Birthday story 2019*
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1.
調査兵団に入団して3年。
また憧れの人の誕生日がやってくる。
仲間の命の灯火が消えていく中、生き残っている自分に希望を与えてくれる"彼"の誕生日が。
***
10月11日 団長執務室
「自分の班の被害は書類に記載した通りです。今回も少なく済みました……」
「そのようだな。君は若くして班長になったがよくやっている」
「恐れ多いです」
自分は今、先日の壁外調査の状況をまとめた書類を提出する為、団長執務室を訪れている。班長を任されてから極力被害が出ないようこれまで努めてきた。
「だが危険を顧みず仲間を助けに行こうとするのは頷けないな」
「……っ!それは…はい…気を付けます」
「助けに向かう事で君も命を落とす事だってある。これまでは運がよかっただけだ。前にもそう話したんだが」
「!!……申し訳、ありません…」
そう。自分は仲間が巨人の脅威に晒された時、自分だけ立ち向かいに行く。それは入団してからずっとだ。先輩達にいつも怒られ気を付けていたけれど…班長になり部下を持ち彼等には死んで欲しくないのだ。危険だ、頭では思っていても体が先に動いてしまう。
「君は優しすぎる。もっと冷静に物事を判断出来るようにならないといけないな」
「…はい」
「だが…」
団長が椅子から立ち上がり歩みを進め自分の目の前に立つ。不思議に見上げればそっと頬に触れる大きな手。突然の事に驚きを隠せない。何故団長が自分に触れるのか。
「君が無事で良かった。心からそう思っている自分もいる…矛盾しているな」
「…そんな事……っ!」
ないです、そう言葉を続けようとしたが添えられた手が頬を撫で、耳を掠めて髪に触れる。鼓動が音を立て脈を打ち、立ち竦む。ポニーテールに纏めた髪だがその髪留めを外す団長。まとめ髪の解放感にさえ心拍数が上がる。
「…だん、ちょう…?」
情けないほど声が掠れてしまったが目の前の人物に声をかけた。団長はチラリと視線を向け、そのまま自分を離さない。何をするのかと思えば解けた髪を掬ってそこにキスを落とすではないか。
何が起きてるのか訳が分からず硬直して顔に熱が集まる。
「いい香りだな」
「…ただの、石鹸の香り、です」
「だがもう夕時だ。君の香りなのだろう」
「……っ、」
そう言って今度は耳の近くに顔を寄せてすんすんと匂いを嗅ぎ始める。その行動にミケさんみたいだ、と言いたくても言えなかった。午前中訓練でかいた汗を流したとはいえ午後も執務や任務で汗を流している。
「団長、汗かいてます…汚いですよ?」
「…汚くなどない。君はこんな香りがするのだな」
またすんすんと首筋の匂いを嗅ぐ。こんな至近距離に団長がいて、しかも憧れの男性だ。意識しないわけがない。困惑して思わず団長の胸を軽く押す。
「待っ、て……ふッ、団長…」
それでも団長は止めてくれない。次第に首筋や耳にも彼の唇が触れ時折リップ音が鼓膜を揺らす。
「んッ……ふっ、」
くぐもった声が自分の口から出始め初めての感覚に戸惑う。脚の力が抜けそうになって思わず胸に置いていた手で団長のジャケットを握り締めた。団長は右手で腰を抱き、左手で髪を手繰り寄せ更に外気に触れる肌に彼の唇が降り注ぐ。
ちゅッちゅ…
「ふッ、ゃっ…だん、ちょ……待っ、」
やけに大きく聞こえるリップ音、彼の唇の感触、彼の香り…その全てに目眩がして思考が停止する。
「んっ…だんちょ…なん、で……?」
いつ誰が来てもおかしくないこの状況に次第に焦りを感じ、回らない頭で疑問をぶつける。
「何故か…それは、」
コンコンコン、
「団長。モブリットです」
「?!」
突然の訪問者に体が小さく跳ねた。団長もやっと離れてくれたが自分は腰が抜けて床に座り込んでしまう。
「モブリット、少し待ってくれ」
「はい」
団長から横抱きにされ椅子に座らせてくれる。そして耳元で「すまない」と囁いて自分の手に髪留めを乗せるとそのまま部屋を出て行ってしまった。
「~~~っ!!」
彼が退室してすぐ囁かれた方の耳を手で押さえ悶絶する。一体何が起きているのか。彼が触れた所は今も熱を持ち火照った体が冷めるのに時間を要した。
ガチャっと扉の音がして団長が戻り、自分は丁度落ち着きを取り戻し髪をまた纏めたところだ。
「まだ居てくれたんだな」
「…っ、もう戻ります…」
「連れないな」
「!!」
せっかく落ち着いた熱が再び上がり出して、何も言い返せずパクパクと口を動かす。
「冗談だ」
「冗談に聞こえません!」
これが団長ジョークなのか。本当に冗談には聞こえない。団長は一瞬だけ小さく微笑むと「また任務の報告を待ってる」それだけ言っていつも通り執務に取り掛かりだした。全くこっちの気も知らずに、と言いそうになったが飲み込んでそのまま団長室を後にした。
団長の誕生日まであと3日。
普通にプレゼントを手渡すつもりが思いがけないハプニングに動揺が隠せない。この先が思いやられる。
