朝、手を繋いで
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1.
私とリヴァイ兵長との出会いは決していいと言えるようなものではなかった。それは、彼に対して悪い印象しか持ち合わせていなかったから。でも何故か、接するうちに彼を認めるようになり、気が付いたら尊敬や憧れを通り越して……今は惹かれている。彼が自分の事をどう思っているかなんて分からないし、知りたくはない。だって自分は兵士で尚且つ所属兵科は『調査兵団』。いつ死ぬやも分からぬ自分が恋などに現を抜かしている暇などないのだ。ましてやそれが人類最強と言われるようになった男になんて……だから男としてではなく、兵士として人として接する。
それはずっと変わらない。そう、思っていた。
—————
844年 某日
「新しい仲間を紹介する。皆に自己紹介を」
朝、珍しく全調査兵に集合の号令がかかり、壇上にはキース団長と男2人、女1人の3人が居た。自分はハンジ班の隊列に並んでその様子を眺める。
「リヴァイだ」
背の低い、黒髪の男は名前だけ告げる。え…それだけ?、きっとこの時そう思ったのは自分だけではないはず。あのリヴァイという男は目つきが悪くて何だか近寄りがたい。まぁ、自分と接触することはあまりないだろうと深く考えなかった。
「ハル、あの新しく来た3人の訓練見た?」
「ううん、私は別の場所に居たから見てないけど…」
「凄かったわよ?それに、なんでも王都の地下街からエルヴィン分隊長が引き揚げて来たらしいのよ」
「ぇえ!?エルヴィン分隊長が??」
今は昼餉時で同期と一緒に食事を摂っていた。同期はフラゴン班の兵で乗馬や立体機動の動きを見たらしい。彼の立体機動の事は耳にしていたが、本当に凄いらしい。そして同期はファーラン、イザベルと話をしたようだが……
「話をしてたら地下街から来たとは思えないほど普通なのよね」
「えー、でも気を付けなよ?こんな中途半端な時期に入団するなんて変でしょ。絶対何か裏がある」
「考えすぎよ」
同期はそう言って笑っているが自分はまだ納得がいかない。今言ったように入団時期がおかしいのだ。彼らの事を怪訝に思っているのは自分だけではないようで兵の中からも不満の声が多数上がっていた。
そんな中、次の壁外調査にも彼等が参加すると情報が回ってきて不満が爆発した。
「ハンジさん!なんで彼等も参加するのですか?!まだ入団して間もないというのに!!」
おかしいです!、自分の直属の上司に数人の仲間と一緒に訴えに来ている。団長もエルヴィン分隊長も何を考えているのかと。
「ハル。君の言いたいことは分かる。だが、団長が決めた事だ。私達は従うしかないだろ?」
「ですが…!」
「言っとくけど、私はすごーく興味がある。特にリヴァイって彼は……」
ぐふふ、とメガネを光らせ始めたハンジさんを見て慌てて退室する。いくら立体機動の扱いに長けているからと言っても実戦は違う。壁外に出ても泣き言を言うに決まっている。
————……
「……す、凄い…」
なんて思っていたけれど、今、目の前で起きた事は夢だろうか。
エルヴィン分隊長が考案した"長距離索敵陣形"と言われるものを試すために壁外にいる。そして巨人が現れたのだが初日のそれも運悪く奇行種。応戦するも兵が殺られるのを後方から見ることしか出来なかった。
「ハンジ分隊長!救援に入りましょう!」
「ダメだ!私達はこのままキース団長達と合流する!」
「…しかし!」
「いいかい、ここは壁外だ。1人でも多くの兵を残して帰還するのが懸命だ」
ハンジさんが言ってることは最もだ。それぐらい自分でも理解している……でもあそこにはフラゴン分隊長の班が。つまりは自分の同期もいる…。歯を食いしばり、断腸の思いで無事を祈った。ハンジさんの合図で横にそれ始めたがそこへ誰かが巨人の足へ切り込みを入れたと思えば次の瞬間には巨人が蒸気を上げて倒れていた。目の前でそれを目撃して思わず"凄い"と呟いてしまう。
ハンジさんも同じだったようで暫く呆けていたが「急ごう!」馬を蹴って加速する。チラリと先程まで巨人が立って居た場所には風でなびく黒髪が見えた。紛れもなくつい先日入団したあの男が巨人を討伐したのだ。
その瞬間、彼はこの兵団にとって欠かせない人材に成りうるのではないかと思うのと同時に嫉妬した。訓練兵団を経ていない人間が、いくら立体機動を上手く使いこなせてるとはいえいきなり巨人を仕留めたのだ。しかも奇行種を。自分ですらまだ補佐ぐらいだというのに…。邪念が渦巻き握る手綱に力が入る。
