愛馬の次に
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2.
コンコン
「ハルです」
「入ってくれ」
「失礼します。あ、リヴァイ兵長もいらしたんですね」
今リヴァイも団長執務室に来ており話をしていたところだった。
「なんだこのガキは。こんな奴いたか?」
そんなことを言っているが実際のところはよく兵士を観察しているから知っているはずだ。彼女はリヴァイに言われた言葉にショックを受けている様子だった。
「既に何度かお話しておりますが…」
「ガキには興味ねぇ」
その答えが相当こたえたようで項垂れて今にも泣きそうな彼女の姿を目視する。
「リヴァイ。あまり彼女をいじめないでやってくれ。私の愛馬の世話を時折任せているんだ」
「ほぅ。コイツの馬を…」
彼は彼女を見定めるように見つめているのをじっと見守る。
「なら俺の馬も頼む」
「へっ?」
リヴァイの申し出に気の抜けた返事をした彼女。それを聞いた彼は怪訝そうに眉をひそめた。
「なんだ。いつも楽しそうに馬の世話をしてるじゃないか」
「えっ、いつも?どういう…」
「やるのかやらないのか。どっちだ」
「や、やります!やらせて下さい!」
「ならいい」
彼女は彼に向かって凛々しい顔つきで敬礼している。
「しかし私なんかでいいのでしょうか…」
すぐにその表情は崩れ眉を下げて困惑しているようだ。
「無理にとは言わねぇ。俺の馬は多少癖がある…気が向いたらでいい」
彼は立ち上がると彼女の頭に手を乗せ部屋を出て行った。彼女は彼を見送り扉が閉まると頭に手を持っていく。そこは先程彼が手を置いた場所だ。そっと彼女に近づいて見てみると心なしか顔が赤いような気がする。
「彼に惚れたか?」
そう声をかければ彼女は全身で驚きこちらを見る。頬をほんのり赤くさせ口をパクパクと動かすのを見て思わず頬が緩む。
「すまない。驚かすつもりはなかったんだが」
「い、いえ…こちらこそすみません…」
彼女は何を考えているのかそこから動かず俯いている。
「どうした」
声をかけるとゆっくり顔を上げ真っ直ぐな瞳と視線がぶつかる。何かを決意したかのようなその表情にこの先言われるであろう言葉が推測出来てしまう。図らずも彼女の気持ちを聞いてしまい知っているのもあるが。
「あの…先程の質問ですが……」
彼女はゆっくりと話し出し耳を傾ける。
「兵長には惚れていません。確かに先程は嬉しかったですが……」
私が惚れているのは彼ではありません、とはにかむように笑う。
「そうか」
それだけ言うと彼女はまた何かを考えるかのように黙ってしまう。
「私が惚れている男性は…とても強い人です。真っ直ぐで迷いのない瞳を持っています。みんなからも信頼されその背中についていこうと決めました。彼の為なら喜んでこの心臓を捧げるつもりです…それが人類の勝利に繋がると信じてるから。私にはとても手の届かない人なのです」
気持ちを伝えて彼の邪魔をしたくありません、と寂しげに笑う彼女に近付いてそっと抱きしめた。
「だ、団長?!」
腕の中で慌てている彼女を離さぬように腕に力を込める。彼女は緊張しているようだが何も言わず大人しくなった。
「君に想われている男性が羨ましいな」
自分であると知っているが釜をかけるように彼女に話す。
「こんな優しい女性に想われてみたいものだ」
「だ、団長…」
離して下さい、と彼女は言うが触れてしまっては離すのがもったいない。
「その男とは誰なんだ?それを聞くまでは離せないな」
「そ、そんな…!」
彼女にとっては拷問に近いかもしれない。だが、彼女の口から直接聞きたかった。違う男の名前が出た時は、まぁその後に考えよう、そう思って小さな体をまた力を込めて抱きしめた。
「それで。誰なんだ?」
「あの…どうして言わないといけないのですか…?」
「私が知りたいからだ」
「どうして団長が…」
「そうだな…知って今の関係を変えようと考えたまでだ」
そう伝えると彼女の体が小さく震え出した。「ふっ…うっ……」とくぐもった声が聞こえどうやら泣いているようだ。
「泣かなくてもいいだろう」
「でも…私……何かやらかしたんですよね…」
「なぜそうなる」
「関係を変えると…それは終わらせると言うことですよね?」
