朝、手を繋いで
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5.
いつも隣にいた彼奴らが欠けてしまいなんとも言えない虚無感が心の中にあった。後悔の念は、あるだろう…だが、あの金髪の言う通り俺達は無知で巨人の事について何も知らない。こんな事になったのも"巨人"がそうさせている。だからあの時、あの男に誓った。此奴の元にいれば何か分かるやもしれない、と…失った仲間の為にも最期まであの男に着いていくと誓った。
酒を喉に流し込んで夜風に当たりながら、今後の自分の在り方を考えていた時の記憶が甦る。
あの夜から1週間程経ったある日、隊編成のために兵士達が集められた。自分は部下は要らないと伝えている。だが、一匹狼で居ることは出来ないようで第1分隊に配属された。あの女兵士は変わらずあの変人眼鏡のところのようだが…自分には関係ない。隊が違う分、そこまで接点はない。ないはずなんだが、あの眼鏡はろくに仕事も出来ないようで…
「ハンジさん!またこんなところでサボって!」
「ハル!勘弁してくれ!もう寝不足で頭が回らないんだ!」
「みんなそうですよ!ハンジさんがやらなきゃいけないことが沢山あるんですから!」
「モブリットはどうした?!」
「モブリットさんは別件で資料室に篭っています!」
「あぁぁあー!そんなぁ!それじゃあ尚更時間がぁ!」
眼鏡の絶叫が食堂に響く。あの女兵士が… ハルと言ったか…彼奴が両手を腰にあてて叱責している。それでも動こうとしない眼鏡の側に立った。
「…おい、そこの眼鏡…さっさとここから出て行け。まともに食事も出来ねえだろうが…」
「リヴァイ?!」
「…あ"あ?」
此奴に名前呼びをされただけで胸糞悪い。それに…此奴から放たれる微かな異臭に己の眉間が深くなったのが分かった。
「…此奴は風呂に入ってんのか?」
近くにいるハルに声をかけた。まさか話しかけられるとは思っていなかったのだろう。間があった後に首を横に振った。どうりで、と舌打ちをし眼鏡の首根っこを鷲掴みにし引きずり出す。
「痛い痛い!離してくれよ、リヴァイ!」
「何言ってやがる…まずは体を清潔にしろ」
「まだ3日だ!1週間は入らずともいけるよ!」
それを聞いて歩を止めた。此奴は馬鹿なのか…。そんな正気でない返答に眼鏡を睨みつける。
「…てめぇ…冗談じゃねえだろうな…毎日汚れを落とせ…」
「君じゃないんだからいいだろう?」
「ほぅ…此処は清潔さに対しての躾がなってねぇようだな」
眼鏡をひと睨みした後にハルへ視線を向けこの眼鏡をシャワー室へ連れて行き、その後眼鏡の執務室へ向かった。入った途端に怒りが頂点に達し無言で部屋を出て掃除道具を用意する。
「今からここを掃除する。別の部屋で執務にあたれ」
「いいよーそんなの要らな…!」
眼鏡が反論しようとするのを箒の柄の先を勢いよく顔に突き付け口を閉じさせる。
「いいか…こんなゴミだめの中で執務にあたれるか。体を壊す。お前も、部下もだ。それが理解出来たらさっさと必要なもん持って出て行け」
眼鏡は観念したかのように「分かったよ」と言っていくつか書類を持ち部屋を出て行こうとする。勿論あの女兵士も眼鏡の後を追うが…
「お前はここに残れ。流石に1人でこの量は限界がある。手伝え」
「わ、私がですか?!」
「他に誰がいる。あの眼鏡の執務はそいつの仕事だ。自分でやらせろ」
リヴァイはケチだなぁ、と不貞腐れるような声が聞こえたが無視し、女へ白い布を手渡す。
「頭と顔半分をそれで隠せ。埃をあまり吸わねえようにな」
はい…、おずおずと受け取り言う通りにする。自分が怖いのか、何故かよそよそしい。無理もない。初めて言葉を交わした時、絞め殺そうとしたんだ。だが、今はそんな事は言ってられない。このゴミをどうにかしねぇと…窓を開けて掃除を始める。なめた掃除をするハルに厳しくしていたがやはり女性とあってか飲み込みが早い。それとも要領がいいのか思っていたよりも早い時間で綺麗になる。
