ジャミルの友達が姐さんだったら 7
リリア達と別れて、二人の背を見送ったツバキが真剣な顔で黙り込む。口元に指を掛け、何事かを考え込んでいるようだった。
「どうした、ツバキ。何か気がかりでも?」
「………気のせい、だと思いたいんだが」
リリア・ヴァンルージュ。おそらく齢五百をゆうに超えるだろう妖精族。人には想像も付かないような永きを生きてきた、人為らざるもの。その背には、数え切れないほどの縁が結ばれていた。人生を百年ほどで終わらせる人間には背負えないほどの、たくさんの縁だ。その中に、いくつか奇妙なものが見えた気がして、ツバキは難しい顔をしていたのだ。
東方の国の人間は、様々な血が混じっている。神様だったり、妖だったり、他国では通常ならば混じらない血が混じっていることが多々あった。それ故か、何かしら特別な力を宿している者達も多数存在している。清庭家の審神者としての力も、それによる特異体質の一種だった。
清庭家の看破の目。これは神を見定めることに特化した力である。ツバキは特に血に根ざしたその力が強かったために、一般的な審神者よりも見えるものが多い。けれど、すべてを見通すことは出来ない。ツバキの瞳は千里眼ではないのだ。
また、“縁”に関しては、神主や巫女に一家言あった。繋がる先を見つけたり、その縁の善し悪しを量ったりするのは、彼等の領分である。ツバキの出る幕ではない。故にツバキは、リリアの隠し事を、完全に見抜くことは出来なかった。
「…………彼等が、後悔の無い選択をすることを祈るよ」
白い息と共に吐き出された言葉は、東方の国の冷たい空気の中に溶けて消えた。