君からほしい
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君からほしい
その瞳に捕らわれてーafter storyー
「……零さん、ほんとにしないとダメですか?」
「もちろん。ほら、早く」
至近距離に彼の顔があり詰め寄られている。
背中には壁が当たり思うようには逃げられない。
—— 恥ずかしすぎる……なんでこんなことに?!
ーーーーーーーーー
今日は2月14日バレンタイン。
好きな人へ想いを伝える日で会社でも周りは浮き足立っていた。
自分も当日彼に渡したくて事前に予定を聞こう思い部屋を訪れると何も話してないのに部屋の鍵を渡された。
「2月14日は生憎帰りが遅くなるかもしれませんので風見も来るあの部屋で待っていて下さい。寝てもらっても構いませんよ?」
ニコリと笑う彼を見て全部バレバレだという事に照れ、顔を赤くしたのを思い出した。
手作りした生チョコを用意して彼の部屋で待っているが本当になかなか帰ってこない。ソファーでテレビを見ながら起きていたが睡魔には勝てず寝てしまう。
どれくらい時間がたったのか。体に何かが掛けられたのが分かり目を覚ます。
「れいさん…?」
ボーっとする頭で名前を呼ぶ。
「すみません。起こしてしまいましたか?」
「ううん。大丈夫…」
「寝てもらっても構いませんよ?」
「…零さんに会いたかったから、起きます」
「おや。嬉しいことを言ってくれますね」
「あっ…えっと……その…!」
「いいですよ。分かってますから」
彼はそう言い顔を近付け頬へ口付けをする。目が合いニヤリと笑う彼に鼓動が速くなる。
「お、おかえりなさい」
「はい。ただいま」
顔を赤くしたまま挨拶をすれば彼もまた返してくれる。だけど、こんな近い距離で言うのは心臓に悪い。このままだと何をされるか分からないので慌てて彼から離れ、用意したチョコを準備する。溶けたらいけないと思い冷蔵庫で保冷していた。
「ちょっと冷たいけど、溶けて欲しくなかったから…」
そう言いながら両手で持って彼に差し出す。
「いつもお世話になってます。感謝の気持ちですのでよかったら受け取って下さい」
彼は受け取ってくれたが何も言わない。何か気に入らない事でもあったのかと心配になる。じっと箱を見つめ黙ったままだ。
「…零さん?」
「これはどっちなんでしょう」
「えっ?」
「義理か本命か」
「……っ!」
彼は探るような瞳でこちらを見つめる。しかしすぐに余裕ある笑みを浮かべて少しずつ距離を縮める彼。
「冷蔵庫にもう一つ包装されたものがありました。僕がもらったものとは少し違いますね。中にあるのはブルー系でラッピングされていますが僕のはピンク。ピンクは女性らしさを表しますが愛情などの感情も表します」
彼はまた一歩近付き腰に腕を回されると体を引き寄せ密着する。髪を撫でクルクルと弄び始めた。これは彼の癖なのだろうか。よく髪を弄られる。
「ということは、僕にくれたチョコが本命ということでよろしいですか?」
そう聞かれたがここで頷いてよいものなのか迷う。確かに彼には本命チョコを用意した。もう一つは風見さんの分だ。彼に、はい本命です、なんて言って何か期待できる答えが返ってくるとは思えない。
体は重ねているのに未だ彼から本当の気持ちは聞いていないのだ。
「…本命だと言ったら……零さんはどこかへ行ってしまいますか?」
少し試すようなことを言ってしまった、すぐに後悔の念が押し寄せるが聞いてしまっては仕方がない。彼はそれを聞いて笑顔を消し真顔になる。真剣な表情に何を言われるか怖いがじっと彼から目を逸らさず見上げる。
「僕はどこにも行かない。あなたを守ると決めたんだ。この際、義理だろうが本命だろうが関係ない」
彼の言葉に何も言えなくなり視線を交わらせたまま体に緊張が走った。
「ハルさん。僕は君からほしい。それだけで十分だ」
彼の瞳は熱を帯びその視線に鼓動が更に速く大きく脈を打つ。気が付けば彼に唇を塞がれそこから彼の熱情的なものが伝わってきた。
ちゅっ、と音を立てて唇が離れると彼は意地悪な笑みを浮かべた。自分が渡したチョコの包みを開けて何故か手渡される。
「ハルさん。一つ取って下さい」
妖しい笑みを浮かべたままそう言うので一つ摘む。
