朝、手を繋いで
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
8.
「…さっさと休め」
彼は何事も無かったかのように私の頭に手を乗せ一言言い残し、去って行った。廊下に取り残された自分は壁に身を預けたまま、脚の力が抜けその場にゆっくりと座り込む。石造りの床が冷たくて心地いい。本当になんなんだ。彼のやることに戸惑いが隠せない。
「ん?君は……こんなところでどうしたんだ?」
そこへやって来たのは自分と同じく遅めの夕食を摂りに来たであろうエルヴィン分隊長だった。急いで立ち上がろうとしたが腰が砕けて上手く立てない。分隊長がそれを見兼ねたのか自分を抱き上げると食堂へ入り椅子に座らせてくれた。上司に抱えられるとはなんて様なんだと思ったが「気にする必要はない」と気持ちを汲んでくれるエルヴィン分隊長。
「分隊長…ありがとうございます」
「いや、構わない。今日は大変だったようだね。モブリットに話を聞いたよ」
いつもより柔らかい表情で話す彼が気遣ってくれる。普段は何を考えているのか分からないような顔をしているのに、こういう時は優しい。
「そうなんですね。疲れが出たのでしょうか…管理がなってない証拠です…」
気を付けます、苦笑しつつ呼吸を整えた。そうなればお腹も空いてくる。体も動かせるようで胸を撫で下ろすと分隊長の分まで夕食の準備をした。
テーブルに対面で座り、食事を頬張る。向き合って座ったのはいいものの、何を話していいのやら分からない。黙ったままパンやスープを食していく、のだが……
「先程はリヴァイと何かあったのか?」
何の前触れもなくいきなりそんな事を聞かれスープが気管に入り咽せこんだ。慌てて水を飲み気持ちを落ち着かせる。
「いきなり何を言うんですか…」
「すまない。ここへ来る途中でリヴァイを見かけたものでな」
彼に何かされたのか?、蒼い瞳が自分を見つめる。どんな反応をして良いのやら…なんと言葉をかけようか、何かされたと言われればされたし、かと言ってそれが特別なものではないかもしれないし……参ったな、本当に何と応えればいいのか分からない。
「さしずめ、熱でもあるのかと額で確認されたのではないか?」
エルヴィン分隊長の言葉に驚愕する。正しくその通りな事で目が点になった。
「もしかして…見ていたのですか…?」
「いや。君は顔が赤いし何より手を額にあてていたからな。そうではないかと推測したまでだ」
流石だ、頭のキレ方が違うと感心し間を置いたのちに小さく頷き肯定する。
「本当に驚きました……彼が何故あんな事をしたのか…」
「だから言っただろう。彼は君の事を気に入っている、と」
「まさか…そんな事、信じられません…」
彼が自分を意識しているとでもいうのか。そんな訳がない、彼はいつだって険しい顔つきで…けれど、脳裏に浮かんだのは先程の行為や褒め言葉…なんだかんだで気にかけてくれている彼の姿だった。
「君も満更ではないんじゃないか?」
「そ、そんな事…!」
「はは、そんなに慌てれば肯定と捉えられるぞ」
楽しそうに笑うエルヴィン分隊長を不満げに見つめることしか出来ない。
「彼の誕生日会は参加自由だが…君を優先させよう」
「…余計なお世話です」
「連れないな。だが、これからが楽しみだ」
ほくそ笑む彼は立ち上がると自分の食器を持って食堂を出て行ってしまった。ハンジさんもエルヴィン分隊長も何を考えているのか。私に何か期待しているようだけれど彼とは何もないのだ。兵士として、調査兵団の仲間として、ただそれだけだというのに。
「そんな事言われると…意識しちゃうじゃない……」
自分のボヤキは誰かに届く訳もなく、食堂を灯している松明が燃える音と重なった。
「…さっさと休め」
彼は何事も無かったかのように私の頭に手を乗せ一言言い残し、去って行った。廊下に取り残された自分は壁に身を預けたまま、脚の力が抜けその場にゆっくりと座り込む。石造りの床が冷たくて心地いい。本当になんなんだ。彼のやることに戸惑いが隠せない。
「ん?君は……こんなところでどうしたんだ?」
そこへやって来たのは自分と同じく遅めの夕食を摂りに来たであろうエルヴィン分隊長だった。急いで立ち上がろうとしたが腰が砕けて上手く立てない。分隊長がそれを見兼ねたのか自分を抱き上げると食堂へ入り椅子に座らせてくれた。上司に抱えられるとはなんて様なんだと思ったが「気にする必要はない」と気持ちを汲んでくれるエルヴィン分隊長。
「分隊長…ありがとうございます」
「いや、構わない。今日は大変だったようだね。モブリットに話を聞いたよ」
いつもより柔らかい表情で話す彼が気遣ってくれる。普段は何を考えているのか分からないような顔をしているのに、こういう時は優しい。
「そうなんですね。疲れが出たのでしょうか…管理がなってない証拠です…」
気を付けます、苦笑しつつ呼吸を整えた。そうなればお腹も空いてくる。体も動かせるようで胸を撫で下ろすと分隊長の分まで夕食の準備をした。
テーブルに対面で座り、食事を頬張る。向き合って座ったのはいいものの、何を話していいのやら分からない。黙ったままパンやスープを食していく、のだが……
「先程はリヴァイと何かあったのか?」
何の前触れもなくいきなりそんな事を聞かれスープが気管に入り咽せこんだ。慌てて水を飲み気持ちを落ち着かせる。
「いきなり何を言うんですか…」
「すまない。ここへ来る途中でリヴァイを見かけたものでな」
彼に何かされたのか?、蒼い瞳が自分を見つめる。どんな反応をして良いのやら…なんと言葉をかけようか、何かされたと言われればされたし、かと言ってそれが特別なものではないかもしれないし……参ったな、本当に何と応えればいいのか分からない。
「さしずめ、熱でもあるのかと額で確認されたのではないか?」
エルヴィン分隊長の言葉に驚愕する。正しくその通りな事で目が点になった。
「もしかして…見ていたのですか…?」
「いや。君は顔が赤いし何より手を額にあてていたからな。そうではないかと推測したまでだ」
流石だ、頭のキレ方が違うと感心し間を置いたのちに小さく頷き肯定する。
「本当に驚きました……彼が何故あんな事をしたのか…」
「だから言っただろう。彼は君の事を気に入っている、と」
「まさか…そんな事、信じられません…」
彼が自分を意識しているとでもいうのか。そんな訳がない、彼はいつだって険しい顔つきで…けれど、脳裏に浮かんだのは先程の行為や褒め言葉…なんだかんだで気にかけてくれている彼の姿だった。
「君も満更ではないんじゃないか?」
「そ、そんな事…!」
「はは、そんなに慌てれば肯定と捉えられるぞ」
楽しそうに笑うエルヴィン分隊長を不満げに見つめることしか出来ない。
「彼の誕生日会は参加自由だが…君を優先させよう」
「…余計なお世話です」
「連れないな。だが、これからが楽しみだ」
ほくそ笑む彼は立ち上がると自分の食器を持って食堂を出て行ってしまった。ハンジさんもエルヴィン分隊長も何を考えているのか。私に何か期待しているようだけれど彼とは何もないのだ。兵士として、調査兵団の仲間として、ただそれだけだというのに。
「そんな事言われると…意識しちゃうじゃない……」
自分のボヤキは誰かに届く訳もなく、食堂を灯している松明が燃える音と重なった。