逆行天童さんが牛島さんの幼馴染になる話
牛島は成長痛に苦しめられていた。手足がギシギシと軋み、何をするのも激痛を伴う。動くことさえ億劫だった。
自分より少し先に成長痛を迎えた同級生が痛みに顔を顰めていたことを思い出す。そのときはそれほどまでの痛みなのだろうか、と首を傾げていたが、実際に経験してみれば、あんな表情を浮かべるのも納得する痛みを伴っていた。
端整な顔を歪めた牛島を、天童が心配そうに見つめる。
「若利くん、大丈夫?」
「ん、大丈夫だ……」
「うーん、あんまり大丈夫じゃなさそうダネ。ちょっと触るよ」
天童が、大きくて薄い手のひらを牛島の膝に乗せる。羽根のような軽さで、天童が膝を撫でさすった。ほんのりとあたたかい手のひらが、痛みを和らげてくれるような気がした。
「気休めだけどね、何も無いよりマシかなって」
「……ん、ありがとう」
「いいよぉ。俺の手、いたくなぁい?」
「痛みが和らいだ気がする……」
「んふふ、なら、もうちょっと撫でてようかな」
横になった方が楽だろうと、天童が牛島の頭を膝に乗せる。腕や背中をそっと撫でられ、その心地よさに瞼が落ちてくる。牛島がまどろんでいることに気付いた天童が、小さく笑った。
「身体痛くてあんまり寝てないんでしょ? 寝ちゃっていいよ」
「ぅん……」
「おやすみ、若利くん」
髪を撫でられ、トントンと一定のリズムで肩を叩かれて、牛島はそのまま夢の中へと旅立っていった。
この出来事を切っ掛けに、甘やかされることの心地よさを覚えてしまった牛島に度々甘えられるようになるのだが、穏やかな寝顔を浮かべる友人にほっとしていた天童は、そんな未来が訪れることなど知る由もない。
◇
「大丈夫か、覚」
「え~ん、若利くん! 手足の関節が痛いよ~!」
「成長痛か」
「そうだよぉ、ギシギシする~」
「触っても良いか?」
「撫でてくれるの?」
「ああ。お前のように上手く出来るかは分からないが……」
「その気持ちだけで嬉しいよ。アリガトー」
「お前は眠れているのか?」
「今のところはネ。始まったばっかだから、どうなるか分かんないケド」
「そうか……。抱えた方が撫でやすい。もう少し寄ってくれ」
「えっ」
「どうした?」
「う、ううん、何でもないよ……」
◇
バレンタインにチョコを貰うも、牛島は食べない。
「食べないの?」
「お菓子はあまり食べない」
「そっかぁ。俺、お菓子食べるのも好きだし、作るのも好きダヨー」
「作れるのか?」
「うん。今日バレンタインだから、お父ちゃんとお母ちゃんに作ったよー。余りがうちにあるから、興味あるなら食べに来る?」
「行く」
「オッケー! お母さんにちゃんと許可貰ってきてね」
「分かった」
◇
中学進学後。
(大平と瀬見が中学から白鳥沢設定)
「覚、ネクタイが結べん」
「若利くんってば不器用だねー。慣れるまでは手伝ってあげるから、ちゃんと結べるように練習しようね」
「……覚が結んでくれ」
「それくらい別に良いけど、自分でも結べるようになっておいて損はないんだから、結べるようにはなってヨネ」
「分かった」
「コラー! 若利くん、ペース遅いからって一人で突っ走るんじゃないヨ! 道分かってないでしょ!」
「む、そんなことはない」
「道覚えるまではみんなと一緒に走りなさい! 一人で帰ってこれるようになったらペース上げて良いから!」
「なら覚がついていれば良いだろう」
「俺が若利くんと同じペースで走ったら途中で動けなくなっちゃうでしょ! わがまま言わないで!」
「…………」
「むくれたって駄目だからね。俺は若利くんが迷子になっても迎えに行かないヨ。練習あるんだから」
「…………分かった」
「うむ、よろしい」
瀬見「天童は牛島の母ちゃんか何かか?」
大平「牛島も、そこまで面倒見てやらなくても大丈夫なんじゃないか? しっかりしてそうだし」
天童「若利くん、結構天然さんなんだよね……。だから、結構突拍子もないことやらかすから、二人も気を付けておいた方が良いよ……」
瀬見「天然……?」
大平「突拍子もないことをやらかすイメージがないなぁ……」
天童「いっそ“若利くんはポンコツ”くらいの認識でいた方が良いよ。結構な箱入りだから」
瀬見「ふぅん……?」
瀬見「マジだったわ」
大平「あれは放っておいちゃいけない」
天童「でしょ?」
◇
バレンタイン
「うひゃー、流石若利くん。相変わらずモテモテだねぇ」
「…………覚」
咎めるような声に肩を竦める。
「覚は何を作ったんだ?」
「今年はねぇ、クッキーとマカロン作ったよー。クッキーは今持ってるよ。マカロンは寮に帰ったら一緒に食べようね」
「ああ。楽しみだ」
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