雨宿り**
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雨宿り1
今日は久々の休暇で街に買い物に来ていた。先日の壁外調査では被害は少なかったものの、これといった成果がなかった。結果を聞いた中央政府から壁外調査の打ち切りの話が出始めていることを聞き、みなで打開策がないかと思案してこれまでの調査の洗い直しと書類作成に追われまとまった休暇が先延ばしになったのだ。
—— 久々の休みで奮発して買っちゃった
街の中を歩きながら腕に抱える紙袋の中には小物など自分の好きなものばかりが入っている。チラリと紙袋に視線を移せば顔を綻ばせ足取りも軽かった。
調査兵団に入団してもうすぐ一年が経とうとしている。少ない給料だがコツコツと貯めたお金で今日はいい買い物が出来た。気持ちは晴れやかだが空を見上げれば雲行きが怪しい。本部へ帰路に就く足の動きを速めた。
—— 近道しようかな
大通りから脇道へ入った所で誰かとぶつかりヨロけて尻餅をついてしまった。紙袋も落として中身が散らばる。
「いたた……」
「…チッ。前を向いて歩け」
舌打ちに粗暴な口の聞き方をするその声に聞き覚えがあり顔を上げる。やはりそこには眉間に皺を寄せジロリとこちらを見下ろす人類最強の兵士が立っていた。
「り、リヴァイ兵長!」
「あ?…てめぇはメガネ野郎の部下じゃねぇか」
まさか自分の事を知っているとは思っておらず目をパチクリさせて上司を見上げた。彼は屈むと周りに散らばった荷物を一つ一つ拾いパンパンと砂つぶを落としてくれていた。
「兵長!いいですよ!お手が汚れます!」
慌てて小物を拾い紙袋に詰めていく。
最後に拾った物を見るとショックを受け顔が歪む。包み紙で包まれているそれはガラスで出来た小物入れだったからだ。器のような形だったがシンプルで気に入り今日一番の高い品物だった。
「これ…高かったのに……」
呆然と手のひらに乗せているそれを見つめていると視線を感じたので顔を上げる。まだ屈んでいた最強兵士の彼と目が合った。
「すまねぇ…壊れちまったか」
「えっ、いや、その…大丈夫です。高かったけどまたお金貯めて買えばいいですし。そもそも私が急いでいたのが悪いですから」
彼に向かって苦笑しながら話しているといきなり手を掴まれ立たされる。驚きを隠せなかったが手を掴んだまま彼は歩き出した。
「どこで買った」
「へっ?」
「だからどこでそれを買ったかと聞いてる」
さっさと答えろ、と前を歩きながら不機嫌に話す彼に怯えてしまい萎縮しながら質問に答えた。
「あ、えっと…この先にある雑貨屋です…」
「そうか」
彼はそれだけ言うとズンズンと歩いて行く。
しかしそれは途中で止めざるを得なくなってしまった。なぜならば雲行きが怪しかった空からポツポツと雨が降り出したからだ。
「わっ!雨だ!」
「…チッ」
彼にまた手を引かれると軽く小走りになりながら脇道に入りどこかの建物に入った。少しだけ濡れてしまいカバンに入れていたハンカチで雨粒を払っていく。隣では彼もハンカチで雨粒を綺麗に取り除いていた。背中にも雨粒がついているのが見えたので恐る恐る声をかけてみた。
「兵長…背中にも雨粒がついてるのでとってもいいですか?」
ジロッと視線をこちらに向け「あぁ頼む」とだけ言って背中を向けてくれる。ドキドキしながらハンカチで優しく雨粒を払って綺麗にする。
「終わりました」
「助かった」
目線も合わせずそう言って側にある椅子にドサッと座る彼。それを不思議に思いながら見ていると「くしゅん!」とくしゃみをしてしまう。
—— うぅ…兵長の前でくしゃみして…
マヌケとか思われてないかな…
ハンカチで鼻を押さえて俯いているとまた彼に手を掴まれ近くの階段を登り始めた。
「えっ、あの…兵長どこへ?」
「……」
彼は何も言わず三階まで来ると廊下の両脇にいくつもある扉の中から一番奥まで歩き止まる。鍵を開けて中へ入って行く彼。
「何してやがる。早く入ってそこを閉めろ」
「は、はいっ!」
ジロッと睨まれ体に緊張が走ると急いで返事をして中に入り扉を閉めた。夕方どきで尚且つ雲がかかっているので部屋の中は薄暗いがそこには少し大きめのベッドと小さな丸いテーブルと椅子が二脚置かれていた。
「あの、ここは…?」
「宿屋だ」
「えっ!なんでこんなところに?!」
宿屋と言えばもちろんただ泊まるだけの人もいるが別の理由で利用する人も多い。それは逢引で使われると友人から聞いていたので何故彼がこんなところへ連れて来たのか焦ってしまった。
「安心しろ。ガキなんざ興味ねぇ」
彼は気が付かなかったが奥にあるソファーにドカッと座りながらこちらを見ている。
「そ、そうですか…」
「それより脱げ」
「へっ?!」
—— さっき興味がないとか言ってたのに?!