すみませんでした…、彼女は自分の腕の中で涙を流した後見上げる。涙がまつげについて艶めき色っぽい。
「もう団長の迷惑にはなりたくありません…馬の世話は違う人にお願いしますね…」
困ったように笑う彼女の頬を両手で包み込むと目尻に溜まっている涙をペロリと舐めた。
「だ、だんちょ!何を?!」
彼女は顔を赤くさせて慌てふためいている。その様子が可愛らしくクスリと笑った。
「君の涙を舐めとっただけだが?」
やはり少ししょっぱいな、と言うとどんどん赤くなる彼女。
「それで。誰なんだ?」
「ぅっ、言わないといけないですか?」
「そうだな。でないとここから先に進めない」
「え?」
先に?えっ、どういう…えっ?、と彼女は混乱してキョトンとしている。コロコロと表情が忙しい彼女にまた小さく笑うと耳元で呟いた。
「あの時居眠りなどしてなかったからな」
初めから全部聞いていたよ、遂にカミングアウトする。
「えっ…えぇえ?!」
彼女は驚きのあまり腕から逃れ後ずさりすると足がもつれたのか尻餅をついている。
「いたた…」
「大丈夫か?」
「はい…大丈夫です、」
「君は私に言いたい事があるのだろう?」
それは、と顔を赤くさせて俯く彼女。その顔を見ようと顎に手を添えて持ち上げた。
「ありますが…言えません…」
「言ってみたらどうだ?」
「そんな…」
モゴモゴとする彼女に額をくっつける。
「私は聞きたい」
「どうしても、ですか?」
「あぁ。どうしてもだ」
分かりました、と彼女が深呼吸をしている。額をくっつけたまま口を開く、
「…私は…団長のことを尊敬しています…初めはそれだけでした。でも今は…」
「私が惚れている男性は…団長です、その、好き、なんです…」
視線の先では足の上で手を握りしめているのが見えた。その手に自分のを重ね包み込む。顔を離し彼女の瞳を覗き込めば緊張と不安で揺らいでいるように見えた。
「やっと聞けたな」
「迷惑では…」
「ない。むしろ嬉しいな」
「嬉し、い?」
「私も君と同じ気持ちだからだ」
「そうですよね…って、え?」
「私も君の事を好きだという事だ」
「えっ、えぇぇえ?!」
また口をパクパクとさせて驚いている彼女に微笑んで抱きしめた。
「い、いつからですか?」
「そうだな…馬の世話を一緒にし始めてからだが…いつからとは分からない」
気が付いたら好きだった、この歳にもなってと思うが素直に気持ちを伝えた。
「だけど…こんな子どもっぽい私なんか…」
「君だからいいんだ」
「他にも素敵な女性がいますよ?」
「そうだな。だが、私は君を選ぶ」
「本当に…?」
「本当だ。君に惚れている」
嘘はつかない、そう言って彼女の顔を覗き込めば目に涙が溜まっており今にも泣き出しそうだ。
「夢みたいです…」
「夢じゃないか確かめてみよう」
「どうやってですか?」
こうするんだ、と小さく笑うと彼女の唇に自分のを重ねた。顔を離して彼女の顔を覗き込むと目をまん丸にさせている。次の瞬間、顔が一気に赤くなり思わず「ふっ」と笑ってしまった。
「どうだ?」
「あの、まだ夢みたいで…」
「まだ足りないのか」
「あ!違くて!」
「落ち着きなさい」
「は、はい、」
彼女は深呼吸をして落ち着かせようとしているのを見つめていたがどうもまだ彼女に触れたくて仕方がない。
—— 果たしてどんな声で啼くのだろうか
そんなことを考えているのを彼女は知らないだろう。
—— 今日のところは我慢するとしよう
そうでなければ彼女の中で容量を超えてしまってもう受け入れてくれない可能性がある。それだけは避けたい。これからじっくりと彼女を自分に染めればいい、そんなことを考えた。
「団長…これからよろしくお願いします」
「こちらこそ」
色んな意味でよろしく頼むとしよう。
緩みそうになる口元を隠すように彼女の額にキスを一つ落とした。
優しい彼女に愛馬の次に懐いたのは自分。
これからも命続く限り愛馬とともに。
ーーー
「そろそろいいか?」
「何がですか?」
「君が欲しいんだが…」
「もうなってますよ?」
「そういうことではない」
「どういうことですか?」
「君と身体を重ねたい、そう言ってるんだ」
「え!あの、その!」
「嫌と言われても君を頂く」
我慢してきたが耐えられなくなった団長。彼女を抱いてしまうのは恋仲になってあまり日は経ってなかったとか。
愛馬の次に
fin.
