朝、手を繋いで
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10.
—————………
その日の夜。
本部である古城の見張り台に立ち任務に就く。真冬の真っ只中で夜はかなり冷え込む。立ち昇っていく白い息を目で追いながら空を見上げた。真っ黒な闇に大小様々な星々が煌めいている。彼と初めて言葉を交わした日もこんな風に星が綺麗だった。
初めは横暴な口振りや態度、ゴロツキの出だと聞いて嫌だったが……接するうちに彼の人柄に触れ、彼女がいると思うほど綺麗に畳まれたハンカチは潔癖であるが故に自分でやっていた事…人に興味のないような素振りだが実は周りをよく見ていて仲間思いである事…。
見た目とは裏腹にその人柄はとても繊細だった事に驚きが隠せない。今ではその強さもあってみんなからの信頼も集まっている。
けれど、自分にだけ……
「…なんでいつも口煩いのよ…あとあれは何のつもりで……」
額に手を宛てその情景を思い出す。彼の瞳が至近距離に。視線が熱を帯びている様に感じたのは気のせいか…。それを思い出しては頬を染める自分に戸惑う。そしてポケットから取り出したのは彼が必要ないと言って渡したハンカチ。これには何度も世話になった。それはあれから何度か壁外調査があったが、命を賭して戦った彼らを想い涙する事があったから。ぼんやりとその事を考えていたがふとある事に気付く。
「…もしかして、その為にハンカチを…?」
可能性は十分考えられる。あの時から彼の人柄が出ていたのだと知って胸が苦しく、温かくなるのを感じた。それと同時に大きくなる感情。気付いていた、けれど認めたくなかったその気持ちに向き合える気がした。
「でも…私達は兵士で、彼は…とても強い…」
彼の実力が調査兵の中で大きくなり、他の兵団にも伝って民間人の耳にも届くようになった。"人類最強"なんて謳われるようになり始め彼は嫌そうだけれど。
——『強くても、守れるもんを守れなければ意味がねぇ…』
ある時、彼と話した事があった。でも彼は間を置いたのちにそう口にしたのだ。たまに思い出す事もあるが今なら分かる。表情は変わらなくともその言葉に彼の思いが詰め込まれている事を…。
その時、近くの森から鳥の鳴き声が聞こえ驚きのあまり銃を肩から落としてしまう。いけない、任務中に物思いに耽けるとは兵士失格だ。銃を再度肩にかけ、意識を周りの気配に集中させた。
数時間、西の空が黒の闇から濃い紺色、藍色、群青色…とグラデーションを作りながら夜が明けていく。もう彼の誕生日会も流石に終わっただろう。渡せないと分かっていても彼の姿がチラつき用意したものが別のポケットに入っている。そっとそれに触れ、ため息が零れた。
「…結局渡せないまま、か…」
「何が渡せねぇんだ」
「?!?!なっ…?!」
んで此処に?!、頭文字だけ音になり、それに続く言葉は声に成らず魚のように口をパクパクさせてしまう。心臓が飛び出そうな程煩く音を鳴らし始めた。
「…なんて面だ。そんなに驚く事でもねぇだろう」
「…いや、驚きますよ…」
どんな顔をしていいのか分からない。任務中に貴方の事を想って気持ちを認めた矢先に、なんて言えるわけもなく。というか、言いたくない。
「…もう誕生日会は終わったんですか?」
「ああ。だいぶ前にお開きになってはいたんだが…」
そこで言葉を止めた彼を不思議に思う。
「…寝付けねぇ」
「あ、リヴァイさんは慢性的に寝不足なんでしたっけ…」
とある掃除に付き合わされた時、あまりにも隈が酷く顔色も悪かった為早々に切り上げた事があった。その時にいつも熟睡出来ないのだと話を聞いた。
「こんなところに来られたら風邪を引きますよ?」
そう言ってマントの上から羽織っていた毛布を彼の肩にかける。
「あ?要らねえよ…そこまで寒くねぇ」
「いやいや。寒いですよ。真冬ですから」
「地下はいつでも寒みぃ。慣れてる」
初めて彼から地下街の話を聞いた。いつも寒いとは…過酷な環境である事はそれだけで十分に理解出来る。
「そうだとしてもここは地下じゃありません」
無理矢理毛布を肩にかけてにまりと笑う。大人しく毛布を見詰める彼に優越感が湧く。
「なら有難くもらおう」
「どうぞ」
少し寒いけどもう数時間もすれば日が昇る。自分だって兵士だ。我慢くらい出来て当たり前。何より彼が来たことで急激に上昇した体温を冷ますのに丁度いい。視線を彼から周囲の森へと移し任務に集中する。
