指輪の代わりに
name change
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3.
彼女の背中を見届け意気揚々と走り出すハンジに後を追うモブリット。ポケットにあるものは二人が自分達の為に入手していたとは露知らず、自分はトロスト区の本部へ到着する。団長執務室の前に立ち深呼吸をした。
コンコンコン、
「ハンジ分隊長からの報告書をお持ちしました」
「入ってくれ」
失礼します、中に入ると左手で別の報告書を手にしている団長が椅子に座っていた。ハンジさんの報告書を手渡すが不思議そうにこちらを見る団長。
「…何を隠している?」
「!な、なんでもないですよ!」
「…私には言えないことなのか…?」
「そういう訳では…」
立ち上がり目の前に来る団長に一歩だけ後退りをする。背中には袋に包んだクッキーを持っている。いつもならすんなりと渡せるのに、何故か今は渡しづらい…。団長の事を想いながら作った、だから彼を前にして酷く緊張している自分がいる。
「いつもと様子が違うな。それに…この匂いは…」
そう言って顔を近づけミケさんみたいに鼻を効かせる団長。
「甘い香りがするようだが…」
「えっと…旧本部でみんなにお菓子を作ったので…」
「そうか。皆喜んだだろう」
「はい。エレンも美味しいと言ってくれました」
「…私も君の作ったものを食したいものだった」
声のトーンを落として話す団長の姿が寂しげに見え、モブリットさんとの会話を思い出し勘違いをしそうになる。首を振って考えを振り払い、団長にそっと両手に乗せたお菓子を差し出す。
「団長の分です…良かったら食べて下さいませんか?」
「いいのか?」
左手で受け取りテーブルに乗せると、リボンを解く団長。中にあるお菓子を口に入れサクサクと咀嚼音が耳に届いた。その様子を食い入るように見つめれば団長は「美味いな」、微笑みと言葉をかけてくれる。
それだけで十分だった。想いは伝えずとも団長が笑ってくれるならそれでいい、そう笑みを返す。
「…君の作ったものを毎日食べたい」
「ふふっ、ハンジさんも似たような事を言っていました」
「ハンジが?だが私のものとは意味合いが異なるだろう」
「っ!…やだな、団長…お疲れなんじゃないですか…?」
意味合いが違う、真剣な眼差しでこちらを見る団長に心臓が跳ねた。そんな瞳で見つめられると本当に自惚れてしまいそうになる。だけど聞いてしまうのが怖くてはぐらかすようなのとことを口にした。期待と不安が全身を支配し呼吸が苦しい。
「疲れてはいるが…思考は通常運転だ。…君とは長い付き合いだな。リヴァイやハンジ達と同じ様に信頼している。だがそれとは別に君は…私の心の拠り所でもある…」
静かに話す団長の言葉に鼓動が早鐘みたいに速く、熱くなり彼の碧い瞳から目が離せない。
「左手を出してくれ」
団長に言われた通り左手を差し出す。薬指にお菓子を包んだリボンを巻き付け、口と左手で器用に結ぶではないか。彼の瞳と同じ色をしたリボンを左手の薬指に、それが何を意味するのか…胸が痛いほど締め付けられる。
「不格好ですまない、これを…受け取ってくれないか?」
「!!…団長…」
「誓いは立てない。だが、君が受け取ってくれるなら私は君の傍にいよう。心臓を捧げることになろうとも…俺は君の此処にいる…」
此処、のところで左胸に手を伸ばした団長。想いを伝えずとも、誓いを立てずとも、団長の言葉が嬉しい。目に涙を浮かべながら微笑み、
「…勿論です団長…断る理由なんてありません…私も同じですから…」
右手で団長の左胸に触れる。心臓の脈打つ音が手に伝わり生を感じ取った。やっぱり団長は先の奪還作戦で最期を迎える覚悟を、そんな気がした。なのに団長は……
「…ずるいです」
「そうだな。誓いを立てないと口では言うが君を縛ろうとしている…勝手な男だと笑ってくれ」
「笑いません。笑わないですよ…嬉しいんですから…」
