朝、手を繋いで
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4.
(Levi side)
その年の冬。
調査兵団に入ってから数ヶ月が経った。初めての壁外調査で最も信頼していた仲間を失い、取引で自分を此処に招き入れた男は分隊長から団長の座に就こうとしている。彼奴は分隊長におさまる野郎じゃないと思っていたがやはりこうなったか。キース団長も彼奴の器量が計り知れないと感じたのだろう。
「めでてぇな。晴れて団長だ」
此奴の執務室に用があって来たのだが、ついでに祝いの言葉をかける。
「はは、めでたいのだろうか。団長に就任し果たしてそれが吉と出るか…」
「何言ってやがる。なりてぇ面してたじゃねぇか」
「そんなつもりはないが?」
自分が団長になれば思うように部下を動かせる。仕組みも変えることが出来る。ずっと此奴にはそんな気持ちがあったに違いないと出会ってから感じた。
「…どちらにせよ、俺はあんたについて行くと決めた。せいぜい団長業にこれから励むんだな」
「君も、兵士長の座に就くじゃないか。私が団長になった暁には力量を発揮出来るように計うとしよう」
「…余計な事を…面倒くせぇことをしやがる」
チッ、舌打ちをし部屋を出る。恐らく今頃気味の悪い笑みでも浮かべてるに違いない。何を考えているのか理解しようとも思わないが。
「あ、リヴァイさん」
エルヴィンの執務室を出てから廊下を歩けば向かい側から名前を呼ばれる。視線を僅かに上げればあの女兵士が書類を両手に抱え歩いていた。
「エルヴィン分隊長は執務室にいらっしゃましたか?」
「ああ。今頃、嬉々として書類整理に追われてるだろう」
「嬉々としてって…リヴァイさんも大変なのでは?」
「彼奴と一緒にするな」
「心配してるんじゃないですか」
「そうか…気持ちだけ受け取っておく」
もう素っ気ないですね!、眉根を寄せて怒る此奴は自分に容赦なく思った事を言ってきやがる。感情が豊かなのか喜怒哀楽がよく分かった。所詮、ただのガキに過ぎない。
此奴と初めて言葉を交わしたのは自分が初めての壁外調査から帰還した日の夜のこと。イザベルとファーランを亡くし、後悔をするなとエルヴィンに言われ何か大きなものを持ってる彼奴について行こう、その決意表明と命を賭した仲間に酒を手向けていた所に現れた。その酒はエルヴィンの野郎が隠し持っていたらしく、執務室を出る際「流石に疲れただろう。寝不足は体に良くない。これでも飲んでゆっくりする事だ」、そう言って渡された。初めは断ろうとしたがボトルを見て上物だと直感が働き有り難く頂いたわけだ。
此奴は当然それを知らない。だからゴロツキだの、くすねただと散々な事を言いやがる。此奴が自分の事をよく思っていないことは気付いていた。他の奴らにも居たようだしな。何を言われようが地下街での生活もあって慣れていた。だが、自分の事ならまだしも途中で仲間を貶された事に胸糞悪くなり気付けば相手の胸ぐらを反射的に掴み締め上げていた。
だが、俺も女を殺るのは後味が悪い。ましてやここは地上で調査兵団の兵士だ。別に殺るつもりでもなかったがこれで大人しくなるだろう。こんな奴でも謝罪する素直な心を持ち合わせているようで悪くないと思った。
言葉を交わすつもりは無かったが、あの眼鏡の変人に此奴の話をチラリと聞かされた事を思い出した。数年在籍しているが、巨人討伐補佐は腕がいいらしい。亡くなった同期が良きライバルとなって腕を磨いていたとか。その同期もイザベル、ファーランと同じ巨人にやられちまったようだった。だからこそ負の感情が自分に向けられる事はある程度理解していた。
「例えば…ほら、あそこに一際大きな星があるでしょう?あれとここと…あっちを繋げると…鳥が飛んでるように見えるんです。そして、広げた羽の間に無数の星達が集まって、流れる星の道が…」
星の事となると先程の態度が一変して楽しそうに話す此奴の横顔をチラリと見やる。恐らく友ともこうして話したに違いない。
「…すまねぇな」
聞こえるか分からない程の小さな声で呟いた。どうやら聞こえていないようで何も言わずに話を続け、会話が途切れると去って行く。足音が完全に聞こえなくなってからもう一度彼奴が教えてくれた星とやらを見上げた。ここにイザベルが居ればはしゃいでいたに違いない。ファーランも地上から見る星々に形があるのだと知ったら喜んでいただろう…。