「僕の口に入れて下さい」
「へっ?!」
突飛な事を言うので思わず変な声を上げて後退りをする。すぐに背中に壁があたり逃げようとしたが彼に壁ドンされ距離を詰められるため逃げられなくなった。
「ほら。早くしないと溶けますよ?」
「……零さん、ほんとにしないとダメですか?」
「もちろん。ほら、早く」
要は彼はお口あーんするのでチョコを食べさせてほしい、ということ。何故だろうか。イケメンだからなのか零さんだからなのか物凄く恥ずかしい。しかし本当に早くしないと手の温度でチョコが溶け始めてきた。
「……っ!じゃあ零さん…あーん…」
はい、と言って口を少し開ける彼。ドキドキしながらも彼の口へチョコを入れれば手を掴まれ指まで口に含まれた。指についたチョコを舌で舐め取られる。舌の柔らかく生温かい感触に不覚にも感じてしまう。
「…っっ……れい、さん…」
「ご馳走さま」
彼は微笑むだけで何食わぬ顔をしている。こちらは赤面して速まる鼓動で呼吸も上手くできないというのに。
「ではもう一つ」
「えっ?!」
はい、と箱を差し出され渋々摘んで先程と同じように口の中へ入れる。今度は顎を持ち上げられ急に唇が塞がれた。驚いて彼の胸を押し抵抗するけど、頭と腰に腕を回され逃げられない。
唇の隙間から舌が割り込み、一緒に甘いものが流し込まれた。
それは彼のために作った生チョコで今は自分の口の中で彼の熱と共に溶かされ唾液と混ざり喉の奥へと流れ込む。チョコの甘みが口に、香りが鼻腔を抜けて広がっていく。コクリと飲み込んで唇が離れた。
「この方が甘くて美味しい」
そう彼は笑う。
だけど妖艶な雰囲気を纏い熱い口付けをする彼の方が一番甘いのではないかと思わずにはいられない。
バレンタイン。
好きな人に気持ちを伝える日。
気持ちは伝えられなかったが彼はきっと知っている。
だって彼は"警察"でもあり"探偵"なのだから。
君からほしい
その瞳に捕らわれてーafter storyー
これを読んだ皆様にも素敵な日になりますように。
fin.
2019.2.9
2019.12.1
↓こちらに続きます。
チョコで蕩けたその呟きは**
その瞳に捕らわれてーafter storyー
「……零さん、ほんとにしないとダメですか?」
「もちろん。ほら、早く」
至近距離に彼の顔があり詰め寄られている。
背中には壁が当たり思うようには逃げられない。
—— 恥ずかしすぎる……なんでこんなことに?!
ーーーーーーーーー
今日は2月14日バレンタイン。
好きな人へ想いを伝える日で会社でも周りは浮き足立っていた。
自分も当日彼に渡したくて事前に予定を聞こう思い部屋を訪れると何も話してないのに部屋の鍵を渡された。
「2月14日は生憎帰りが遅くなるかもしれませんので風見も来るあの部屋で待っていて下さい。寝てもらっても構いませんよ?」
ニコリと笑う彼を見て全部バレバレだという事に照れ、顔を赤くしたのを思い出した。
手作りした生チョコを用意して彼の部屋で待っているが本当になかなか帰ってこない。ソファーでテレビを見ながら起きていたが睡魔には勝てず寝てしまう。
どれくらい時間がたったのか。体に何かが掛けられたのが分かり目を覚ます。
「れいさん…?」
ボーっとする頭で名前を呼ぶ。
「すみません。起こしてしまいましたか?」
「ううん。大丈夫…」
「寝てもらっても構いませんよ?」
「…零さんに会いたかったから、起きます」
「おや。嬉しいことを言ってくれますね」
「あっ…えっと……その…!」
「いいですよ。分かってますから」
彼はそう言い顔を近付け頬へ口付けをする。目が合いニヤリと笑う彼に鼓動が速くなる。
「お、おかえりなさい」
「はい。ただいま」
顔を赤くしたまま挨拶をすれば彼もまた返してくれる。だけど、こんな近い距離で言うのは心臓に悪い。このままだと何をされるか分からないので慌てて彼から離れ、用意したチョコを準備する。溶けたらいけないと思い冷蔵庫で保冷していた。
「ちょっと冷たいけど、溶けて欲しくなかったから…」
そう言いながら両手で持って彼に差し出す。
「いつもお世話になってます。感謝の気持ちですのでよかったら受け取って下さい」
彼は受け取ってくれたが何も言わない。何か気に入らない事でもあったのかと心配になる。じっと箱を見つめ黙ったままだ。