そうか、団長は一つ笑みをこぼし顔を寄せる。目を閉じれば触れる唇。僅かに離れて照れ恥ずかしさに頬を染めるのにもう一度だけキスを…長く熱く交わした。
彼女の背中を見届け意気揚々と走り出すハンジに後を追うモブリット。ポケットにあるものは二人が自分達の為に入手していたとは露知らず、自分はトロスト区の本部へ到着する。団長執務室の前に立ち深呼吸をした。
コンコンコン、
「ハンジ分隊長からの報告書をお持ちしました」
「入ってくれ」
失礼します、中に入ると左手で別の報告書を手にしている団長が椅子に座っていた。ハンジさんの報告書を手渡すが不思議そうにこちらを見る団長。
「…何を隠している?」
「!な、なんでもないですよ!」
「…私には言えないことなのか…?」
「そういう訳では…」
立ち上がり目の前に来る団長に一歩だけ後退りをする。背中には袋に包んだクッキーを持っている。いつもならすんなりと渡せるのに、何故か今は渡しづらい…。団長の事を想いながら作った、だから彼を前にして酷く緊張している自分がいる。
「いつもと様子が違うな。それに…この匂いは…」
そう言って顔を近づけミケさんみたいに鼻を効かせる団長。
「甘い香りがするようだが…」
「えっと…旧本部でみんなにお菓子を作ったので…」
「そうか。皆喜んだだろう」
「はい。エレンも美味しいと言ってくれました」
「…私も君の作ったものを食したいものだった」
声のトーンを落として話す団長の姿が寂しげに見え、モブリットさんとの会話を思い出し勘違いをしそうになる。首を振って考えを振り払い、団長にそっと両手に乗せたお菓子を差し出す。
「団長の分です…良かったら食べて下さいませんか?」
「いいのか?」
左手で受け取りテーブルに乗せると、リボンを解く団長。中にあるお菓子を口に入れサクサクと咀嚼音が耳に届いた。その様子を食い入るように見つめれば団長は「美味いな」、微笑みと言葉をかけてくれる。
それだけで十分だった。想いは伝えずとも団長が笑ってくれるならそれでいい、そう笑みを返す。
「…君の作ったものを毎日食べたい」
「ふふっ、ハンジさんも似たような事を言っていました」
「ハンジが?だが私のものとは意味合いが異なるだろう」
「っ!…やだな、団長…お疲れなんじゃないですか…?」
意味合いが違う、真剣な眼差しでこちらを見る団長に心臓が跳ねた。そんな瞳で見つめられると本当に自惚れてしまいそうになる。だけど聞いてしまうのが怖くてはぐらかすようなのとことを口にした。期待と不安が全身を支配し呼吸が苦しい。
「疲れてはいるが…思考は通常運転だ。…君とは長い付き合いだな。リヴァイやハンジ達と同じ様に信頼している。だがそれとは別に君は…私の心の拠り所でもある…」
静かに話す団長の言葉に鼓動が早鐘みたいに速く、熱くなり彼の碧い瞳から目が離せない。
「左手を出してくれ」
団長に言われた通り左手を差し出す。薬指にお菓子を包んだリボンを巻き付け、口と左手で器用に結ぶではないか。彼の瞳と同じ色をしたリボンを左手の薬指に、それが何を意味するのか…胸が痛いほど締め付けられる。
「不格好ですまない、これを…受け取ってくれないか?」
「!!…団長…」
「誓いは立てない。だが、君が受け取ってくれるなら私は君の傍にいよう。心臓を捧げることになろうとも…俺は君の此処にいる…」
此処、のところで左胸に手を伸ばした団長。想いを伝えずとも、誓いを立てずとも、団長の言葉が嬉しい。目に涙を浮かべながら微笑み、
「…勿論です団長…断る理由なんてありません…私も同じですから…」
右手で団長の左胸に触れる。心臓の脈打つ音が手に伝わり生を感じ取った。やっぱり団長は先の奪還作戦で最期を迎える覚悟を、そんな気がした。なのに団長は……
「…ずるいです」
「そうだな。誓いを立てないと口では言うが君を縛ろうとしている…勝手な男だと笑ってくれ」
「笑いません。笑わないですよ…嬉しいんですから…」
そうか、団長は一つ笑みをこぼし顔を寄せる。目を閉じれば触れる唇。僅かに離れて照れ恥ずかしさに頬を染めるのにもう一度だけキスを…長く熱く交わした。