2019.5.2
コンコン
「ハルです」
「入ってくれ」
「失礼します。あ、リヴァイ兵長もいらしたんですね」
今リヴァイも団長執務室に来ており話をしていたところだった。
「なんだこのガキは。こんな奴いたか?」
そんなことを言っているが実際のところはよく兵士を観察しているから知っているはずだ。彼女はリヴァイに言われた言葉にショックを受けている様子だった。
「既に何度かお話しておりますが…」
「ガキには興味ねぇ」
その答えが相当こたえたようで項垂れて今にも泣きそうな彼女の姿を目視する。
「リヴァイ。あまり彼女をいじめないでやってくれ。私の愛馬の世話を時折任せているんだ」
「ほぅ。コイツの馬を…」
彼は彼女を見定めるように見つめているのをじっと見守る。
「なら俺の馬も頼む」
「へっ?」
リヴァイの申し出に気の抜けた返事をした彼女。それを聞いた彼は怪訝そうに眉をひそめた。
「なんだ。いつも楽しそうに馬の世話をしてるじゃないか」
「えっ、いつも?どういう…」
「やるのかやらないのか。どっちだ」
「や、やります!やらせて下さい!」
「ならいい」
彼女は彼に向かって凛々しい顔つきで敬礼している。
「しかし私なんかでいいのでしょうか…」
すぐにその表情は崩れ眉を下げて困惑しているようだ。
「無理にとは言わねぇ。俺の馬は多少癖がある…気が向いたらでいい」
彼は立ち上がると彼女の頭に手を乗せ部屋を出て行った。彼女は彼を見送り扉が閉まると頭に手を持っていく。そこは先程彼が手を置いた場所だ。そっと彼女に近づいて見てみると心なしか顔が赤いような気がする。
「彼に惚れたか?」
そう声をかければ彼女は全身で驚きこちらを見る。頬をほんのり赤くさせ口をパクパクと動かすのを見て思わず頬が緩む。
「すまない。驚かすつもりはなかったんだが」
「い、いえ…こちらこそすみません…」
彼女は何を考えているのかそこから動かず俯いている。
「どうした」
声をかけるとゆっくり顔を上げ真っ直ぐな瞳と視線がぶつかる。何かを決意したかのようなその表情にこの先言われるであろう言葉が推測出来てしまう。図らずも彼女の気持ちを聞いてしまい知っているのもあるが。
「あの…先程の質問ですが……」
彼女はゆっくりと話し出し耳を傾ける。
「兵長には惚れていません。確かに先程は嬉しかったですが……」
私が惚れているのは彼ではありません、とはにかむように笑う。
「そうか」
それだけ言うと彼女はまた何かを考えるかのように黙ってしまう。
「私が惚れている男性は…とても強い人です。真っ直ぐで迷いのない瞳を持っています。みんなからも信頼されその背中についていこうと決めました。彼の為なら喜んでこの心臓を捧げるつもりです…それが人類の勝利に繋がると信じてるから。私にはとても手の届かない人なのです」
気持ちを伝えて彼の邪魔をしたくありません、と寂しげに笑う彼女に近付いてそっと抱きしめた。
「だ、団長?!」
腕の中で慌てている彼女を離さぬように腕に力を込める。彼女は緊張しているようだが何も言わず大人しくなった。
「君に想われている男性が羨ましいな」
自分であると知っているが釜をかけるように彼女に話す。
「こんな優しい女性に想われてみたいものだ」
「だ、団長…」
離して下さい、と彼女は言うが触れてしまっては離すのがもったいない。
「その男とは誰なんだ?それを聞くまでは離せないな」
「そ、そんな…!」
彼女にとっては拷問に近いかもしれない。だが、彼女の口から直接聞きたかった。違う男の名前が出た時は、まぁその後に考えよう、そう思って小さな体をまた力を込めて抱きしめた。
「それで。誰なんだ?」
「あの…どうして言わないといけないのですか…?」
「私が知りたいからだ」
「どうして団長が…」
「そうだな…知って今の関係を変えようと考えたまでだ」
そう伝えると彼女の体が小さく震え出した。「ふっ…うっ……」とくぐもった声が聞こえどうやら泣いているようだ。
「泣かなくてもいいだろう」
「でも…私……何かやらかしたんですよね…」
「なぜそうなる」
「関係を変えると…それは終わらせると言うことですよね?」
すみませんでした…、彼女は自分の腕の中で涙を流した後見上げる。涙がまつげについて艶めき色っぽい。
「もう団長の迷惑にはなりたくありません…馬の世話は違う人にお願いしますね…」