私とリヴァイ兵長との出会いは決していいと言えるようなものではなかった。それは、彼に対して悪い印象しか持ち合わせていなかったから。でも何故か、接するうちに彼を認めるようになり、気が付いたら尊敬や憧れを通り越して……今は惹かれている。彼が自分の事をどう思っているかなんて分からないし、知りたくはない。だって自分は兵士で尚且つ所属兵科は『調査兵団』。いつ死ぬやも分からぬ自分が恋などに現を抜かしている暇などないのだ。ましてやそれが人類最強と言われるようになった男になんて……だから男としてではなく、兵士として人として接する。
それはずっと変わらない。そう、思っていた。
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844年 某日
「新しい仲間を紹介する。皆に自己紹介を」
朝、珍しく全調査兵に集合の号令がかかり、壇上にはキース団長と男2人、女1人の3人が居た。自分はハンジ班の隊列に並んでその様子を眺める。
「リヴァイだ」
背の低い、黒髪の男は名前だけ告げる。え…それだけ?、きっとこの時そう思ったのは自分だけではないはず。あのリヴァイという男は目つきが悪くて何だか近寄りがたい。まぁ、自分と接触することはあまりないだろうと深く考えなかった。
「ハル、あの新しく来た3人の訓練見た?」
「ううん、私は別の場所に居たから見てないけど…」
「凄かったわよ?それに、なんでも王都の地下街からエルヴィン分隊長が引き揚げて来たらしいのよ」
「ぇえ!?エルヴィン分隊長が??」
今は昼餉時で同期と一緒に食事を摂っていた。同期はフラゴン班の兵で乗馬や立体機動の動きを見たらしい。彼の立体機動の事は耳にしていたが、本当に凄いらしい。そして同期はファーラン、イザベルと話をしたようだが……
「話をしてたら地下街から来たとは思えないほど普通なのよね」
「えー、でも気を付けなよ?こんな中途半端な時期に入団するなんて変でしょ。絶対何か裏がある」
「考えすぎよ」
同期はそう言って笑っているが自分はまだ納得がいかない。今言ったように入団時期がおかしいのだ。彼らの事を怪訝に思っているのは自分だけではないようで兵の中からも不満の声が多数上がっていた。
そんな中、次の壁外調査にも彼等が参加すると情報が回ってきて不満が爆発した。
「ハンジさん!なんで彼等も参加するのですか?!まだ入団して間もないというのに!!」
おかしいです!、自分の直属の上司に数人の仲間と一緒に訴えに来ている。団長もエルヴィン分隊長も何を考えているのかと。
「ハル。君の言いたいことは分かる。だが、団長が決めた事だ。私達は従うしかないだろ?」
「ですが…!」
「言っとくけど、私はすごーく興味がある。特にリヴァイって彼は……」
ぐふふ、とメガネを光らせ始めたハンジさんを見て慌てて退室する。いくら立体機動の扱いに長けているからと言っても実戦は違う。壁外に出ても泣き言を言うに決まっている。
————……
「……す、凄い…」
なんて思っていたけれど、今、目の前で起きた事は夢だろうか。
エルヴィン分隊長が考案した"長距離索敵陣形"と言われるものを試すために壁外にいる。そして巨人が現れたのだが初日のそれも運悪く奇行種。応戦するも兵が殺られるのを後方から見ることしか出来なかった。
「ハンジ分隊長!救援に入りましょう!」
「ダメだ!私達はこのままキース団長達と合流する!」
「…しかし!」
「いいかい、ここは壁外だ。1人でも多くの兵を残して帰還するのが懸命だ」
ハンジさんが言ってることは最もだ。それぐらい自分でも理解している……でもあそこにはフラゴン分隊長の班が。つまりは自分の同期もいる…。歯を食いしばり、断腸の思いで無事を祈った。ハンジさんの合図で横にそれ始めたがそこへ誰かが巨人の足へ切り込みを入れたと思えば次の瞬間には巨人が蒸気を上げて倒れていた。目の前でそれを目撃して思わず"凄い"と呟いてしまう。
ハンジさんも同じだったようで暫く呆けていたが「急ごう!」馬を蹴って加速する。チラリと先程まで巨人が立って居た場所には風でなびく黒髪が見えた。紛れもなくつい先日入団したあの男が巨人を討伐したのだ。
その瞬間、彼はこの兵団にとって欠かせない人材に成りうるのではないかと思うのと同時に嫉妬した。訓練兵団を経ていない人間が、いくら立体機動を上手く使いこなせてるとはいえいきなり巨人を仕留めたのだ。しかも奇行種を。自分ですらまだ補佐ぐらいだというのに…。邪念が渦巻き握る手綱に力が入る。
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