(Levi side)
その年の冬。
調査兵団に入ってから数ヶ月が経った。初めての壁外調査で最も信頼していた仲間を失い、取引で自分を此処に招き入れた男は分隊長から団長の座に就こうとしている。彼奴は分隊長におさまる野郎じゃないと思っていたがやはりこうなったか。キース団長も彼奴の器量が計り知れないと感じたのだろう。
「めでてぇな。晴れて団長だ」
此奴の執務室に用があって来たのだが、ついでに祝いの言葉をかける。
「はは、めでたいのだろうか。団長に就任し果たしてそれが吉と出るか…」
「何言ってやがる。なりてぇ面してたじゃねぇか」
「そんなつもりはないが?」
自分が団長になれば思うように部下を動かせる。仕組みも変えることが出来る。ずっと此奴にはそんな気持ちがあったに違いないと出会ってから感じた。
「…どちらにせよ、俺はあんたについて行くと決めた。せいぜい団長業にこれから励むんだな」
「君も、兵士長の座に就くじゃないか。私が団長になった暁には力量を発揮出来るように計うとしよう」
「…余計な事を…面倒くせぇことをしやがる」
チッ、舌打ちをし部屋を出る。恐らく今頃気味の悪い笑みでも浮かべてるに違いない。何を考えているのか理解しようとも思わないが。
「あ、リヴァイさん」
エルヴィンの執務室を出てから廊下を歩けば向かい側から名前を呼ばれる。視線を僅かに上げればあの女兵士が書類を両手に抱え歩いていた。
「エルヴィン分隊長は執務室にいらっしゃましたか?」
「ああ。今頃、嬉々として書類整理に追われてるだろう」
「嬉々としてって…リヴァイさんも大変なのでは?」
「彼奴と一緒にするな」
「心配してるんじゃないですか」
「そうか…気持ちだけ受け取っておく」
もう素っ気ないですね!、眉根を寄せて怒る此奴は自分に容赦なく思った事を言ってきやがる。感情が豊かなのか喜怒哀楽がよく分かった。所詮、ただのガキに過ぎない。
此奴と初めて言葉を交わしたのは自分が初めての壁外調査から帰還した日の夜のこと。イザベルとファーランを亡くし、後悔をするなとエルヴィンに言われ何か大きなものを持ってる彼奴について行こう、その決意表明と命を賭した仲間に酒を手向けていた所に現れた。その酒はエルヴィンの野郎が隠し持っていたらしく、執務室を出る際「流石に疲れただろう。寝不足は体に良くない。これでも飲んでゆっくりする事だ」、そう言って渡された。初めは断ろうとしたがボトルを見て上物だと直感が働き有り難く頂いたわけだ。
此奴は当然それを知らない。だからゴロツキだの、くすねただと散々な事を言いやがる。此奴が自分の事をよく思っていないことは気付いていた。他の奴らにも居たようだしな。何を言われようが地下街での生活もあって慣れていた。だが、自分の事ならまだしも途中で仲間を貶された事に胸糞悪くなり気付けば相手の胸ぐらを反射的に掴み締め上げていた。
だが、俺も女を殺るのは後味が悪い。ましてやここは地上で調査兵団の兵士だ。別に殺るつもりでもなかったがこれで大人しくなるだろう。こんな奴でも謝罪する素直な心を持ち合わせているようで悪くないと思った。
言葉を交わすつもりは無かったが、あの眼鏡の変人に此奴の話をチラリと聞かされた事を思い出した。数年在籍しているが、巨人討伐補佐は腕がいいらしい。亡くなった同期が良きライバルとなって腕を磨いていたとか。その同期もイザベル、ファーランと同じ巨人にやられちまったようだった。だからこそ負の感情が自分に向けられる事はある程度理解していた。
「例えば…ほら、あそこに一際大きな星があるでしょう?あれとここと…あっちを繋げると…鳥が飛んでるように見えるんです。そして、広げた羽の間に無数の星達が集まって、流れる星の道が…」
星の事となると先程の態度が一変して楽しそうに話す此奴の横顔をチラリと見やる。恐らく友ともこうして話したに違いない。
「…すまねぇな」
聞こえるか分からない程の小さな声で呟いた。どうやら聞こえていないようで何も言わずに話を続け、会話が途切れると去って行く。足音が完全に聞こえなくなってからもう一度彼奴が教えてくれた星とやらを見上げた。ここにイザベルが居ればはしゃいでいたに違いない。ファーランも地上から見る星々に形があるのだと知ったら喜んでいただろう…。