ジャミルの友達が姐さんだったら 4.5
ナイトレイブンカレッジでは、東方の国ブームが巻き起こっていた。つい最近まで鎖国が続いており、実情もまだはっきりとしていない極東の国。世界で唯一、神代が続いている神秘の島。そんな稀有な島国の、他の誰も知らない情報を得ようと躍起になっているのが、最近のカレッジ生達だった。
現地に乗り込もうと考える生徒もいたが、実際問題、簡単なことではない。入国検査が厳しいと言われる東方の国に、未成年の子供だけで入国するのは難しいのだ。国によっては渡航制限が掛けられている国もあるくらいである。不可能ではないが、子供だけでは制約が多すぎるのだ。
そんな中、実際に東方の国に足を踏み入れたものがいた。ハーツラビュルの2年生である。
見慣れない街並み。店先の珍しい品々。祖国とは違う空気感に、その生徒は胸を高鳴らせていた。
「お?」
その青年が足を止めたのは骨董品店の店先だった。店先に並ぶ硝子細工の置物に目を引かれ、思わず立ち止まってしまったのだ。
「蝶と、薔薇……?」
古そうではあったが、劣化はあまり見られない。薔薇の花に蝶が止まったデザインで、色と細工が美しい。値段に目を向けると、自分にも手が届くものだった。
一点もののようであるし、これは自分自身へのお土産にしよう。そう思って、青年は骨董品店の中に入っていった。