逆行天童さんが牛島さんの幼馴染になる話
小学三年生の終わり頃、父親の転勤で引っ越しをすることになる天童一家。
引っ越した先は牛島家のご近所で、学区が同じであるため、学校も一緒。
四年生から牛島と同じ学校に転校。逆行前と同じようにバレークラブに所属し、牛島がいることが判明。
今の段階から牛島に接触して、実力の底上げに協力すれば、白鳥沢学園に在学中に全国優勝出来るのではないか、と思い付く。
クラブで対戦形式の練習をすることになり、牛島のスパイクをブロックする。クラブで一番上手い牛島が止められることは殆ど無く、牛島が興味を惹かれる。
◇
「一緒に練習しよう」
「うん、イイヨ。俺、天童覚」
「牛島若利だ。天童のブロックは凄いな。初めて見た」
「アリガトー」
「今まではどこのクラブに所属していたんだ? どこで習った?」
「クラブには所属してなかったヨ。ブロックは自分で学んだの」
「そうなのか? それは凄いな」
「俺、四年生から××小学校に転校するんだけど、牛島くんはどこの学校?」
「! ××小学校だ。同じ学校に通うことになるのか」
「マジ!? じゃあ、学校でもよろしくね!」
「ああ、こちらこそよろしく」
◇
クラブ終了時刻、迎えに来た母親に「友達」として牛島を紹介。牛島も迎えに来た母親に「友達」と紹介。
双方とも、初めての「友達」で、母親同士も仲良くなる。そこから家族ぐるみでのお付き合いが始まり、これは流石に想定外だった。
(いきなりエースの牛島と仲良くなってやっかまれたり、原作と同じ理由でいじめが始まる。けれど、天童がいじめられていることに気付いた牛島がぶち切れて遠巻きにされるだけで終わる)
◇
無事に××小学校に編入した天童は、同じクラスに牛島の姿が無いことに少しだけがっかりしていた。逆行以前の高校三年間、彼とは一度も同じクラスになっていない。休み時間や昼休みにはよく会いに行ったけれど、学校行事はクラスで行われることが多い。文化祭の準備だったり、体育祭の練習だったり、一緒に出来たらきっともっと楽しかっただろう。今回こそは同じクラスになってみたかったな、と肩を竦めた。
HRが終わり、最初の授業が始まる前の僅かな時間。転校生が来ると必ず行われる質問イベントの時間がやってきた。わらわらと集まってくる少年少女等に愛想笑いを浮かべながら、天童はのらりくらりと質問を躱す。貼り付けた笑みの下で面倒だなぁ、とため息をついていると、教室の入り口付近が賑やかな事に気が付いた。他のクラスからも転校生を見学にやってきたのだろうか。俺はチンパンジーじゃねぇんだぞ、と思いながら目を向けると、そこには見覚えのある少年がいた。―――――牛島である。
牛島は誰かを探すようにきょろ、と目を動かし、天童と目が合うと、オリーブ色の瞳に僅かに喜色を乗せた。
「若利くん!」
天童が立ち上がって手を振ると、牛島もぎこちない動作で手を振り返す。口元が僅かに緩んでいるように見えて、天童は牛島に駆け寄った。
「久しぶり、若利くん!」
「ああ、久しぶりだな、天童」
「クラス離れちゃって残念ダネ。若利くんは何組なの?」
「1組だから、隣のクラスだ」
「ホント!? じゃあ、次の休み時間はそっちに遊びに行くね!」
「ああ、待ってる」
「うん! あ、もうすぐ授業始まっちゃうね。俺、席戻るから、また後でね」
「うん、また」
はにかんだような笑みを浮かべ、牛島が隣のクラスに戻っていく。かわいいなぁ、と微笑ましくなりながら、その姿を見送る。自分も席に戻ろう、とくるりと振り返ると、クラス中の視線が天童に向いていた。その瞬間、天童は己の失態を悟った。
(絶対めんどくさいことになるやつじゃ~ん)
◇
五年生の夏休み。その頃にはお互いの家に遊びに行くくらいには付き合いを深めていた天童と牛島は、毎日のように顔を合わせていた。この日の午前中は牛島の家で夏休みの宿題を進めて、午後から二人でバレーをする約束をしていた。
小学生の宿題は、一度大人を経験している天童にとっては簡単なものだ。今日進める分として持ってきた宿題を早々に終わらせて、読書感想文の課題図書に手を伸ばした。
「覚」
「なぁに、若利く、ん……?」
今、名前で呼ばれなかっただろうか。目を瞬かせて牛島の顔を見る。牛島はいつもの澄まし顔で、天童に空白の回答欄を見せていた。
「課題で聞きたいところがあるんだが……。どうした、天童?」
「え? あ、ごめん。ボーッとしちゃってた。えっと、課題? どこ?」
聞き間違いだったのだろうか。呼び間違いでもしたのだろうか。宿題の解説をしながら、天童は内心で首を傾げた。
このときの天童は引っかかりを覚えながらも、自分の聞き間違いだと聞き流した。それがいつの間にか、名字よりも名前で呼ばれることが多くなり、最終的には名前で呼ばれることが当たり前になるのだが、それはまだ先のお話である。
◇
最終学年になり、牛島に白鳥沢から声が掛かる。牛島は白鳥沢に入学することを決意し、天童にも一緒に進学しようと言い出す。
金銭面などもあり、親に相談してみないといけないと答える。すると牛島が「覚が行かないなら行かない」と言い出し、両家親族で会議になった。
最終的に牛島の母が「覚くんがいたら安心」と言い出し、天童の両親が「お金は気にするな」と言い出す。
そして中学から白鳥沢学園に入学することになり、三年早く楽園へ踏み入ることに。