物語の続きを君と
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(Erwin side)
彼女はもう読んでくれただろうか。
あれから三週間が経過した。
内地へ足を運ぶ機会がないのと書類作成など執務に多忙を極めなかなかあの本屋にも行けずにいた。
だからなのか。
本部の分隊長執務室で、
ふと彼女のことを思い出し走らせるペンを止める。
気にする事はないというのに。
自分は調査兵団の兵士。
いつ死ぬかもわからぬこの命。
縁が増えれば増えるほど、迷いが生じやすくなる。
考えを振り払うかのようにペンをまた走らせる。
それからまた一週間後。
内地へ向かった。
兵服のままでは気がひけるので宿屋で着替えその後、
あの本屋へと足を運び再び店の扉を開く。
「いらっしゃい。おや、お久しぶりじゃの」
店主はニコリと笑い声をかけてくれた。
「このところ多忙でしたので」
苦笑いで返す。
すると店主が何やら手元を探して自分に手渡してきた。
受け取るとそれは彼女に貸していた本だった。
「ちょうど一週間前ほどに彼女が来たよ。
それから毎日のように訪ねて来てのぉ。
本が渡ったか気になっておるようじゃった」
「そうですか」
彼女の大きな瞳を思い出し小さく笑った。
「おや。お主はもうページが進んどるようじゃの」
「はて。どういうことでしょう?」
「ふぉふぉっ。いずれ分かる」
店主はそう言うと仕事を始めるので店内の本を見て自分も店を後にした。
※ ※ ※
その日の夜。
就寝前に彼女に貸していた本を開けば、
中にメモが入っていた。
ホン アリガトウゴザイマシタ
トテモオモシロカッタデス
マタアエルトイイデスネ
ハル
綺麗な字で紡がれた文字。
彼女の性格が出ているようだった。
そしてここで初めて彼女の名前を知ることになる。
————————ハル......
彼女の顔を思い出し頬を緩めると床に就いたのだった。
ーーーーーー
それから二ヶ月後。
壁外調査もあり忙しくしていた。
内地へ行くこともあったが、
本屋へ行くこともなく時が過ぎて行く。
そして落ち着いた頃、久しぶりに本が読みたくなり休暇を利用して内地へ向かった。
本屋の扉を開けると店主が、
いつものように穏やかな声で挨拶をしてくれる。
「お主を待っておったよ」
店主はそう声をかけると、
カウンターから本を取り出し手渡される。
不思議に思いながらも、
マジマジとその本を見ると読んだことのないものだった。
「あのお嬢さんからじゃ」
それを聞いて驚く。
表紙をめくればそこにはメモが。
ヨカッタラ ヨンデクダサイ
ワタシノ オキニイリデス
ハル
彼女の字を見ると何故か胸が温かくなる。
どんな内容なのか。
はやる気持ちを抑えつつ本を鞄にしまう。
「ほぅほぅ。
お主は少しずつページが進んでおるようじゃ」
「ページ......」
なるほど。そういうことか。
店主を見て小さく微笑む。
「しかし私は、これ以上は進めません」
期待に応えられないでしょう、
そう伝えるが店主は笑ったままだ。
「果たしてそうだろうかの。
一度気になってしまえば最後まで読みたくなるものじゃ。
知りたいと思う気持ちは人を貪欲にさせるからのぉ」
その言葉にヒヤリとする。
彼女のこともそうだが自分がうちに秘めているものを店主に見透かされたような気がして苦笑してしまう。
「あなたは全てお分かりのようだ」
「歳をとり過ぎたが故じゃよ」
ふぉっふぉ、と店主が笑い思わず顔が綻ぶ。
「彼女との事はこれからどうなるか...
それは自分でも分かりません。
運命に任せる他ないでしょう」
最も運命などあまり信じておりませんが、
言葉を続けると店主は小さく首を振っている。
「もう運命は進み出しておる。
あとは流れに任せ選ぶといい」
店主は皺の多い顔を綻ばせ優しく笑う。
店を出て空を仰ぎ見れば鳥が飛んでいた。
羽ばたいて行く先は壁の外......。
知りたいと思う気持ち。
彼女の事、仲間にも伝えていない奥底にあるそれを空の鳥に重ねて考える。
そこへ不意に背後から声をかけられた。
「あの......」
チラリと視線だけ見やる。
そこに居たのは先程まで考えていた彼女だった。
体を向き合わせるように立てば目の前に歩み寄る彼女。
今日は緑色のワンピースに髪は結い上げていた。
ふむ。なかなか似合っている。
心の中で呟きそれが聞こえたかのように彼女が照れ臭そうにはにかんで微笑む。
「お久しぶりです。
今日こちらにいらっしゃったんですね」
「ああ、今しがた行ってきたところだよ。
本をありがとう。読ませてもらうよ」
はい、と彼女はふわりと笑う。
まだ彼女と話したい気持ちが芽生え様子を伺えば、
腕にカゴを持っているのが見えた。
「買い物か?」
「はい。ちょっとそこまで」
「では私もお供しよう」
「いえ!そんな......悪いです!」
「私がそうしたい。いけないか?」
「うっ...そう言われてしまうと......」