もう頭の中がパニックになり紙袋をぎゅっと抱きかかえて立ち竦むことしか出来なかった。
「勘違いするな。服を脱いでシャワーを浴びてこいと言ってるんだ」
—— あっ、なるほど…
それを聞いてホッとすると体の緊張が少しだけとれたのでテーブルに紙袋を置いた。その時右手に走った痛みで顔を歪める。
「っ…いたっ…」
右手を見ると手のひらに小さな傷が出来ており血が少しだけ滲んでいた。どうやら先程拾ったガラスの破片で出来たものだと推測できた。
—— ど、どうしよう!これじゃあグリップが握れない!
右手を見て泣きそうになるといつのまにか目の前に彼が立っていた。
「怪我したのか」
「はい…これじゃ思うようにグリップが握れません…」
落ち込んでいると怪我をした右手を掴まれじっと見られる。すると彼は何を思ったのかペロリと傷を舐めるではないか。
「へ、兵長!汚いですよ!」
「あ?何言ってやがる。応急処置だ」
自分よりも少し背の高い彼を目上げると鋭い視線で見下ろされる。彼は視線を交わらせたまま右手首を持ち上げまたペロッと何度も舐める。
—— …っっ……!
彼の生暖かい舌の感触が手のひらからゾワッと全身を駆け巡る。見つめ合っているが耐え切れなくなり目をぎゅっと閉じその刺激に耐えた。すると手のひらを舐めていた舌がツッと指に這ってカプッと口に含まれる。
「やっ…へい、ちょう……」
思わず吐息が漏れ彼を見上げる。
「も、大丈夫ですから…ありがとうございます…」
きっと顔が真っ赤なんだろうなと考えていると手が離され解放された。ホッと胸を撫で下ろしていると彼に睨まれた。
「早くシャワーを浴びてこい」
「は、はい!」
慌ててシャワールームへ行き服を脱ぐとシャワーを浴びて体を洗った。急いで出て着替えようとしたが服が見当たらない。あるのは下着とバスローブのようなものだけだ。とりあえずは体を拭いてそれを着るとシャワールームを出た。
「あの…シャワー浴びたのですが服が…わぁ!」
俯きながら話しかけていたが彼に視線を向けると同じようにバスローブを身につけていたため驚いてしまった。
「チッ。いちいちうるせぇな」
「す、すみません…」
—— あぁ…今日は人生最悪の日だ…
奮発して買った物は落として壊すし、人類最強の兵士と出会ったと思えば睨んで怒られてばっかりだし最悪だ、と泣きそうになった。
「おい」
「はい!何でしょう!?」
「服は今乾かしてもらっている。出来上がるまではここでゆっくりしていけ」
「は、はぁ……」
ゆっくりしていけと言われてもこんな密室に二人きりは耐えられない。気を紛らわすためにテーブルに近づくと紙袋から今日買った物を出して確認することに。
一通り傷がないか確認するがあの小物入れ以外は全部なんともなかったので安心する。
—— よかった…他のものは大丈夫だ
ニコニコしながらまた紙袋に大事にしまっているとまた視線を感じてそちらを見る。彼がいつのまにかベッドに腰掛けおり距離が近くなっていた。
「そういうのがいいのか?」
彼は不思議そうにしている。
「はい…私はこういう小物が好きです。まぁ女性だったら好きな人が多いと思いますよ?」
そんなたわいもないことを話しているとまたくしゃみをしてしまう。
「こっちへこい」
彼に手を掴まれるとベッドへ促された。
彼は先にベッドへ潜り込むと戸惑っている自分の手をまた掴みグッと引きずり込まれ彼の腕の中におさまる。
何が起きているのか訳が分からず混乱してパニックに陥った。人類最強の兵士と言われる男に抱きしめられているのだ。しかもベッド上で。それに下着は身につけているとはいえお互いバスローブで意識しない訳がない。
—— あわわ……なんでこうなってるの?!
