想いは手作り菓子にーErwinー
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2.
翌日。2月14日。
今日は午後から本部内の勤務にあたるため昼前に移動した。到着すると自分の隊の上司にエルヴィン分隊長へ渡す書類がないか聞く。運良くなのか書類があるとのことで自分が届けると名乗り出た。
書類を届ける口実に意を決して彼の執務室へ向かう。
————コンコンコン...
「エルヴィン分隊長、いらっしゃいますか?」
ノックするも返事がない。
「...分隊長?」
不在なのか、ドアノブに手をかけ捻れば鍵が開いている。そのまま扉が開き中の様子を伺った。
「失礼します...」
中に入り扉を閉め、中を確認する。
壁際に置いてあるソファーに視線を向ければ仰向けで横になっている彼の姿を見つけた。片膝を背もたれに立てかけもう片方の足はソファーからはみ出ている。確か彼は自分よりも頭二つ分ほど背が高い。
当然、背が高ければ足がはみ出る。その様子にクスリと笑みを溢し、静かに歩み寄った。
「...エルヴィンさん?」
声をかけるが変わらず胸が規則的に上下に動き、すぅすぅと眠っている。いつも何かを見据えるように鋭い視線を向けている水色の瞳は瞼によって遮られ見えない。
————分隊長が寝てる......
背もたれとは反対側、つまりはこちら側に顔が向いている。思わず側まで寄り、膝をついて顔を覗き込んだ。
まじまじと彼の顔を見つめる。やはり端正な顔立ちだ。窓からの陽の光で輝く金色の髪。執務室には静かな寝息と自分の高鳴る鼓動が聞こえる。
ほんの少しの出来心からその髪に手を伸ばしてそっと触れた。思ったよりも柔らかな髪に驚きながらも思わず、何度も撫でる。
「ん...」
夢中になって彼の髪を触り指に絡めるように掬った瞬間、彼から声が漏れ顔が反対側を向く。
彼の反応に起こしてしまったのかと冷や汗が出て、慌てて手を引っ込め立ち上がり彼と距離を取った。
鼓動が早鐘のように速く大きく脈を打ちつけ、彼に聞こえてしまうのではないかと思ってしまう程。我に返れば自分のした行動が恥ずかしくなり、更に彼から距離を取って小さく息を吐く。
何をしているのだろうかと。
まさか彼が執務室で寝ているこの状況を誰が考えただろうか。いつもの彼は聡明でよく団長に意見していると聞いた。その凛々しい顔つきは油断も隙もない。
それが今はどうだ。
無防備にソファーで寝ているではないか。きっとお疲れなんだろう、そのまま寝かせる事にして自分は執務机に向かう。
そういえば、彼が思案している長距離索敵陣形の話を小耳に挟んだことがあった。
「今度...陣形のことを聞いてみようかな...」
ポツリと呟き、机に書類とメモを残す。そしてその隣に包装した手作りのお菓子を置こうとしたが、机の向こう側に何かが見え回り込んだ。そこには引き出しに入りきらないほどの包装されたお菓子の山があり「あっ」と声が出してしまう。
————みんな考えることは同じ、か...
手に持っているお菓子をその中にそっと紛れ込ませそのまましばらく見つめる。これだけのお菓子の山だ。きっと誰からのものとは分からないだろう。
それでもいい。命続く限り、遠くからでも想うことができたらそれで...
お菓子の山をしばらく見つめた後、扉へ向かう。ドアノブへ手をかけたがまたくるりと振り返り、最後にもう一度彼の寝顔を心に刻んでおこうとそっと近寄った。
遠くから見つめるだけでいい...
だけど今だけ。今だけはどうか...
「エルヴィン分隊長...あなたの事が、好き...です」
速まる鼓動を抑えながら、いつの間にかまたこちら側に顔を向けている彼の頬にそっと唇を寄せる。
「私は、遠くからあなたを想っています。それだけで......」
唇を離した後小さく呟き、部屋を出た。
廊下を歩きながら自分がしたことを思い返し立ち止まってその場に座り込む。熱を帯び、真っ赤になっているであろう顔を両手で覆い、速まる鼓動を抑えるため深呼吸を数回、繰り返した。
翌日。2月14日。
今日は午後から本部内の勤務にあたるため昼前に移動した。到着すると自分の隊の上司にエルヴィン分隊長へ渡す書類がないか聞く。運良くなのか書類があるとのことで自分が届けると名乗り出た。
書類を届ける口実に意を決して彼の執務室へ向かう。
————コンコンコン...