—————………
その日の夜。
本部である古城の見張り台に立ち任務に就く。真冬の真っ只中で夜はかなり冷え込む。立ち昇っていく白い息を目で追いながら空を見上げた。真っ黒な闇に大小様々な星々が煌めいている。彼と初めて言葉を交わした日もこんな風に星が綺麗だった。
初めは横暴な口振りや態度、ゴロツキの出だと聞いて嫌だったが……接するうちに彼の人柄に触れ、彼女がいると思うほど綺麗に畳まれたハンカチは潔癖であるが故に自分でやっていた事…人に興味のないような素振りだが実は周りをよく見ていて仲間思いである事…。
見た目とは裏腹にその人柄はとても繊細だった事に驚きが隠せない。今ではその強さもあってみんなからの信頼も集まっている。
けれど、自分にだけ……
「…なんでいつも口煩いのよ…あとあれは何のつもりで……」
額に手を宛てその情景を思い出す。彼の瞳が至近距離に。視線が熱を帯びている様に感じたのは気のせいか…。それを思い出しては頬を染める自分に戸惑う。そしてポケットから取り出したのは彼が必要ないと言って渡したハンカチ。これには何度も世話になった。それはあれから何度か壁外調査があったが、命を賭して戦った彼らを想い涙する事があったから。ぼんやりとその事を考えていたがふとある事に気付く。
「…もしかして、その為にハンカチを…?」
可能性は十分考えられる。あの時から彼の人柄が出ていたのだと知って胸が苦しく、温かくなるのを感じた。それと同時に大きくなる感情。気付いていた、けれど認めたくなかったその気持ちに向き合える気がした。
「でも…私達は兵士で、彼は…とても強い…」
彼の実力が調査兵の中で大きくなり、他の兵団にも伝って民間人の耳にも届くようになった。"人類最強"なんて謳われるようになり始め彼は嫌そうだけれど。
——『強くても、守れるもんを守れなければ意味がねぇ…』
ある時、彼と話した事があった。でも彼は間を置いたのちにそう口にしたのだ。たまに思い出す事もあるが今なら分かる。表情は変わらなくともその言葉に彼の思いが詰め込まれている事を…。
その時、近くの森から鳥の鳴き声が聞こえ驚きのあまり銃を肩から落としてしまう。いけない、任務中に物思いに耽けるとは兵士失格だ。銃を再度肩にかけ、意識を周りの気配に集中させた。
数時間、西の空が黒の闇から濃い紺色、藍色、群青色…とグラデーションを作りながら夜が明けていく。もう彼の誕生日会も流石に終わっただろう。渡せないと分かっていても彼の姿がチラつき用意したものが別のポケットに入っている。そっとそれに触れ、ため息が零れた。
「…結局渡せないまま、か…」
「何が渡せねぇんだ」
「?!?!なっ…?!」
んで此処に?!、頭文字だけ音になり、それに続く言葉は声に成らず魚のように口をパクパクさせてしまう。心臓が飛び出そうな程煩く音を鳴らし始めた。
「…なんて面だ。そんなに驚く事でもねぇだろう」
「…いや、驚きますよ…」
どんな顔をしていいのか分からない。任務中に貴方の事を想って気持ちを認めた矢先に、なんて言えるわけもなく。というか、言いたくない。
「…もう誕生日会は終わったんですか?」
「ああ。だいぶ前にお開きになってはいたんだが…」
そこで言葉を止めた彼を不思議に思う。
「…寝付けねぇ」
「あ、リヴァイさんは慢性的に寝不足なんでしたっけ…」
とある掃除に付き合わされた時、あまりにも隈が酷く顔色も悪かった為早々に切り上げた事があった。その時にいつも熟睡出来ないのだと話を聞いた。
「こんなところに来られたら風邪を引きますよ?」
そう言ってマントの上から羽織っていた毛布を彼の肩にかける。
「あ?要らねえよ…そこまで寒くねぇ」
「いやいや。寒いですよ。真冬ですから」
「地下はいつでも寒みぃ。慣れてる」
初めて彼から地下街の話を聞いた。いつも寒いとは…過酷な環境である事はそれだけで十分に理解出来る。
「そうだとしてもここは地下じゃありません」
無理矢理毛布を肩にかけてにまりと笑う。大人しく毛布を見詰める彼に優越感が湧く。
「なら有難くもらおう」
「どうぞ」
少し寒いけどもう数時間もすれば日が昇る。自分だって兵士だ。我慢くらい出来て当たり前。何より彼が来たことで急激に上昇した体温を冷ますのに丁度いい。視線を彼から周囲の森へと移し任務に集中する。