ジャミルの友達が姐さんだったら 8






 普段のフロイドなら、忠告など無視してすぐさま行動に移しただろう。けれど、彼は好奇心が疼くのを抑え付けた。忠告したのが他ならぬジャミルであったからだ。彼はジェイドの一件を可及的速やかに対応しなければ命はないと判断し、すぐさまツバキに連絡を付けてくれたのだ。彼の的確な判断があったからこそ、ジェイドは今も生きている。そして、そのジェイドを助けてくれたツバキが、この件を引き起こした元凶を危険なものだと判断し、避けるように進言しているのだ。ここで行動に移してしまえば、彼らはきっと失望するだろう。適切な判断も出来ない愚か者だと断じるだろう。それだけは避けたい事態だった。
 人間よりも五感の優れている人魚達は、この匂いの元を探っていた。香水の類いであるならば金になると、アズールが目を付けていたのだ。
 けれど、これが危険なものだと判明した今、関わらないのが賢明だ。まずはジェイドに事の次第を話して、アズールに手を引くよう進言しなければ。


「あれ?」


 ジェイドを探していた足が止まる。


「匂いって言えば、オルカちゃんってどんな匂いだったっけ………」


 人には、肌の匂いというものがある。香水とか、洗剤の匂いとは異なるものだ。生きているものから香る、生命の匂い。
 ツバキからはシトラスやミントなど、夏を彷彿とさせる爽やかな香りがしていた記憶があった。最後に会ったときは、だいぶ肌寒くなってきていた頃だったからか、ハーブやスパイス系の匂いを漂わせていた気がする。
 けれど、それらは人工的なものであり、生きるものの匂いではない。肌の匂いは、ついぞ思い出せなかった。




7/8ページ
スキ