ジャミルの友達が姐さんだったら 9.5
ツバキから資料を受け取り、用件の済んだレオナは早速ファイルを確認するために、自室に戻ることにしたようだった。フロイド達も聞きたいことを聞けて満足し、彼等も寮に戻るという。ツバキとカリムも、ジャミルが慰労の意を込めた食事を用意してくれるスカラビアに戻ることになった。
レオナは大所帯にげんなりした顔を見せたが、特に何も言わずにさっさと鏡舎に向かって歩き出す。そんな背中にフロイドが絡みに行き、カリムがフロイドに便乗する。そんな三人の背中を見つめながら、ツバキがゆったりと歩を進める。淡い笑みを浮かべるツバキを横目で見ながら、ジェイドがその隣を歩く。
「おや?」
ふと、ツバキの髪に、見慣れない髪留めが付けられていることに気が付いた。目の覚めるような赤いリボンに金色の房紐飾りがついた、華やかな髪飾りだった。イワナガヒメの呪いを解くためにジェイドの元を訪れていたときには見たことのないものだ。そもそも、その期間中に髪飾りの類いを付けているのを見たことが無かった。珍しいな、とまじまじと見つめる。濡れ羽色の髪に、赤色がよく似合っていた。
「ツバキさんが髪飾りを付けているのを初めて見ました。よくお似合いです」
「ありがとう。人助けをしたら、お礼にと頂いたものなんだ。綺麗なものだったし、そこまで大ぶりなものではないから使ってるんだ」
「そうなのですね」
誰かからの贈り物であることに、もやりとした不快感が胸を占める。けれど、お礼の品ならば、こうして身につけてくれるのだと知れたのは僥倖だ。どのようなものが似合うだろうか、と考えながらツバキの隣を歩くジェイドは、酷く楽しそうだった。
そして後日、ツバキは幼馴染み達を通して、ジェイドからも髪飾りを贈られることとなる。チョウザメの鱗を使用した、どうやら手作りのヘアピンとバレッタ。ヘアピンの方は、細いピンに取り付けられた鱗の色が赤色から青色へと変わっていくグラデーションが美しい一品。バレッタの方は、白い長方形で、青色の鱗で五弁の花を象った飾りが付いていた。これらを見て、ツバキと、開封時に立ち会ったジャミルが絶句したのは言うまでも無いだろう。
「………………これ、どういう意図で送ってきたんだ……?」
「どう見ても、特別な意図を含んでいるだろう。そもそも、あいつは誰かに手作りの品なんて贈るような奴じゃない」
「いやいやいや、私は一応命の恩人だぞ? そこを加味して考えてくれ」
「そこを加味しても、わざわざ大切にしているピアスと同じ素材を使う理由にはならないな。しかも、わざわざ赤色に対抗するような色で作るなんて……」
「ロイヤルソードアカデミーの制服が青と白を基調としているから、それに合わせてくれた可能性も捨てきれないだろう?」
「その可能性もなくはないが、限りなく低いだろうな……」
「待ってくれ。どこでそんなフラグが……?」
「……………ジェイドとの出会いを考えるに、吊り橋効果では?」
沈黙する二人の隣で、カリムだけが、「綺麗だな」と朗らかに笑っていた。