朝、手を繋いで
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11.
簡素な見張り台に2人でいると狭さもあって触れ合ってる部分が次第に温もりを持ち始めた。
「俺は後ろを見る」
彼は自分の後ろに立ち背中にその存在を感じる。その温もりで寒さも幾分マシになった。
「…もう見えねぇな」
「何がですか?」
「…星だ」
「ああ…そうですね。もう朝がきますから」
脈絡のない彼との会話はいつも単発で終わりがち。でもずっと黙ってる訳でもなく喋る時は喋るため驚いたものだ。
「…俺の"せいざ"とやらは、見えねぇのか?」
そこで彼が尋ねた問いに面食らった。まさか初めて会話した時の事を覚えているとは…しかも、もしかしなくても星座を探していた…?そんな姿を想像して思わず吹き出す。
「…何が可笑しい…」
一気に不機嫌になる彼を余所に笑いが込み上げて止まらない。
「だって…そんな無愛想な顔をされてるのに星座がみえないか、なんて…」
ギャップありすぎですよ、と目に涙を溜め笑う。
「…チッ、今のは忘れろ」
「そんな、ごめんなさい。ちゃんと答えますから」
その前に笑いを止めなければ。深呼吸で気持ちを落ち着かせると空を仰いだ。段々と空が色を抜き取られていくように明るさが増していく。かろうじて見えるのは一際輝く星のみ。
「…残念ながらリヴァイさんの星座は見えないんですよ」
それを伝えると間があった後に「…そうか」と一言聞こえた。
「リヴァイさんの星座は夏から秋にかけてでしょうか…秋頃が見えやすいかも知れませんね。次の年…見られるといいですね」
生きていれば、その言葉を飲み込んだ。口にすれば胸が苦しくなりそうだったから。
「…ああ。秋なら壁外調査にも出てるだろうしな。よく見えるだろう」
「…そうですね」
しんみりする空気に冷たい風が通り過ぎる。思わず身震いすれば「おい」と短く呼ばれた。
「なんでしょう……わっぷ?!」
振り向きながら声を掛けたが急に視界が暗くなった。
「何するんですか?!」
「寒みぃんじゃねぇか。痩せ我慢するな」
「…大丈夫ですよ。風邪引いてもすぐに治ります」
「引かれちゃ困るんだがな」
「なぜリヴァイさんが困るんですか」
「あ?じゃねぇと掃除が大変じゃねぇか」
「私はリヴァイさんの使いっ走りじゃないですよ」
「…そんなんじゃねぇよ…」
「??どういう事ですか?」
彼は舌打ちをし「なんでもねぇ」と口を閉ざした。一体何なのだ。ここに来た訳も分からない。彼の行動はたまに意味不明で、あれだって…とまた額に手を宛て思い出した。
「なんだ。熱でもあるのか?」
「違いますよ!か、髪の毛を払おうとしただけで!」
「あ?髪なんざ掛かってねぇぞ」
そう言った彼との距離が縮まる。後退りをしようにも狭くてすぐに行き止まり。切れ長の瞳が自分を捉えて離さまいとしている。途端に鼓動が速くなって話題を逸らそうと考えを巡らせた。
「あ、あの!実は誕生日だったのでこれを用意しました!」
早口で告げポケットから取り出したもの。彼の顔を隠すよう目の前に出せば彼の動きが止まり包み紙を手にする。
「…俺に、か?」
「はい…あ、でもハンジさんやエルヴィン分隊長達からも貰ってますよね…」
自分が用意したものが安っぽく思えて彼の手から奪おうとしたが手をすり抜けてしまった。
「お前が選んだのか」
「そうですが…」
「なら貰おう」
そう言ってリボンを解き中を見る彼から目が離せない。だってどんな反応か気になる。
「ほぅ…ハンカチか」
「前に頂いたのでお返しにと思って…ありきたりですよね…」