困っている彼女を見てクスリと笑い「行こう」、
声をかけ並んで歩き出した。
(Erwin side)
彼女はもう読んでくれただろうか。
あれから三週間が経過した。
内地へ足を運ぶ機会がないのと書類作成など執務に多忙を極めなかなかあの本屋にも行けずにいた。
だからなのか。
本部の分隊長執務室で、
ふと彼女のことを思い出し走らせるペンを止める。
気にする事はないというのに。
自分は調査兵団の兵士。
いつ死ぬかもわからぬこの命。
縁が増えれば増えるほど、迷いが生じやすくなる。
考えを振り払うかのようにペンをまた走らせる。
それからまた一週間後。
内地へ向かった。
兵服のままでは気がひけるので宿屋で着替えその後、
あの本屋へと足を運び再び店の扉を開く。
「いらっしゃい。おや、お久しぶりじゃの」
店主はニコリと笑い声をかけてくれた。
「このところ多忙でしたので」
苦笑いで返す。
すると店主が何やら手元を探して自分に手渡してきた。
受け取るとそれは彼女に貸していた本だった。
「ちょうど一週間前ほどに彼女が来たよ。
それから毎日のように訪ねて来てのぉ。
本が渡ったか気になっておるようじゃった」
「そうですか」
彼女の大きな瞳を思い出し小さく笑った。
「おや。お主はもうページが進んどるようじゃの」
「はて。どういうことでしょう?」
「ふぉふぉっ。いずれ分かる」
店主はそう言うと仕事を始めるので店内の本を見て自分も店を後にした。
※ ※ ※
その日の夜。
就寝前に彼女に貸していた本を開けば、
中にメモが入っていた。
ホン アリガトウゴザイマシタ
トテモオモシロカッタデス
マタアエルトイイデスネ
ハル
綺麗な字で紡がれた文字。
彼女の性格が出ているようだった。
そしてここで初めて彼女の名前を知ることになる。
————————ハル......
彼女の顔を思い出し頬を緩めると床に就いたのだった。
ーーーーーー
それから二ヶ月後。
壁外調査もあり忙しくしていた。
内地へ行くこともあったが、
本屋へ行くこともなく時が過ぎて行く。
そして落ち着いた頃、久しぶりに本が読みたくなり休暇を利用して内地へ向かった。
本屋の扉を開けると店主が、
いつものように穏やかな声で挨拶をしてくれる。
「お主を待っておったよ」
店主はそう声をかけると、
カウンターから本を取り出し手渡される。
不思議に思いながらも、
マジマジとその本を見ると読んだことのないものだった。
「あのお嬢さんからじゃ」
それを聞いて驚く。
表紙をめくればそこにはメモが。
ヨカッタラ ヨンデクダサイ
ワタシノ オキニイリデス
ハル
彼女の字を見ると何故か胸が温かくなる。
どんな内容なのか。
はやる気持ちを抑えつつ本を鞄にしまう。
「ほぅほぅ。
お主は少しずつページが進んでおるようじゃ」
「ページ......」
なるほど。そういうことか。
店主を見て小さく微笑む。
「しかし私は、これ以上は進めません」
期待に応えられないでしょう、
そう伝えるが店主は笑ったままだ。
「果たしてそうだろうかの。
一度気になってしまえば最後まで読みたくなるものじゃ。
知りたいと思う気持ちは人を貪欲にさせるからのぉ」
その言葉にヒヤリとする。
彼女のこともそうだが自分がうちに秘めているものを店主に見透かされたような気がして苦笑してしまう。
「あなたは全てお分かりのようだ」
「歳をとり過ぎたが故じゃよ」
ふぉっふぉ、と店主が笑い思わず顔が綻ぶ。
「彼女との事はこれからどうなるか...
それは自分でも分かりません。
運命に任せる他ないでしょう」
最も運命などあまり信じておりませんが、
言葉を続けると店主は小さく首を振っている。
「もう運命は進み出しておる。
あとは流れに任せ選ぶといい」
店主は皺の多い顔を綻ばせ優しく笑う。
店を出て空を仰ぎ見れば鳥が飛んでいた。
羽ばたいて行く先は壁の外......。
知りたいと思う気持ち。
彼女の事、仲間にも伝えていない奥底にあるそれを空の鳥に重ねて考える。
そこへ不意に背後から声をかけられた。
「あの......」
チラリと視線だけ見やる。
そこに居たのは先程まで考えていた彼女だった。
体を向き合わせるように立てば目の前に歩み寄る彼女。
今日は緑色のワンピースに髪は結い上げていた。
ふむ。なかなか似合っている。
心の中で呟きそれが聞こえたかのように彼女が照れ臭そうにはにかんで微笑む。
「お久しぶりです。
今日こちらにいらっしゃったんですね」
「ああ、今しがた行ってきたところだよ。
本をありがとう。読ませてもらうよ」
はい、と彼女はふわりと笑う。
まだ彼女と話したい気持ちが芽生え様子を伺えば、
腕にカゴを持っているのが見えた。
「買い物か?」
「はい。ちょっとそこまで」
「では私もお供しよう」
「いえ!そんな......悪いです!」
「私がそうしたい。いけないか?」
「うっ...そう言われてしまうと......」
困っている彼女を見てクスリと笑い「行こう」、
声をかけ並んで歩き出した。