「…零さん?」
「これはどっちなんでしょう」
「えっ?」
「義理か本命か」
「……っ!」
彼は探るような瞳でこちらを見つめる。しかしすぐに余裕ある笑みを浮かべて少しずつ距離を縮める彼。
「冷蔵庫にもう一つ包装されたものがありました。僕がもらったものとは少し違いますね。中にあるのはブルー系でラッピングされていますが僕のはピンク。ピンクは女性らしさを表しますが愛情などの感情も表します」
彼はまた一歩近付き腰に腕を回されると体を引き寄せ密着する。髪を撫でクルクルと弄び始めた。これは彼の癖なのだろうか。よく髪を弄られる。
「ということは、僕にくれたチョコが本命ということでよろしいですか?」
そう聞かれたがここで頷いてよいものなのか迷う。確かに彼には本命チョコを用意した。もう一つは風見さんの分だ。彼に、はい本命です、なんて言って何か期待できる答えが返ってくるとは思えない。
体は重ねているのに未だ彼から本当の気持ちは聞いていないのだ。
「…本命だと言ったら……零さんはどこかへ行ってしまいますか?」
少し試すようなことを言ってしまった、すぐに後悔の念が押し寄せるが聞いてしまっては仕方がない。彼はそれを聞いて笑顔を消し真顔になる。真剣な表情に何を言われるか怖いがじっと彼から目を逸らさず見上げる。
「僕はどこにも行かない。あなたを守ると決めたんだ。この際、義理だろうが本命だろうが関係ない」
彼の言葉に何も言えなくなり視線を交わらせたまま体に緊張が走った。
「ハルさん。僕は君からほしい。それだけで十分だ」
彼の瞳は熱を帯びその視線に鼓動が更に速く大きく脈を打つ。気が付けば彼に唇を塞がれそこから彼の熱情的なものが伝わってきた。
ちゅっ、と音を立てて唇が離れると彼は意地悪な笑みを浮かべた。自分が渡したチョコの包みを開けて何故か手渡される。
「ハルさん。一つ取って下さい」
妖しい笑みを浮かべたままそう言うので一つ摘む。
「僕の口に入れて下さい」
「へっ?!」
突飛な事を言うので思わず変な声を上げて後退りをする。すぐに背中に壁があたり逃げようとしたが彼に壁ドンされ距離を詰められるため逃げられなくなった。
「ほら。早くしないと溶けますよ?」
「……零さん、ほんとにしないとダメですか?」
「もちろん。ほら、早く」
要は彼はお口あーんするのでチョコを食べさせてほしい、ということ。何故だろうか。イケメンだからなのか零さんだからなのか物凄く恥ずかしい。しかし本当に早くしないと手の温度でチョコが溶け始めてきた。
「……っ!じゃあ零さん…あーん…」
はい、と言って口を少し開ける彼。ドキドキしながらも彼の口へチョコを入れれば手を掴まれ指まで口に含まれた。指についたチョコを舌で舐め取られる。舌の柔らかく生温かい感触に不覚にも感じてしまう。
「…っっ……れい、さん…」
「ご馳走さま」
彼は微笑むだけで何食わぬ顔をしている。こちらは赤面して速まる鼓動で呼吸も上手くできないというのに。
「ではもう一つ」
「えっ?!」
はい、と箱を差し出され渋々摘んで先程と同じように口の中へ入れる。今度は顎を持ち上げられ急に唇が塞がれた。驚いて彼の胸を押し抵抗するけど、頭と腰に腕を回され逃げられない。
唇の隙間から舌が割り込み、一緒に甘いものが流し込まれた。
それは彼のために作った生チョコで今は自分の口の中で彼の熱と共に溶かされ唾液と混ざり喉の奥へと流れ込む。チョコの甘みが口に、香りが鼻腔を抜けて広がっていく。コクリと飲み込んで唇が離れた。
「この方が甘くて美味しい」
そう彼は笑う。
だけど妖艶な雰囲気を纏い熱い口付けをする彼の方が一番甘いのではないかと思わずにはいられない。
バレンタイン。
好きな人に気持ちを伝える日。
気持ちは伝えられなかったが彼はきっと知っている。
だって彼は"警察"でもあり"探偵"なのだから。
君からほしい
その瞳に捕らわれてーafter storyー
これを読んだ皆様にも素敵な日になりますように。
fin.
2019.2.9
2019.12.1
↓こちらに続きます。
チョコで蕩けたその呟きは**
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