彼の腕の中で体を強張らせているとぎゅっと抱きしめる力が強くなった。そのせいで身体がより密着して彼の温もりが伝わってくる。
「この方があったけぇだろ」
不意に聞こえた彼の言葉を考えた。
—— この方があったかい?
ベッドで抱きしめ合ってるから?
別にそんなに寒くないけど……あっ。
そこで自分がくしゃみをしたことを思い出しこれまでのことを振り返った。くしゃみをしたのでこの部屋にきてシャワーも浴びろと言われ、今もこうして抱きしめてくれている。それは自分が風邪を引かないようにしてくれている彼の優しさなのではないかと考えるようになった。
—— これが兵長の優しさ……
リヴァイ班のメンバーが兵長は優しいところかあると言っているのを聞いたことがあったが今の今まで半信半疑でいた。そもそも自分は隊が違うので接点がない。
今こうして彼の言葉の裏にある優しさに感動しながら彼の温もりを感じていた。そして気持ちが落ち着くと彼の胸に擦り寄った。
「兵長…あったかいです…ありがとうございます」
彼の胸に顔を埋めてふわりと笑った。
—— 兵長はあったかいな…
粗暴で口が悪いから冷たい人と思ってたけど…
実は心があったかい人なのかもしれない
彼と自分の体温でベッドの中が温もってくるとだんだん眠気が押し寄せてきて気が付けば眠ってしまっていた。
今日は久々の休暇で街に買い物に来ていた。先日の壁外調査では被害は少なかったものの、これといった成果がなかった。結果を聞いた中央政府から壁外調査の打ち切りの話が出始めていることを聞き、みなで打開策がないかと思案してこれまでの調査の洗い直しと書類作成に追われまとまった休暇が先延ばしになったのだ。
—— 久々の休みで奮発して買っちゃった
街の中を歩きながら腕に抱える紙袋の中には小物など自分の好きなものばかりが入っている。チラリと紙袋に視線を移せば顔を綻ばせ足取りも軽かった。
調査兵団に入団してもうすぐ一年が経とうとしている。少ない給料だがコツコツと貯めたお金で今日はいい買い物が出来た。気持ちは晴れやかだが空を見上げれば雲行きが怪しい。本部へ帰路に就く足の動きを速めた。
—— 近道しようかな
大通りから脇道へ入った所で誰かとぶつかりヨロけて尻餅をついてしまった。紙袋も落として中身が散らばる。
「いたた……」
「…チッ。前を向いて歩け」
舌打ちに粗暴な口の聞き方をするその声に聞き覚えがあり顔を上げる。やはりそこには眉間に皺を寄せジロリとこちらを見下ろす人類最強の兵士が立っていた。
「り、リヴァイ兵長!」
「あ?…てめぇはメガネ野郎の部下じゃねぇか」
まさか自分の事を知っているとは思っておらず目をパチクリさせて上司を見上げた。彼は屈むと周りに散らばった荷物を一つ一つ拾いパンパンと砂つぶを落としてくれていた。
「兵長!いいですよ!お手が汚れます!」
慌てて小物を拾い紙袋に詰めていく。
最後に拾った物を見るとショックを受け顔が歪む。包み紙で包まれているそれはガラスで出来た小物入れだったからだ。器のような形だったがシンプルで気に入り今日一番の高い品物だった。
「これ…高かったのに……」
呆然と手のひらに乗せているそれを見つめていると視線を感じたので顔を上げる。まだ屈んでいた最強兵士の彼と目が合った。
「すまねぇ…壊れちまったか」
「えっ、いや、その…大丈夫です。高かったけどまたお金貯めて買えばいいですし。そもそも私が急いでいたのが悪いですから」
彼に向かって苦笑しながら話しているといきなり手を掴まれ立たされる。驚きを隠せなかったが手を掴んだまま彼は歩き出した。