「エルヴィン分隊長、いらっしゃいますか?」
ノックするも返事がない。
「...分隊長?」
不在なのか、ドアノブに手をかけ捻れば鍵が開いている。そのまま扉が開き中の様子を伺った。
「失礼します...」
中に入り扉を閉め、中を確認する。
壁際に置いてあるソファーに視線を向ければ仰向けで横になっている彼の姿を見つけた。片膝を背もたれに立てかけもう片方の足はソファーからはみ出ている。確か彼は自分よりも頭二つ分ほど背が高い。
当然、背が高ければ足がはみ出る。その様子にクスリと笑みを溢し、静かに歩み寄った。
「...エルヴィンさん?」
声をかけるが変わらず胸が規則的に上下に動き、すぅすぅと眠っている。いつも何かを見据えるように鋭い視線を向けている水色の瞳は瞼によって遮られ見えない。
————分隊長が寝てる......
背もたれとは反対側、つまりはこちら側に顔が向いている。思わず側まで寄り、膝をついて顔を覗き込んだ。
まじまじと彼の顔を見つめる。やはり端正な顔立ちだ。窓からの陽の光で輝く金色の髪。執務室には静かな寝息と自分の高鳴る鼓動が聞こえる。
ほんの少しの出来心からその髪に手を伸ばしてそっと触れた。思ったよりも柔らかな髪に驚きながらも思わず、何度も撫でる。
「ん...」
夢中になって彼の髪を触り指に絡めるように掬った瞬間、彼から声が漏れ顔が反対側を向く。
彼の反応に起こしてしまったのかと冷や汗が出て、慌てて手を引っ込め立ち上がり彼と距離を取った。
鼓動が早鐘のように速く大きく脈を打ちつけ、彼に聞こえてしまうのではないかと思ってしまう程。我に返れば自分のした行動が恥ずかしくなり、更に彼から距離を取って小さく息を吐く。
何をしているのだろうかと。
まさか彼が執務室で寝ているこの状況を誰が考えただろうか。いつもの彼は聡明でよく団長に意見していると聞いた。その凛々しい顔つきは油断も隙もない。
それが今はどうだ。
無防備にソファーで寝ているではないか。きっとお疲れなんだろう、そのまま寝かせる事にして自分は執務机に向かう。
そういえば、彼が思案している長距離索敵陣形の話を小耳に挟んだことがあった。
「今度...陣形のことを聞いてみようかな...」
ポツリと呟き、机に書類とメモを残す。そしてその隣に包装した手作りのお菓子を置こうとしたが、机の向こう側に何かが見え回り込んだ。そこには引き出しに入りきらないほどの包装されたお菓子の山があり「あっ」と声が出してしまう。
————みんな考えることは同じ、か...
手に持っているお菓子をその中にそっと紛れ込ませそのまましばらく見つめる。これだけのお菓子の山だ。きっと誰からのものとは分からないだろう。
それでもいい。命続く限り、遠くからでも想うことができたらそれで...
お菓子の山をしばらく見つめた後、扉へ向かう。ドアノブへ手をかけたがまたくるりと振り返り、最後にもう一度彼の寝顔を心に刻んでおこうとそっと近寄った。
遠くから見つめるだけでいい...
だけど今だけ。今だけはどうか...
「エルヴィン分隊長...あなたの事が、好き...です」
速まる鼓動を抑えながら、いつの間にかまたこちら側に顔を向けている彼の頬にそっと唇を寄せる。
「私は、遠くからあなたを想っています。それだけで......」
唇を離した後小さく呟き、部屋を出た。
廊下を歩きながら自分がしたことを思い返し立ち止まってその場に座り込む。熱を帯び、真っ赤になっているであろう顔を両手で覆い、速まる鼓動を抑えるため深呼吸を数回、繰り返した。