想いは手作り菓子にーErwinー
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
1.
844年 ウォール・ローゼ内 調査兵団本部
———コツコツコツ......
廊下に響く一つの足音。
ボブヘアの髪を揺らしながら緊張した面持ちで歩く一人の女性兵士。チラッと胸元に視線を落とし小さく息を吐いた。
———彼は受け取ってくれるだろうか......
胸に抱えた書類の間には、奮発して買った淡いピンク色の包み紙で包装したお菓子が一つ。
※※※
『チョコ菓子で特別な人に想いを?』
『そっ。内地の貴族達の間で密かに流行ってたんですって。それが今、壁内中に広まってるみたい』
息を吐けばまだ白い1月末。
演習の休憩時間にたった数人にまで減った同期の一人との会話でそんな話を聞いた。
『私リヴァイ兵長に渡そうと思ってるの』
『リヴァイ兵長に?』
彼女が彼に憧れていたことは知っていたが特別な日に渡すということはそういう感情があるのかと驚く。だが、思い返せば数ヶ月前から彼に対する彼女の視線は違っていたような気がする。
恐らく何かがあったのだろう。その何かは分からないが何も話さないということは言いたくないことなのかもしれない。
『兵長とのことはまた今度話すわ』
ふわりと笑う同期の彼女は綺麗で可愛くて恋をしている顔だった。
なんだがこちらまで照れてしまう。
『うん。また聞かせてね』
ふふっと笑い彼女を見る。
そして彼女から詳しい話を聞いた。
そのチョコ菓子を渡すのは2月14日で女性から男性に手作りでも買ったものでもいいから手渡す時に想いを伝える、というものだった。ただここはウォール・マリア内にある調査兵団の支部。本部もウォール・ローゼ内の奥まった場所にあり買い物にもなかなか行けない。それに兵団とは言え給料は安い。そのためチョコなど高級品は手に入りにくかった。そのような菓子も高価で手が届かないので何かお菓子を手作りして渡す、と彼女は話していた。
同期の彼女から話を聞いて密かに想いを寄せている調査兵団、エルヴィン分隊長に渡すことを心に決めた。彼とは隊が違うため話す機会など滅多にないがその立ち振る舞いや強い意志を感じるその瞳に目が離せなかった。
廊下ですれ違う時に敬礼して通り過ぎた彼の背中を数秒見つめるだけ。だから彼はきっと自分の事は知らないはず。だけどそれでよいのだ。自分は調査兵。生きているだけでも奇跡。
今回の事も同期に触発されて渡すだけ。
想いは伝えずともいい...と。
※※※
そして2月13日。
この日は奇跡的に休暇を貰えたので実家に帰省しお菓子を作ることに。チョコの代わりに紅茶の茶葉を仕込ませた焼き菓子を作ってみた。
思った以上の出来映えに満足して顔を綻ばせながら包装紙に包んでリボンを結ぶ。味見したけどなかなか美味しかった。
母から、誰かにあげるのか聞かれ「ちょっとね」と笑えば勘付いたのか「上手くいくといいわね」とクスリと笑っていた。
————女の勘...ってやつね。
母にはなんでも分かってしまう。母の偉大さを感じながら明日の事を考えるのだった。
844年 ウォール・ローゼ内 調査兵団本部
———コツコツコツ......
廊下に響く一つの足音。
ボブヘアの髪を揺らしながら緊張した面持ちで歩く一人の女性兵士。チラッと胸元に視線を落とし小さく息を吐いた。
———彼は受け取ってくれるだろうか......
胸に抱えた書類の間には、奮発して買った淡いピンク色の包み紙で包装したお菓子が一つ。
※※※
『チョコ菓子で特別な人に想いを?』
『そっ。内地の貴族達の間で密かに流行ってたんですって。それが今、壁内中に広まってるみたい』
息を吐けばまだ白い1月末。
演習の休憩時間にたった数人にまで減った同期の一人との会話でそんな話を聞いた。
『私リヴァイ兵長に渡そうと思ってるの』
『リヴァイ兵長に?』
彼女が彼に憧れていたことは知っていたが特別な日に渡すということはそういう感情があるのかと驚く。だが、思い返せば数ヶ月前から彼に対する彼女の視線は違っていたような気がする。
恐らく何かがあったのだろう。その何かは分からないが何も話さないということは言いたくないことなのかもしれない。
『兵長とのことはまた今度話すわ』
ふわりと笑う同期の彼女は綺麗で可愛くて恋をしている顔だった。
なんだがこちらまで照れてしまう。
『うん。また聞かせてね』
ふふっと笑い彼女を見る。
そして彼女から詳しい話を聞いた。
そのチョコ菓子を渡すのは2月14日で女性から男性に手作りでも買ったものでもいいから手渡す時に想いを伝える、というものだった。ただここはウォール・マリア内にある調査兵団の支部。本部もウォール・ローゼ内の奥まった場所にあり買い物にもなかなか行けない。それに兵団とは言え給料は安い。そのためチョコなど高級品は手に入りにくかった。そのような菓子も高価で手が届かないので何かお菓子を手作りして渡す、と彼女は話していた。
同期の彼女から話を聞いて密かに想いを寄せている調査兵団、エルヴィン分隊長に渡すことを心に決めた。彼とは隊が違うため話す機会など滅多にないがその立ち振る舞いや強い意志を感じるその瞳に目が離せなかった。
廊下ですれ違う時に敬礼して通り過ぎた彼の背中を数秒見つめるだけ。だから彼はきっと自分の事は知らないはず。だけどそれでよいのだ。自分は調査兵。生きているだけでも奇跡。
今回の事も同期に触発されて渡すだけ。
想いは伝えずともいい...と。
※※※
そして2月13日。
この日は奇跡的に休暇を貰えたので実家に帰省しお菓子を作ることに。チョコの代わりに紅茶の茶葉を仕込ませた焼き菓子を作ってみた。
思った以上の出来映えに満足して顔を綻ばせながら包装紙に包んでリボンを結ぶ。味見したけどなかなか美味しかった。
母から、誰かにあげるのか聞かれ「ちょっとね」と笑えば勘付いたのか「上手くいくといいわね」とクスリと笑っていた。
————女の勘...ってやつね。
母にはなんでも分かってしまう。母の偉大さを感じながら明日の事を考えるのだった。
1/4ページ