物語の続きを君と
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4.
ヒロイン side
「あ、また彼の名前を聞くのを忘れた」
家の前まで来た私は思い出したように呟いた。悲しい気持ちで家の中に入れば召使いが声をかける。
「お帰りなさいませ。お嬢様。お荷物をこちらへ」
「ありがとう。お願いするわ」
召使いにカゴを渡し自分はリビングへと向かう。
そこには父が誰かと話をしていた。
「最近調査兵団の輩が貴族に接触を計っていると聞いた」
「何故我らのような貴族に……」
「資金援助だそうだよ」
「そうか…渡す金などないがな」
最もだ、と笑っている声が聞こえ呆れてしまう。
──それにしても調査兵団って…
確か巨人の領域に足を踏み入れ壁外調査をしている、そんな話を父から聞いた事がある。一度でいいからどんな方達か会ってみたい。
その時、何故か今日会った彼の姿が思い浮かんだ。
彼は名前もしらない謎の多い人物だ。
だからだろうか。彼のことが頭から離れない。
そして先程路地で交わした口付けまで思い出し頬を染める。指で唇に触れまだ彼の熱が残っているような気がした。
あの時、口付けをする前の彼の瞳を見て鼓動がうるさかった。凛々しい眉をひそめ真剣な眼差しで…青い眼 で真っ直ぐ射抜くような、そんな瞳…。
思い出すだけでも体が熱く火照り出す。
──あの瞳には弱い、かも…
小さくため息をついて自室へ戻る。
ーーーーーー
それから二週間後、本屋に行くと本を返され彼から本を預かっていると店主に手渡された。
「いい具合に物語は進んでおるようじゃの」
店主がそんなことを言うが何のことか分からず本の話かと思い「そうですね」と答えた。
彼からの本を受け取り表紙を見て頬が緩む。まさか彼が本を貸してくれるとは思っておらずそれが嬉しくて心が弾み、家までの道中足取りは軽い。
就寝前に彼が貸してくれた本を開けるとメモが入っていた。
ハルへ
ホンヲアリガトウ
ハジメテヨンダガジツニオモシロカッタ
ワタシノオキニイリヲカソウ
カンソウヲキカセテクレ
彼の字は男性ながらも力強く綺麗な字だった。
だがやはり名前は書いていない。
──あなたの名前が知りたいのに…
少し悲しい気持ちになりながらもページをめくり本を読み始めた。
そして、手紙というよりメモを挟んだ本のやり取りを数回繰り返したがそれだけで会うことはなかった。
その後、ピタリと本のやり取りもなくなり時間が止まったような寂しいような感覚に陥る。
「彼ならまた来る。きっと何か事情があるんじゃ」
店主の穏やかな声が耳に届く。
「そうですね…だけどもうこれでいいのかもしれません」
彼とはもう会えないような気がした。
本とメモのやり取り、たった一度街を歩き口付けを交わしただけ。それだけだったが自分には新鮮でいつもの日常が違って見えた。
帰りの道すがらそんなことを考えているとふと足を止める。
──彼に会いたい…
店主にはこれでいい、と言ったが本音を言えば彼に会いたかった。そして、自分の気持ちを認めざるをえなかった。
──彼の事を……
空を見上げ彼の事を想いながらまた歩き出す。
それから数ヶ月経っても彼とは会うことがなかった。本屋へ行き店主に聞くがいつも首を振るばかり。
彼とのことは夢だったのではないか、そう思い始めていた。
そしてあれから半年が経とうとするある日のこと。
「調査兵団がうちにか?!」
「はい。内密に会いたいとの話です」
リビングでくつろいでいたが父の秘書である男性がこそりと何かを耳打ちすると大きな声がリビングに響き渡る。
「何故ここにまで…」
父はショックを受けたような顔をしており少し心配になった。
「お父様?大丈夫?」
「あ、あぁ…大丈夫だ…」
「ねぇお父様……調査兵団の方が見えられるのでしょう?私もお会いして構わないかしら…」
「だめだ!奴らは野蛮だ!何をするか分からないだろ!」
「そんな!会う前からそんな風に決めつけてはだめよ!」
「いいや。壁外へ出る頭の狂った連中だ…ハルも気をつけなさい」
「お父様……」
昔は彼らの事をそんな言い方をしなかったのに。その言い草にショックを受けつつも、父の考えが変わらないかと思案したが変わることはなかった。
そして父と調査兵団が接触する日を迎えた。季節は変わり冬が訪れ、雪が静かに降る日のこと。
