ジャミルの友達が姐さんだったら 7.5






・神社での巫女とのやり取り

巫女「あら、あなた……」
リリア「む、わしに何か?」
巫女「本当は、あまりこういうことをしてはいけないのですけれど……」
リリア「ふむ、何か良くない相でも見えておるのか?」
巫女「ええ、まぁ……。今以上に、お身体を労ってくださいね」
リリア「……分かるのか」
巫女「少し」
リリア「自信を持つが良い。他の者は誰も気付いておらんぞ?」
巫女「いえ、本当に。私は力が弱いのです。ですから、はっきりとは申せませんが……」
リリア「まだあるのか?」
巫女「きちんと、お話し合いになるのが良いかと」
リリア「…………忠告、痛み入る」
巫女「ふふ。……これは、とあるお方の考えなのですが、“言葉は惜しむものではない。言葉は尽くしてこそ”ですよ」
リリア「言葉は尽くしてこそ、か……」
巫女「さるお方にお会いできることを祈っております」
リリア「……!」

リリア「あの娘で力が弱いとはのぅ……。やれやれ、末恐ろしい国じゃ……」
シルバー「親父殿?」
リリア「いや、何でも無い。さ、次に行くか!」
シルバー「はい、親父殿」



・シルバー達と別れてからのツバキとジャミルの会話

ツバキ「何か、髪留め以外にも色々と貰ってしまったんだが……」
ジャミル「シルバーを助けた礼だろう? 素直に貰っておけば良いじゃないか」
ツバキ「……本当はこういうもの、貰ってはいけないんだがな」
ジャミル「それは正式な依頼のときだろう? シルバーの一件は個人的なやり取りで行われたことで、報酬も貰っていないんだ。礼の品くらい受け取っておけ」
ツバキ「そうなんだが……。ある程度大きな一族だと、面子のために謝礼を盛大なものにするだろう? 下手をすると、普通に報酬を受け取るより金額が高いときもザラにある」
ジャミル「…………ああ、確かに。しかも、相手は茨の谷の次期王の従者。王家からの謝礼が混じっている可能性があるのか」
ツバキ「開けたくない……」
ジャミル「ある程度なら鑑定できるぞ」
ツバキ「絶対に金額を言わないでくれ、頼むから」
ジャミル「俺が口にしなくても、君自身もある程度の目利きは出来るじゃないか」
ツバキ「君が開けてくれ」
ジャミル「絶対に嫌だ。そもそも君が貰ったものなんだから、自分で開けろ」
ツバキ「分かってるよ……」



・ツバキ達と別れてからのリリアとシルバーの会話

リリア「良かったのぅ、シルバー。しかし、連絡先を聞けなかったのは、ちと残念じゃったな」
シルバー「それは仕方ありません。むしろ、邪険にされなかっただけ、寛大な対応です」
リリア「何じゃ、卑屈なことを。家の方針じゃと言っておったじゃろう?」
シルバー「……それだけ、俺は酷いことをしてしまったんです」
リリア「………そうか。ま、それはこれから挽回していくしかあるまい」
シルバー「はい」
リリア「ま、ジャミルを経由して情報を貰えば良いじゃろう。同じ学園に、サニワ殿と縁を持つ相手が居るのは僥倖じゃ」
シルバー「………………」
リリア「ん? シルバー?」
シルバー「………ジャミルとは、どういう関係なのでしょうか」
リリア「幼馴染みと言っておったな。ま、特別な仲なら、目の前で髪留めを付けたりはせんじゃろう」
シルバー「………そう、ですね」
リリア「案ずるな、おぬしはいい男じゃよ」



・茨の谷に帰ってから

シルバー「セベク、ありがとう。お前がくれた果実酒のおかげで、あの人に会えた」
セベク「ふん、東方の国に行ったのは無駄ではなかったようだな。きちんと礼は出来たんだろうな?」
シルバー「ああ、もちろんだ」
セベク「なら良い。さっさと若様に視察の結果をお伝えしてこい」
シルバー「分かっている。………本当にありがとう」



