転倒する、と衝撃に備えたが痛みはなく代わりに温もりを感じる。彼が支えてくれたのだと理解し、久しぶりに感じる彼の温もりに胸が高鳴った。しかし父の顔を思い出して離れようとしたが彼は、離してくれない。
「は、離してっ!」
「これでも前のように言ってくれるのか?」
そう話す彼の声が切なげで胸が苦しくなる。
「今は…分かりません……」
「だろうな」
まるで分かりきってましたと言わんばかりの彼の反応にまた怒りが込み上げ悲しくなった。
そこであることに考えがたどり着き嫌に心臓を打ち付ける。
「まさか……私が貴族の出だと知った上で近付いた…?」
そうであってほしくないと願わずにはいられない。だが、見上げる彼の表情は相変わらず無表情で何を考えているのか分からなかった。半年前のあの時よりも遠く距離を感じてしまう。
「だとしたらどうする。私の事を嫌いになるか?」
まるで突き放すようなそんな言い方をされ悲しみが増す。
「…今のあなたは嫌いです……」
そう呟けば彼は何故か小さく笑った。
「そうか…」
その表情は少し悲しみが混ざっているようにも感じたがそれ以上彼は何も言わなかった。
そしてまた馬車の席に着くが何故か隣同士だ。
「あの何故隣に?」
「この方が私の顔を見なくて済むだろう?」
「それはそうですけど…」
いまいち彼の事が分からなくなってしまった。それから肝心の父の話はしてくれず馬車での密会は終わりを告げた。
「また近いうちに会うことになるだろう」
「もう接点はないはずでは…」
「君の父君とはまだ交渉中だ」
ではな、と彼の乗せた馬車は行ってしまった。馬車が建物の陰で見えなくなるまで見送る。
風が頬を撫で顔を上げれば鳥が空を飛翔していた。それを眺めていたが家に帰ろうと動かす足は、渡すはずだったお金のように重い。
ヒロイン side
どれくらい時間が経っただろうか。
話が終わったのか解放され父の元へ向かった。
父の姿を見つけたが思わず立ち止まる。悔しそうな怒っているような複雑な表情をした父の顔を見て声をかけることが出来ずにいた。
バンッ!!
父がテーブルに向かって手を叩きつけて体を震わせている。
「くそっ…調査兵団…分隊長……エルヴィン・スミス…」
──エルヴィン・スミス…
彼が父をこのようにさせたのか。
何をしたのか分からないが何故父を追い詰めたのか知りたくなった。
父の秘書を呼んで彼に会えないか聞いてみた。
難しいと言われたが父を助けたいと言って必死に頼み込んだ。分かりました、と秘書は折れ便宜を図ってくれた。父の事を教えてもらう見返りに自分の貯めておいた貯金からそれなりの金額を渡すと言っている。
一週間後、いよいよ彼と会う日がやってきた。
買い物に行くと家族には伝え、家を出て離れた所でマントを羽織り顔を隠した。馬車で密会する事になっており言われた場所まで歩みを進める。
程なくして馬車が来たので乗り込む。フードを深く被って前がよく見えない。すると手が差し出されその手を取って馬車に乗り込んで座る。お礼を言おうとフードを外して前を見ると心臓が一つ大きく脈を打ち驚愕した。
──まさか…そんな……
「こんな形で君と再開することになるとは」
そう話す男は半年前に口付けを交わした彼だった。
「あなたは…調査兵団の…」
「ああ」
「分隊長、エルヴィン・スミス…?」
「そうだ」
「そんな……」
そこで事実を知って絶望的な気持ちになった。
「父と何を話したのですか…?」
馬車が動き出したがそんな事よりも目の前の人物から目が逸らせない。
「君が知ってどうする」
「父のあんな姿を初めて見ました。父と何をお話されたのか分かりません。でもあんな姿はもう見たくないのです…」
そう伝えるが彼は黙ったまま無表情だ。
「君は…知らない方がいいだろう…」
「何故っ?!」
怒りが込み上げて立ち上がると馬車が揺れてバランスを崩した。転倒する、と衝撃に備えたが痛みはなく代わりに温もりを感じる。彼が支えてくれたのだと理解し、久しぶりに感じる彼の温もりに胸が高鳴った。しかし父の顔を思い出して離れようとしたが彼は、離してくれない。
「は、離してっ!」
「これでも前のように言ってくれるのか?」
そう話す彼の声が切なげで胸が苦しくなる。
「今は…分かりません……」
「だろうな」
まるで分かりきってましたと言わんばかりの彼の反応にまた怒りが込み上げ悲しくなった。
そこであることに考えがたどり着き嫌に心臓を打ち付ける。
「まさか……私が貴族の出だと知った上で近付いた…?」
そうであってほしくないと願わずにはいられない。だが、見上げる彼の表情は相変わらず無表情で何を考えているのか分からなかった。半年前のあの時よりも遠く距離を感じてしまう。
「だとしたらどうする。私の事を嫌いになるか?」
まるで突き放すようなそんな言い方をされ悲しみが増す。
「…今のあなたは嫌いです……」
そう呟けば彼は何故か小さく笑った。
「そうか…」
その表情は少し悲しみが混ざっているようにも感じたがそれ以上彼は何も言わなかった。
そしてまた馬車の席に着くが何故か隣同士だ。
「あの何故隣に?」
「この方が私の顔を見なくて済むだろう?」
「それはそうですけど…」
いまいち彼の事が分からなくなってしまった。それから肝心の父の話はしてくれず馬車での密会は終わりを告げた。
「また近いうちに会うことになるだろう」
「もう接点はないはずでは…」
「君の父君とはまだ交渉中だ」
ではな、と彼の乗せた馬車は行ってしまった。馬車が建物の陰で見えなくなるまで見送る。
風が頬を撫で顔を上げれば鳥が空を飛翔していた。それを眺めていたが家に帰ろうと動かす足は、渡すはずだったお金のように重い。