ジャミルの友達が姐さんだったら 6
「おい、ツバキ。とんでもないことになったぞ」
「何がだ?」
「最近、君の夢に迷い込んでいた奴がいただろう?」
「ああ。瞳が美しい銀髪の生徒だろう? 彼が何か?」
「実は彼、茨の谷の次期王の従者でな……」
「あ、先が読めてしまったな」
「おそらく、君の予想通りなんだが、続けさせてもらう」
「聞きたくないなぁ」
「どうやらジンジャの情報から、夢渡りをした先が東方の国であることを推測したらしい。ついにマレウス・ドラコニア率いるディアソムニアまでもが東方の国出身者の捜索に乗り出した」
「マジか………」
「彼は自分の従者を手助けしてくれた君に感謝しているようだ。利用しようだとか、そういったものは感じられない。しかし、彼が興味を示したことで、前々から興味を抱いていた奴らがさらに熱を上げてしまってな……」
「最近、我が国が開国したのは間違いだったんじゃないかと思えてきたな………」
「…………逃げ切る自信は?」
「あるにはある。が、その手段を取ったときのメリットがない。なので、現状維持だ。もし私の存在に行き着いたときには、彼らにはいくつかの契約を結んでもらう」
「まぁ、それが無難か」
「ああ」
「しかし、ウィンターホリデー直前だったことに感謝だな。マレウス先輩は置いておいて、他の厄介な連中も、休みの間に少しは熱が冷めるだろう」
「ああ。大袈裟に対策を取ると逆に怪しまれる。これについては本当にさじ加減が難しい……。冷却期間があって良かったよ」
「まぁ、そこはうまくやるしかないだろう。それより、ウィンターホリデーにそっちに行ける許可が下りた。君のスケジュールを確認したいんだが……」
「お、やった」
「ああ。面倒な話は一旦置いておこう」
「ずっと放っておきたいなぁ……」
「俺もだよ」
こんなことになるとは思っていなかったツバキは、何も考えず、「美味しいから飲んでみて」と天上の飲み物を分け与えてしまっていた。それも、幸運をもたらす効力のある果実酒を。
その果実酒は、どこでどのように効力を発揮するか分からない。効力は間違いないものの、完全に神の采配によるのだ。出来れば、自分とは全く関わりのないことで銀色が眩しい彼に幸運が訪れることを願うばかりである。