調査兵団に入団して3年。
また憧れの人の誕生日がやってくる。
仲間の命の灯火が消えていく中、生き残っている自分に希望を与えてくれる"彼"の誕生日が。
***
10月11日 団長執務室
「自分の班の被害は書類に記載した通りです。今回も少なく済みました……」
「そのようだな。君は若くして班長になったがよくやっている」
「恐れ多いです」
自分は今、先日の壁外調査の状況をまとめた書類を提出する為、団長執務室を訪れている。班長を任されてから極力被害が出ないようこれまで努めてきた。
「だが危険を顧みず仲間を助けに行こうとするのは頷けないな」
「……っ!それは…はい…気を付けます」
「助けに向かう事で君も命を落とす事だってある。これまでは運がよかっただけだ。前にもそう話したんだが」
「!!……申し訳、ありません…」
そう。自分は仲間が巨人の脅威に晒された時、自分だけ立ち向かいに行く。それは入団してからずっとだ。先輩達にいつも怒られ気を付けていたけれど…班長になり部下を持ち彼等には死んで欲しくないのだ。危険だ、頭では思っていても体が先に動いてしまう。
「君は優しすぎる。もっと冷静に物事を判断出来るようにならないといけないな」
「…はい」
「だが…」
団長が椅子から立ち上がり歩みを進め自分の目の前に立つ。不思議に見上げればそっと頬に触れる大きな手。突然の事に驚きを隠せない。何故団長が自分に触れるのか。
「君が無事で良かった。心からそう思っている自分もいる…矛盾しているな」
「…そんな事……っ!」
ないです、そう言葉を続けようとしたが添えられた手が頬を撫で、耳を掠めて髪に触れる。鼓動が音を立て脈を打ち、立ち竦む。ポニーテールに纏めた髪だがその髪留めを外す団長。まとめ髪の解放感にさえ心拍数が上がる。
「…だん、ちょう…?」
情けないほど声が掠れてしまったが目の前の人物に声をかけた。団長はチラリと視線を向け、そのまま自分を離さない。何をするのかと思えば解けた髪を掬ってそこにキスを落とすではないか。
何が起きてるのか訳が分からず硬直して顔に熱が集まる。
「いい香りだな」
「…ただの、石鹸の香り、です」
「だがもう夕時だ。君の香りなのだろう」
「……っ、」
そう言って今度は耳の近くに顔を寄せてすんすんと匂いを嗅ぎ始める。その行動にミケさんみたいだ、と言いたくても言えなかった。午前中訓練でかいた汗を流したとはいえ午後も執務や任務で汗を流している。
「団長、汗かいてます…汚いですよ?」
「…汚くなどない。君はこんな香りがするのだな」
またすんすんと首筋の匂いを嗅ぐ。こんな至近距離に団長がいて、しかも憧れの男性だ。意識しないわけがない。困惑して思わず団長の胸を軽く押す。
「待っ、て……ふッ、団長…」
それでも団長は止めてくれない。次第に首筋や耳にも彼の唇が触れ時折リップ音が鼓膜を揺らす。
「んッ……ふっ、」
くぐもった声が自分の口から出始め初めての感覚に戸惑う。脚の力が抜けそうになって思わず胸に置いていた手で団長のジャケットを握り締めた。団長は右手で腰を抱き、左手で髪を手繰り寄せ更に外気に触れる肌に彼の唇が降り注ぐ。
ちゅッちゅ…
「ふッ、ゃっ…だん、ちょ……待っ、」
やけに大きく聞こえるリップ音、彼の唇の感触、彼の香り…その全てに目眩がして思考が停止する。
「んっ…だんちょ…なん、で……?」
いつ誰が来てもおかしくないこの状況に次第に焦りを感じ、回らない頭で疑問をぶつける。
「何故か…それは、」
コンコンコン、
「団長。モブリットです」
「?!」
突然の訪問者に体が小さく跳ねた。団長もやっと離れてくれたが自分は腰が抜けて床に座り込んでしまう。
「モブリット、少し待ってくれ」
「はい」
団長から横抱きにされ椅子に座らせてくれる。そして耳元で「すまない」と囁いて自分の手に髪留めを乗せるとそのまま部屋を出て行ってしまった。
「~~~っ!!」
彼が退室してすぐ囁かれた方の耳を手で押さえ悶絶する。一体何が起きているのか。彼が触れた所は今も熱を持ち火照った体が冷めるのに時間を要した。
ガチャっと扉の音がして団長が戻り、自分は丁度落ち着きを取り戻し髪をまた纏めたところだ。
「まだ居てくれたんだな」
「…っ、もう戻ります…」
「連れないな」
「!!」
せっかく落ち着いた熱が再び上がり出して、何も言い返せずパクパクと口を動かす。
「冗談だ」
「冗談に聞こえません!」
これが団長ジョークなのか。本当に冗談には聞こえない。団長は一瞬だけ小さく微笑むと「また任務の報告を待ってる」それだけ言っていつも通り執務に取り掛かりだした。全くこっちの気も知らずに、と言いそうになったが飲み込んでそのまま団長室を後にした。
団長の誕生日まであと3日。
普通にプレゼントを手渡すつもりが思いがけないハプニングに動揺が隠せない。この先が思いやられる。
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