困ったように笑う彼女の頬を両手で包み込むと目尻に溜まっている涙をペロリと舐めた。
「だ、だんちょ!何を?!」
彼女は顔を赤くさせて慌てふためいている。その様子が可愛らしくクスリと笑った。
「君の涙を舐めとっただけだが?」
やはり少ししょっぱいな、と言うとどんどん赤くなる彼女。
「それで。誰なんだ?」
「ぅっ、言わないといけないですか?」
「そうだな。でないとここから先に進めない」
「え?」
先に?えっ、どういう…えっ?、と彼女は混乱してキョトンとしている。コロコロと表情が忙しい彼女にまた小さく笑うと耳元で呟いた。
「あの時居眠りなどしてなかったからな」
初めから全部聞いていたよ、遂にカミングアウトする。
「えっ…えぇえ?!」
彼女は驚きのあまり腕から逃れ後ずさりすると足がもつれたのか尻餅をついている。
「いたた…」
「大丈夫か?」
「はい…大丈夫です、」
「君は私に言いたい事があるのだろう?」
それは、と顔を赤くさせて俯く彼女。その顔を見ようと顎に手を添えて持ち上げた。
「ありますが…言えません…」
「言ってみたらどうだ?」
「そんな…」
モゴモゴとする彼女に額をくっつける。
「私は聞きたい」
「どうしても、ですか?」
「あぁ。どうしてもだ」
分かりました、と彼女が深呼吸をしている。額をくっつけたまま口を開く、
「…私は…団長のことを尊敬しています…初めはそれだけでした。でも今は…」
「私が惚れている男性は…団長です、その、好き、なんです…」
視線の先では足の上で手を握りしめているのが見えた。その手に自分のを重ね包み込む。顔を離し彼女の瞳を覗き込めば緊張と不安で揺らいでいるように見えた。
「やっと聞けたな」
「迷惑では…」
「ない。むしろ嬉しいな」
「嬉し、い?」
「私も君と同じ気持ちだからだ」
「そうですよね…って、え?」
「私も君の事を好きだという事だ」
「えっ、えぇぇえ?!」
また口をパクパクとさせて驚いている彼女に微笑んで抱きしめた。
「い、いつからですか?」
「そうだな…馬の世話を一緒にし始めてからだが…いつからとは分からない」
気が付いたら好きだった、この歳にもなってと思うが素直に気持ちを伝えた。
「だけど…こんな子どもっぽい私なんか…」
「君だからいいんだ」
「他にも素敵な女性がいますよ?」
「そうだな。だが、私は君を選ぶ」
「本当に…?」
「本当だ。君に惚れている」
嘘はつかない、そう言って彼女の顔を覗き込めば目に涙が溜まっており今にも泣き出しそうだ。
「夢みたいです…」
「夢じゃないか確かめてみよう」
「どうやってですか?」
こうするんだ、と小さく笑うと彼女の唇に自分のを重ねた。顔を離して彼女の顔を覗き込むと目をまん丸にさせている。次の瞬間、顔が一気に赤くなり思わず「ふっ」と笑ってしまった。
「どうだ?」
「あの、まだ夢みたいで…」
「まだ足りないのか」
「あ!違くて!」
「落ち着きなさい」
「は、はい、」
彼女は深呼吸をして落ち着かせようとしているのを見つめていたがどうもまだ彼女に触れたくて仕方がない。
—— 果たしてどんな声で啼くのだろうか
そんなことを考えているのを彼女は知らないだろう。
—— 今日のところは我慢するとしよう
そうでなければ彼女の中で容量を超えてしまってもう受け入れてくれない可能性がある。それだけは避けたい。これからじっくりと彼女を自分に染めればいい、そんなことを考えた。
「団長…これからよろしくお願いします」
「こちらこそ」
色んな意味でよろしく頼むとしよう。
緩みそうになる口元を隠すように彼女の額にキスを一つ落とした。
優しい彼女に愛馬の次に懐いたのは自分。
これからも命続く限り愛馬とともに。
ーーー
「そろそろいいか?」
「何がですか?」
「君が欲しいんだが…」
「もうなってますよ?」
「そういうことではない」
「どういうことですか?」
「君と身体を重ねたい、そう言ってるんだ」
「え!あの、その!」
「嫌と言われても君を頂く」
我慢してきたが耐えられなくなった団長。彼女を抱いてしまうのは恋仲になってあまり日は経ってなかったとか。
愛馬の次に
fin.
2019.5.2
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