「これだけやりゃ上出来だろう」
「すっきりしましたね…ありがとうございます」
「礼は要らない」
「意外でした…」
「あ?またか」
「男性なのに綺麗好きだなんて…」
「悪りぃか」
「いや、そういう訳じゃ…!」
「別にどうでもいい…お前の方こそ意外だった。飲み込みが早くて助かる。これから掃除の時は手伝え」
「なんで私が?!」
「俺が掃除の在り方を仕込んでやる」
「ええー…私でなくても他にも兵はたくさんいますよ?新兵にやらせたらいいじゃないですか…」
「…まだ教えるには早い。一先ずお前が先だ」
此奴に仕込ませれば新兵にもいずれ伝わる。どうやら自分は恐れられているだしな。
「あ、そういえば…この前のお借りしたハンカチをお返しします」
顔をしかめていた此奴は、今度は伏し目がちに自分が手渡したハンカチを差し出していた。ハンカチとそんな様子の女を見て視線を逸らす。
「…やる」
「そんな訳にはいきません」
「人が使ったもんに用はねぇ」
「なっ!ちゃんと洗濯してます!」
「そうだろうが、要らねえもんは要らねえよ」
それだけ言えば眼鏡の部屋を出る。背後でまたもピーピーと叫んでいたが対応するだけ無駄だと何も答えなかった。
その後、掃除の度に此奴の手が空いてる時は清掃に付き合わせた。だからなのか…色々と口答えもするようになってきたのだが、そんなやり取りが懐かしく地下街の頃を思い出すようになった。イザベルとはまた違うタイプだが物怖じせず話すところは悪くない。数ヶ月経った今でもそんな関係は変わらない。そう思ったんだが…
パタン——…
背後であの女兵士がエルヴィンの部屋に入る音が聞こえチラリと視線を向けた後、自分もこれから使うであろう執務室の部屋を掃除するために廊下を歩く。
あの女兵士との出会いを思い出した事で地下街の記憶に触れる。寝不足のせいか…感傷的に浸るのはらしくない。あの女の事も……彼女に対する気持ちが日に日に増していくのを感じながら小さく息を吐き、乾いた靴音が誰も居ない廊下に響いていった。
いつも隣にいた彼奴らが欠けてしまいなんとも言えない虚無感が心の中にあった。後悔の念は、あるだろう…だが、あの金髪の言う通り俺達は無知で巨人の事について何も知らない。こんな事になったのも"巨人"がそうさせている。だからあの時、あの男に誓った。此奴の元にいれば何か分かるやもしれない、と…失った仲間の為にも最期まであの男に着いていくと誓った。
酒を喉に流し込んで夜風に当たりながら、今後の自分の在り方を考えていた時の記憶が甦る。
あの夜から1週間程経ったある日、隊編成のために兵士達が集められた。自分は部下は要らないと伝えている。だが、一匹狼で居ることは出来ないようで第1分隊に配属された。あの女兵士は変わらずあの変人眼鏡のところのようだが…自分には関係ない。隊が違う分、そこまで接点はない。ないはずなんだが、あの眼鏡はろくに仕事も出来ないようで…
「ハンジさん!またこんなところでサボって!」
「ハル!勘弁してくれ!もう寝不足で頭が回らないんだ!」
「みんなそうですよ!ハンジさんがやらなきゃいけないことが沢山あるんですから!」
「モブリットはどうした?!」
「モブリットさんは別件で資料室に篭っています!」
「あぁぁあー!そんなぁ!それじゃあ尚更時間がぁ!」
眼鏡の絶叫が食堂に響く。あの女兵士が… ハルと言ったか…彼奴が両手を腰にあてて叱責している。それでも動こうとしない眼鏡の側に立った。
「…おい、そこの眼鏡…さっさとここから出て行け。まともに食事も出来ねえだろうが…」
「リヴァイ?!」
「…あ"あ?」
此奴に名前呼びをされただけで胸糞悪い。それに…此奴から放たれる微かな異臭に己の眉間が深くなったのが分かった。
「…此奴は風呂に入ってんのか?」
近くにいるハルに声をかけた。まさか話しかけられるとは思っていなかったのだろう。間があった後に首を横に振った。どうりで、と舌打ちをし眼鏡の首根っこを鷲掴みにし引きずり出す。