「どこで買った」
「へっ?」
「だからどこでそれを買ったかと聞いてる」
さっさと答えろ、と前を歩きながら不機嫌に話す彼に怯えてしまい萎縮しながら質問に答えた。
「あ、えっと…この先にある雑貨屋です…」
「そうか」
彼はそれだけ言うとズンズンと歩いて行く。
しかしそれは途中で止めざるを得なくなってしまった。なぜならば雲行きが怪しかった空からポツポツと雨が降り出したからだ。
「わっ!雨だ!」
「…チッ」
彼にまた手を引かれると軽く小走りになりながら脇道に入りどこかの建物に入った。少しだけ濡れてしまいカバンに入れていたハンカチで雨粒を払っていく。隣では彼もハンカチで雨粒を綺麗に取り除いていた。背中にも雨粒がついているのが見えたので恐る恐る声をかけてみた。
「兵長…背中にも雨粒がついてるのでとってもいいですか?」
ジロッと視線をこちらに向け「あぁ頼む」とだけ言って背中を向けてくれる。ドキドキしながらハンカチで優しく雨粒を払って綺麗にする。
「終わりました」
「助かった」
目線も合わせずそう言って側にある椅子にドサッと座る彼。それを不思議に思いながら見ていると「くしゅん!」とくしゃみをしてしまう。
—— うぅ…兵長の前でくしゃみして…
マヌケとか思われてないかな…
ハンカチで鼻を押さえて俯いているとまた彼に手を掴まれ近くの階段を登り始めた。
「えっ、あの…兵長どこへ?」
「……」
彼は何も言わず三階まで来ると廊下の両脇にいくつもある扉の中から一番奥まで歩き止まる。鍵を開けて中へ入って行く彼。
「何してやがる。早く入ってそこを閉めろ」
「は、はいっ!」
ジロッと睨まれ体に緊張が走ると急いで返事をして中に入り扉を閉めた。夕方どきで尚且つ雲がかかっているので部屋の中は薄暗いがそこには少し大きめのベッドと小さな丸いテーブルと椅子が二脚置かれていた。
「あの、ここは…?」
「宿屋だ」
「えっ!なんでこんなところに?!」
宿屋と言えばもちろんただ泊まるだけの人もいるが別の理由で利用する人も多い。それは逢引で使われると友人から聞いていたので何故彼がこんなところへ連れて来たのか焦ってしまった。
「安心しろ。ガキなんざ興味ねぇ」
彼は気が付かなかったが奥にあるソファーにドカッと座りながらこちらを見ている。
「そ、そうですか…」
「それより脱げ」
「へっ?!」
—— さっき興味がないとか言ってたのに?!
もう頭の中がパニックになり紙袋をぎゅっと抱きかかえて立ち竦むことしか出来なかった。
「勘違いするな。服を脱いでシャワーを浴びてこいと言ってるんだ」
—— あっ、なるほど…
それを聞いてホッとすると体の緊張が少しだけとれたのでテーブルに紙袋を置いた。その時右手に走った痛みで顔を歪める。
「っ…いたっ…」
右手を見ると手のひらに小さな傷が出来ており血が少しだけ滲んでいた。どうやら先程拾ったガラスの破片で出来たものだと推測できた。
—— ど、どうしよう!これじゃあグリップが握れない!
右手を見て泣きそうになるといつのまにか目の前に彼が立っていた。
「怪我したのか」
「はい…これじゃ思うようにグリップが握れません…」
落ち込んでいると怪我をした右手を掴まれじっと見られる。すると彼は何を思ったのかペロリと傷を舐めるではないか。
「へ、兵長!汚いですよ!」
「あ?何言ってやがる。応急処置だ」
自分よりも少し背の高い彼を目上げると鋭い視線で見下ろされる。彼は視線を交わらせたまま右手首を持ち上げまたペロッと何度も舐める。
—— …っっ……!
