変な人に好かれやすい天童さんの話






 結果を知らされた瀬見達は、あまりの事態に絶句した。天童に届けられたファンレターの全てが、ストーカーや変態の類いであったというのだから、言葉を失うのも納得である。


「あれと似たような手紙が3通……!? どうなってんだよ、天童の奴……!!」
「何か変なフェロモンでも出てんのか……?」


 瀬見が頭を抱え、山形が青い顔で首を傾げた。これには流石の牛島も難しい顔で腕を組んでいる。
 天童は確かに目立つ人間だろう。ひょろりと背が高く、目の覚めるような赤毛。言動が特徴的で、印象に残りやすいのだ。その分、おかしな人間の目にも留まりやすいのだろう。
ふと、押し黙っていた大平が小さく手を挙げた。


「…………恐ろしいことに気付いてしまったんだが、言ってもいいか?」
「……何だ、大平。この事実以上に恐ろしいことがあると?」


 聞きたくない、と露骨に顔を顰める牛島に苦笑する。けれど、言わなければならないのだと、その目が真剣に語っていた。


「…………天童の中学は、無名の弱小校だったはずだ。本人も、二回戦に進めれば良い方だと言っていただろう?」
「え? ああ、確かそんなこと言ってたな……?」
「つまり、それだけ試合数は少ない。天童を見掛ける回数も、かなり限られているはずだ」
「……その少ない時間の中で、3人もやべぇ奴を引っかけちまったって事か!?」


 天童は、近いうちに試合に出るようになるだろう。その分、人目に付くことも多くなり、それに伴って、危険人物の目に触れてしまう機会も多くなるのではないだろうか。その答えに行き当たり、山形達の顔からザッと血の気が引いた。


「…………天童を絶対に一人にしてはならない。添川達にも協力を仰ごう」
「そうだな、それが良い」
「だが、それだけでは防げないものもあるだろう。本人に自覚させるべきじゃないか?」
「いや、本人じゃない俺達でさえ衝撃を受けたんだぞ? 本人に報せたらショックを受けるんじゃないか?」
「それに天童の性格上、逆に一人になりそうじゃねぇか? 俺達に何か起こるかも~ってよ」
「こういうことがあったから、お互いに気に掛けよう、みたいなニュアンスで伝えれば良いんじゃないか? そうすれば、あいつは誰かの傍にいるようにするだろ?」
「……そうだな。あいつはそういう奴だ」


 まだ知り合って一年にも満たないけれど、それでも見えてくるものがある。自分たちが彼の“特別“であるという自負は、すでに生まれている。彼が彼なりに、自分たちを思いやってくれているのは、痛いほどに伝わっているのだ。ならばこちらも、相応のものを返さなければ。
 仲間を守ることを誓った彼等は、同志を集めるべく動き出す。そんな彼等は後にさらなる戦慄を覚える事態に陥るのだが、それはまた別のお話である。




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