「痛い痛い!離してくれよ、リヴァイ!」
「何言ってやがる…まずは体を清潔にしろ」
「まだ3日だ!1週間は入らずともいけるよ!」
それを聞いて歩を止めた。此奴は馬鹿なのか…。そんな正気でない返答に眼鏡を睨みつける。
「…てめぇ…冗談じゃねえだろうな…毎日汚れを落とせ…」
「君じゃないんだからいいだろう?」
「ほぅ…此処は清潔さに対しての躾がなってねぇようだな」
眼鏡をひと睨みした後にハルへ視線を向けこの眼鏡をシャワー室へ連れて行き、その後眼鏡の執務室へ向かった。入った途端に怒りが頂点に達し無言で部屋を出て掃除道具を用意する。
「今からここを掃除する。別の部屋で執務にあたれ」
「いいよーそんなの要らな…!」
眼鏡が反論しようとするのを箒の柄の先を勢いよく顔に突き付け口を閉じさせる。
「いいか…こんなゴミだめの中で執務にあたれるか。体を壊す。お前も、部下もだ。それが理解出来たらさっさと必要なもん持って出て行け」
眼鏡は観念したかのように「分かったよ」と言っていくつか書類を持ち部屋を出て行こうとする。勿論あの女兵士も眼鏡の後を追うが…
「お前はここに残れ。流石に1人でこの量は限界がある。手伝え」
「わ、私がですか?!」
「他に誰がいる。あの眼鏡の執務はそいつの仕事だ。自分でやらせろ」
リヴァイはケチだなぁ、と不貞腐れるような声が聞こえたが無視し、女へ白い布を手渡す。
「頭と顔半分をそれで隠せ。埃をあまり吸わねえようにな」
はい…、おずおずと受け取り言う通りにする。自分が怖いのか、何故かよそよそしい。無理もない。初めて言葉を交わした時、絞め殺そうとしたんだ。だが、今はそんな事は言ってられない。このゴミをどうにかしねぇと…窓を開けて掃除を始める。なめた掃除をするハルに厳しくしていたがやはり女性とあってか飲み込みが早い。それとも要領がいいのか思っていたよりも早い時間で綺麗になる。
「これだけやりゃ上出来だろう」
「すっきりしましたね…ありがとうございます」
「礼は要らない」
「意外でした…」
「あ?またか」
「男性なのに綺麗好きだなんて…」
「悪りぃか」
「いや、そういう訳じゃ…!」
「別にどうでもいい…お前の方こそ意外だった。飲み込みが早くて助かる。これから掃除の時は手伝え」
「なんで私が?!」
「俺が掃除の在り方を仕込んでやる」
「ええー…私でなくても他にも兵はたくさんいますよ?新兵にやらせたらいいじゃないですか…」
「…まだ教えるには早い。一先ずお前が先だ」
此奴に仕込ませれば新兵にもいずれ伝わる。どうやら自分は恐れられているだしな。
「あ、そういえば…この前のお借りしたハンカチをお返しします」
顔をしかめていた此奴は、今度は伏し目がちに自分が手渡したハンカチを差し出していた。ハンカチとそんな様子の女を見て視線を逸らす。
「…やる」
「そんな訳にはいきません」
「人が使ったもんに用はねぇ」
「なっ!ちゃんと洗濯してます!」
「そうだろうが、要らねえもんは要らねえよ」
それだけ言えば眼鏡の部屋を出る。背後でまたもピーピーと叫んでいたが対応するだけ無駄だと何も答えなかった。
その後、掃除の度に此奴の手が空いてる時は清掃に付き合わせた。だからなのか…色々と口答えもするようになってきたのだが、そんなやり取りが懐かしく地下街の頃を思い出すようになった。イザベルとはまた違うタイプだが物怖じせず話すところは悪くない。数ヶ月経った今でもそんな関係は変わらない。そう思ったんだが…
パタン——…
背後であの女兵士がエルヴィンの部屋に入る音が聞こえチラリと視線を向けた後、自分もこれから使うであろう執務室の部屋を掃除するために廊下を歩く。
あの女兵士との出会いを思い出した事で地下街の記憶に触れる。寝不足のせいか…感傷的に浸るのはらしくない。あの女の事も……彼女に対する気持ちが日に日に増していくのを感じながら小さく息を吐き、乾いた靴音が誰も居ない廊下に響いていった。