「いや。よく使うからな…助かる」
彼の反応に安堵し胸を撫で下ろす。とりあえず渡せた事で気分は晴れやかだ。これで少しは自分に対する態度を改めて欲しい…。
「大事にする」
彼の言葉に視線を移せばその表情に釘付けになった。あんなにいつも無愛想な顔をしてるのに今はほんの少し……
「…笑ってる」
「なんだ」
「いえ!何も!!」
手を思い切り振って、勢いよく背を向けた。彼の微笑みを見るのは初めてで、頬を緩めた表情に鼓動が一定の速度で速まる。顔も熱いようで両手で押さえた。冷えた手が気持ち良い。
「おい。日が昇る」
彼の言葉に西へ体を向けた。彼も隣に立ち日の出を共に迎える。
「…本当はお前にも来て欲しかったんだがな」
「何のこと……っ!」
横に視線を向けるのと同時に触れた熱く柔らかい感触。額でも頬でもなく、言葉を紡ぐそこに。
数秒経ち、ゆっくり離れ視線が交わる。
「…なんて面してやがる」
「え、あ…えっと……」
なぜ彼が自分に口付けをしたのか疑問でいっぱいでしどろもどろになる。
「これで分かるだろ」
「な、何がですか…?」
「…お前…」
小さく息を吐き頭に手を乗せ、そのままグリグリ撫でる…というのか正直ちょっと痛い。それに髪の毛がぐちゃぐちゃだ。
「もう!何するんですか!」
「ああ?ガキにはこっちで十分だ」
「だから私はガキじゃないと!」
「…ああ。知ってる。さっきのは女の面だったな」
ふっ、と頬を緩ませ言うその言葉に、何も言い返せず顔を赤くすることしか出来なかった。
「締りのねぇ面しやがって…まだ任務中だぞ」
「…誰のせいだと」
「何か言ったか」
「何でもないです!」
また彼と背中合わせに立ち視線を森へと向けた。そろそろ兵達が起き出す時間になる。体は森へと向いているのに意識は背中合わせの彼に。必死で任務に集中させようとするのにそれが途切れてしまう。
簡素な見張り台に2人でいると狭さもあって触れ合ってる部分が次第に温もりを持ち始めた。
「俺は後ろを見る」
彼は自分の後ろに立ち背中にその存在を感じる。その温もりで寒さも幾分マシになった。
「…もう見えねぇな」
「何がですか?」
「…星だ」
「ああ…そうですね。もう朝がきますから」
脈絡のない彼との会話はいつも単発で終わりがち。でもずっと黙ってる訳でもなく喋る時は喋るため驚いたものだ。
「…俺の"せいざ"とやらは、見えねぇのか?」
そこで彼が尋ねた問いに面食らった。まさか初めて会話した時の事を覚えているとは…しかも、もしかしなくても星座を探していた…?そんな姿を想像して思わず吹き出す。
「…何が可笑しい…」
一気に不機嫌になる彼を余所に笑いが込み上げて止まらない。
「だって…そんな無愛想な顔をされてるのに星座がみえないか、なんて…」
ギャップありすぎですよ、と目に涙を溜め笑う。
「…チッ、今のは忘れろ」
「そんな、ごめんなさい。ちゃんと答えますから」
その前に笑いを止めなければ。深呼吸で気持ちを落ち着かせると空を仰いだ。段々と空が色を抜き取られていくように明るさが増していく。かろうじて見えるのは一際輝く星のみ。
「…残念ながらリヴァイさんの星座は見えないんですよ」
それを伝えると間があった後に「…そうか」と一言聞こえた。
「リヴァイさんの星座は夏から秋にかけてでしょうか…秋頃が見えやすいかも知れませんね。次の年…見られるといいですね」
生きていれば、その言葉を飲み込んだ。口にすれば胸が苦しくなりそうだったから。
「…ああ。秋なら壁外調査にも出てるだろうしな。よく見えるだろう」
「…そうですね」