・茨の谷に帰ってから 2

リリア「ただいま帰ったぞ!」
マレウス「お帰り、リリア。それで、夢の主には会えたのか?」
リリア「おうとも。なかなかの美人じゃったぞ!」
マレウス「そう言えば、性別については聞いていなかったな。夢の主は女性だったのか?」
リリア「いや、正直分からん。どちらにも見える感じじゃ。じゃが、本人に聞くわけにもいかんしな」
マレウス「確かに、性別を尋ねるのは失礼だな」
リリア「それに、どうやらシルバーが夢の主にほの字のようでな。そのような相手に、悪印象を持たれるわけにはいかんじゃろう」
マレウス「……ほう?」
リリア「シルバー本人は気付いているのかいないのか……。まあ、夢の主の幼馴染みに悋気を抱いているようじゃったし、そのうち気付くじゃろ」
マレウス「夢の主の名は聞いたのか? それと、幼馴染みというのは?」
リリア「聞いて驚け、ツバキ・サニワ・・・殿というそうじゃ」
マレウス「…………僕たちが考えていたより、重要人物のようだな」
リリア「そして幼馴染みなんじゃが、ナイトレイブンカレッジの1年生におった」
マレウス「……ほう? それは誰だ?」
リリア「ジャミル・バイパーじゃ」
マレウス「バイパー? ……あいつはシルバーの話を聞いていたはずだ。夢の主とサニワを繋げることは出来なかったのか?」
リリア「確証がなかった、とのことじゃ。それに、サニワ殿は例の果実酒の在処を知っているような人物じゃぞ? そう簡単に教えられるはずもない。まして、うちの学園の生徒には、な」
マレウス「…………確かにな」
リリア「ま、ジャミルの幼馴染みということは、カリムとも幼馴染みである可能性が高い。幸いにもわしはカリムと同じ部活。情報を得る機会はあるじゃろう。さりげなく水を向けてみよう」
マレウス「ああ、頼んだぞ、リリア」
リリア「くふふ、任せておけ」



・謝礼開封後

ツバキ「何か、予想外に物凄いものばかりだった気がする……」
ジャミル「品物自体も最上級のものばかりだったが、それに掛けられた加護がやばかったな……」
ツバキ「魔力から察するに、合計四人……。そのうち二人はリリア・ヴァンルージュとシルバーで間違いない」
ジャミル「一人は分からないが……。残りの一人は完全にマレウス・ドラコニアだよな……」
ツバキ「多分、私の仕事をある程度察して掛けてくれた祝福だと思うんだが……。これ、本当に貰って良いものなのか?」
ジャミル「まぁ……良いんじゃ、ないか………?」
ツバキ「あまりにも自信が無さ過ぎる。やっぱり普通に報酬貰った方が安いじゃないか。過剰報酬が過ぎる。どうする、これ」
ジャミル「まぁ、持ってて困るものではないのだし、お守り代わりに使うのが良いんじゃないか……?」
ツバキ「正直に言うなら君に持たせたい」
ジャミル「絶対に断る。そもそも君のものだろうが」
ツバキ「流石にしないよ。心の底からそう思っているだけで」



・夢の話

ツバキ「…………そう言えばさ」
ジャミル「どうした?」
ツバキ「君もカリムも、何も聞かないんだな」
ジャミル「………ああ、夢のことか?」
ツバキ「ああ。気にならないのかなって」
ジャミル「………特には?」
ツバキ「…………そっか」
ジャミル「夢に見るくらいに、俺達に話したいことだったのか?」
ツバキ「そうだな……。いつかは、聞いて欲しいことだよ」
ジャミル「ふぅん……」
ツバキ「だから、いつか話せる覚悟が出来たら、聞いて欲しいんだ」
ジャミル「分かった。俺も覚悟しておくよ」
ツバキ「…………ありがとう、ジャミル」
ジャミル「ま、気長に待つよ。君も、無理はしなくて良い」
ツバキ「うーん……。あんまり待たせたくないかな。事故とはいえ、君より先に誰かに知られてしまうとは思っていなかったから」
ジャミル「はは、確かにな。でも、きちんと覚悟が出来てからにしろよ?」
ツバキ「ああ、そうさせてもらう」



・夢の話 2

シルバー(そう言えば、夢渡りをして以来、あの夢には迷い込んでいないな……)
シルバー(迷い込まないに越したことはないが、俺のせいで、封じ込めているという可能性もある)
シルバー(そうでなければ、良いのだが……)
シルバー(いや、このままでは駄目だ。今は運よく迷い込んでいないが、いつまた迷い込んでしまうか分からない)
シルバー(そんなことになれば、次こそ本当に、あの夢を閉ざしてしまうかもしれない)
シルバー(それはきっと、ツバキ殿にとって深い傷になる)
シルバー(何か方法がないか、きちんと調べておかなければ……)




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