彼の生暖かい舌の感触が手のひらからゾワッと全身を駆け巡る。見つめ合っているが耐え切れなくなり目をぎゅっと閉じその刺激に耐えた。すると手のひらを舐めていた舌がツッと指に這ってカプッと口に含まれる。
「やっ…へい、ちょう……」
思わず吐息が漏れ彼を見上げる。
「も、大丈夫ですから…ありがとうございます…」
きっと顔が真っ赤なんだろうなと考えていると手が離され解放された。ホッと胸を撫で下ろしていると彼に睨まれた。
「早くシャワーを浴びてこい」
「は、はい!」
慌ててシャワールームへ行き服を脱ぐとシャワーを浴びて体を洗った。急いで出て着替えようとしたが服が見当たらない。あるのは下着とバスローブのようなものだけだ。とりあえずは体を拭いてそれを着るとシャワールームを出た。
「あの…シャワー浴びたのですが服が…わぁ!」
俯きながら話しかけていたが彼に視線を向けると同じようにバスローブを身につけていたため驚いてしまった。
「チッ。いちいちうるせぇな」
「す、すみません…」
—— あぁ…今日は人生最悪の日だ…
奮発して買った物は落として壊すし、人類最強の兵士と出会ったと思えば睨んで怒られてばっかりだし最悪だ、と泣きそうになった。
「おい」
「はい!何でしょう!?」
「服は今乾かしてもらっている。出来上がるまではここでゆっくりしていけ」
「は、はぁ……」
ゆっくりしていけと言われてもこんな密室に二人きりは耐えられない。気を紛らわすためにテーブルに近づくと紙袋から今日買った物を出して確認することに。
一通り傷がないか確認するがあの小物入れ以外は全部なんともなかったので安心する。
—— よかった…他のものは大丈夫だ
ニコニコしながらまた紙袋に大事にしまっているとまた視線を感じてそちらを見る。彼がいつのまにかベッドに腰掛けおり距離が近くなっていた。
「そういうのがいいのか?」
彼は不思議そうにしている。
「はい…私はこういう小物が好きです。まぁ女性だったら好きな人が多いと思いますよ?」
そんなたわいもないことを話しているとまたくしゃみをしてしまう。
「こっちへこい」
彼に手を掴まれるとベッドへ促された。
彼は先にベッドへ潜り込むと戸惑っている自分の手をまた掴みグッと引きずり込まれ彼の腕の中におさまる。
何が起きているのか訳が分からず混乱してパニックに陥った。人類最強の兵士と言われる男に抱きしめられているのだ。しかもベッド上で。それに下着は身につけているとはいえお互いバスローブで意識しない訳がない。
—— あわわ……なんでこうなってるの?!
彼の腕の中で体を強張らせているとぎゅっと抱きしめる力が強くなった。そのせいで身体がより密着して彼の温もりが伝わってくる。
「この方があったけぇだろ」
不意に聞こえた彼の言葉を考えた。
—— この方があったかい?
ベッドで抱きしめ合ってるから?
別にそんなに寒くないけど……あっ。
そこで自分がくしゃみをしたことを思い出しこれまでのことを振り返った。くしゃみをしたのでこの部屋にきてシャワーも浴びろと言われ、今もこうして抱きしめてくれている。それは自分が風邪を引かないようにしてくれている彼の優しさなのではないかと考えるようになった。
—— これが兵長の優しさ……
リヴァイ班のメンバーが兵長は優しいところかあると言っているのを聞いたことがあったが今の今まで半信半疑でいた。そもそも自分は隊が違うので接点がない。
今こうして彼の言葉の裏にある優しさに感動しながら彼の温もりを感じていた。そして気持ちが落ち着くと彼の胸に擦り寄った。
「兵長…あったかいです…ありがとうございます」
彼の胸に顔を埋めてふわりと笑った。
—— 兵長はあったかいな…
粗暴で口が悪いから冷たい人と思ってたけど…
実は心があったかい人なのかもしれない
彼と自分の体温でベッドの中が温もってくるとだんだん眠気が押し寄せてきて気が付けば眠ってしまっていた。
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