しんみりする空気に冷たい風が通り過ぎる。思わず身震いすれば「おい」と短く呼ばれた。
「なんでしょう……わっぷ?!」
振り向きながら声を掛けたが急に視界が暗くなった。
「何するんですか?!」
「寒みぃんじゃねぇか。痩せ我慢するな」
「…大丈夫ですよ。風邪引いてもすぐに治ります」
「引かれちゃ困るんだがな」
「なぜリヴァイさんが困るんですか」
「あ?じゃねぇと掃除が大変じゃねぇか」
「私はリヴァイさんの使いっ走りじゃないですよ」
「…そんなんじゃねぇよ…」
「??どういう事ですか?」
彼は舌打ちをし「なんでもねぇ」と口を閉ざした。一体何なのだ。ここに来た訳も分からない。彼の行動はたまに意味不明で、あれだって…とまた額に手を宛て思い出した。
「なんだ。熱でもあるのか?」
「違いますよ!か、髪の毛を払おうとしただけで!」
「あ?髪なんざ掛かってねぇぞ」
そう言った彼との距離が縮まる。後退りをしようにも狭くてすぐに行き止まり。切れ長の瞳が自分を捉えて離さまいとしている。途端に鼓動が速くなって話題を逸らそうと考えを巡らせた。
「あ、あの!実は誕生日だったのでこれを用意しました!」
早口で告げポケットから取り出したもの。彼の顔を隠すよう目の前に出せば彼の動きが止まり包み紙を手にする。
「…俺に、か?」
「はい…あ、でもハンジさんやエルヴィン分隊長達からも貰ってますよね…」
自分が用意したものが安っぽく思えて彼の手から奪おうとしたが手をすり抜けてしまった。
「お前が選んだのか」
「そうですが…」
「なら貰おう」
そう言ってリボンを解き中を見る彼から目が離せない。だってどんな反応か気になる。
「ほぅ…ハンカチか」
「前に頂いたのでお返しにと思って…ありきたりですよね…」
「いや。よく使うからな…助かる」
彼の反応に安堵し胸を撫で下ろす。とりあえず渡せた事で気分は晴れやかだ。これで少しは自分に対する態度を改めて欲しい…。
「大事にする」
彼の言葉に視線を移せばその表情に釘付けになった。あんなにいつも無愛想な顔をしてるのに今はほんの少し……
「…笑ってる」
「なんだ」
「いえ!何も!!」
手を思い切り振って、勢いよく背を向けた。彼の微笑みを見るのは初めてで、頬を緩めた表情に鼓動が一定の速度で速まる。顔も熱いようで両手で押さえた。冷えた手が気持ち良い。
「おい。日が昇る」
彼の言葉に西へ体を向けた。彼も隣に立ち日の出を共に迎える。
「…本当はお前にも来て欲しかったんだがな」
「何のこと……っ!」
横に視線を向けるのと同時に触れた熱く柔らかい感触。額でも頬でもなく、言葉を紡ぐそこに。
数秒経ち、ゆっくり離れ視線が交わる。
「…なんて面してやがる」
「え、あ…えっと……」
なぜ彼が自分に口付けをしたのか疑問でいっぱいでしどろもどろになる。
「これで分かるだろ」
「な、何がですか…?」
「…お前…」
小さく息を吐き頭に手を乗せ、そのままグリグリ撫でる…というのか正直ちょっと痛い。それに髪の毛がぐちゃぐちゃだ。
「もう!何するんですか!」
「ああ?ガキにはこっちで十分だ」
「だから私はガキじゃないと!」
「…ああ。知ってる。さっきのは女の面だったな」
ふっ、と頬を緩ませ言うその言葉に、何も言い返せず顔を赤くすることしか出来なかった。
「締りのねぇ面しやがって…まだ任務中だぞ」
「…誰のせいだと」
「何か言ったか」
「何でもないです!」
また彼と背中合わせに立ち視線を森へと向けた。そろそろ兵達が起き出す時間になる。体は森へと向いているのに意識は背中合わせの彼に。必死で任務に集中させようとするのにそれが途切れてしまう。