自分は部屋から一歩も出ることを許されず終わるまでは大人しくするよう言いつけられ、それを守った。
ヒロイン side
「あ、また彼の名前を聞くのを忘れた」
家の前まで来た私は思い出したように呟いた。悲しい気持ちで家の中に入れば召使いが声をかける。
「お帰りなさいませ。お嬢様。お荷物をこちらへ」
「ありがとう。お願いするわ」
召使いにカゴを渡し自分はリビングへと向かう。
そこには父が誰かと話をしていた。
「最近調査兵団の輩が貴族に接触を計っていると聞いた」
「何故我らのような貴族に……」
「資金援助だそうだよ」
「そうか…渡す金などないがな」
最もだ、と笑っている声が聞こえ呆れてしまう。
──それにしても調査兵団って…
確か巨人の領域に足を踏み入れ壁外調査をしている、そんな話を父から聞いた事がある。一度でいいからどんな方達か会ってみたい。
その時、何故か今日会った彼の姿が思い浮かんだ。
彼は名前もしらない謎の多い人物だ。
だからだろうか。彼のことが頭から離れない。
そして先程路地で交わした口付けまで思い出し頬を染める。指で唇に触れまだ彼の熱が残っているような気がした。
あの時、口付けをする前の彼の瞳を見て鼓動がうるさかった。凛々しい眉をひそめ真剣な眼差しで…青い
思い出すだけでも体が熱く火照り出す。
──あの瞳には弱い、かも…
小さくため息をついて自室へ戻る。
ーーーーーー
それから二週間後、本屋に行くと本を返され彼から本を預かっていると店主に手渡された。
「いい具合に物語は進んでおるようじゃの」
店主がそんなことを言うが何のことか分からず本の話かと思い「そうですね」と答えた。
彼からの本を受け取り表紙を見て頬が緩む。まさか彼が本を貸してくれるとは思っておらずそれが嬉しくて心が弾み、家までの道中足取りは軽い。
就寝前に彼が貸してくれた本を開けるとメモが入っていた。
ハルへ
ホンヲアリガトウ
ハジメテヨンダガジツニオモシロカッタ
ワタシノオキニイリヲカソウ
カンソウヲキカセテクレ
彼の字は男性ながらも力強く綺麗な字だった。
だがやはり名前は書いていない。
──あなたの名前が知りたいのに…
少し悲しい気持ちになりながらもページをめくり本を読み始めた。
そして、手紙というよりメモを挟んだ本のやり取りを数回繰り返したがそれだけで会うことはなかった。
その後、ピタリと本のやり取りもなくなり時間が止まったような寂しいような感覚に陥る。
「彼ならまた来る。きっと何か事情があるんじゃ」
店主の穏やかな声が耳に届く。
「そうですね…だけどもうこれでいいのかもしれません」
彼とはもう会えないような気がした。
本とメモのやり取り、たった一度街を歩き口付けを交わしただけ。それだけだったが自分には新鮮でいつもの日常が違って見えた。
帰りの道すがらそんなことを考えているとふと足を止める。
──彼に会いたい…
店主にはこれでいい、と言ったが本音を言えば彼に会いたかった。そして、自分の気持ちを認めざるをえなかった。
──彼の事を……
空を見上げ彼の事を想いながらまた歩き出す。
それから数ヶ月経っても彼とは会うことがなかった。本屋へ行き店主に聞くがいつも首を振るばかり。
彼とのことは夢だったのではないか、そう思い始めていた。
そしてあれから半年が経とうとするある日のこと。
「調査兵団がうちにか?!」
「はい。内密に会いたいとの話です」
リビングでくつろいでいたが父の秘書である男性がこそりと何かを耳打ちすると大きな声がリビングに響き渡る。
「何故ここにまで…」
父はショックを受けたような顔をしており少し心配になった。
「お父様?大丈夫?」
「あ、あぁ…大丈夫だ…」
「ねぇお父様……調査兵団の方が見えられるのでしょう?私もお会いして構わないかしら…」
「だめだ!奴らは野蛮だ!何をするか分からないだろ!」
「そんな!会う前からそんな風に決めつけてはだめよ!」
「いいや。壁外へ出る頭の狂った連中だ…ハルも気をつけなさい」
「お父様……」
昔は彼らの事をそんな言い方をしなかったのに。その言い草にショックを受けつつも、父の考えが変わらないかと思案したが変わることはなかった。
そして父と調査兵団が接触する日を迎えた。季節は変わり冬が訪れ、雪が静かに降る日のこと。
自分は部屋から一歩も出ることを許されず終わるまでは大人しくするよう言いつけられ、それを守った。