ジャミルの友達が姐さんだったら 4.5
「あー! ツバキちゃん、またナイトレイブンカレッジに行ってたでしょう!」
ナイトレイブンカレッジで放課後を過ごしたツバキは、ロイヤルソードアカデミーに帰ってきたところだった。こっそりと帰還したはずだったのだが、帰還地点の付近にネージュが居たようだった。ぷく、と頬を膨らませたネージュが、不満げな顔でツバキに声を掛けてきた。
「もう、彼等ばっかりずるいよ! ツバキちゃんはロイヤルソードアカデミーの生徒なんだよ? たまには僕たちとも遊ぼうよ!」
クラスメイトのネージュは、ツバキと友人になりたいようだった。ツバキも彼のことは嫌いではないけれど、積極的に関わりたい人間ではなかった。相容れない部分が多すぎて、お互いに傷付いてしまうことが明白であるが故に。
彼は優しすぎるのだ。ツバキと共に歩むには。
ネージュは誰かを救うために、誰かを斬り捨てる事が出来ない。すべてを救おうとする、
(眩しいなぁ……)
ツバキが目を細めて苦笑する。
「遊びに行っているわけではないよ。私が家の仕事を手伝っていることは前に言っただろう?」
「………そう言えば、アカデミーを卒業したら、お家を継ぐんだっけ」
「ああ。……賢者の島は霊脈の上にあるだろう? だから、その魔力を求めて渡って来るものも多いんだ。その中には、人に悪さをするものもいる」
「そういう危ない奴らが、ナイトレイブンカレッジに?」
「ああ。だから、ナイトレイブンカレッジに行っていたんだよ。だから、君達を蔑ろにしている訳ではないんだ」
「……そっか。何も知らずに、わがまま言ってごめんね?」
「構わないよ。また都合がついたら、みんなで遊びに行けたらいいよな」
「うん、そうだね。でも、無理はしないでね?」
「ありがとう。リュバンシェも忙しいんだから、体調に気をつけてくれ」
「はーい」
事情があってのことだと理解したネージュは、にこにこと笑っている。人懐っこい、かわいらしい笑みだった。
ツバキの話は、事実ではある。ナイトレイブンカレッジで起こった事件を解決しているのは事実だ。けれど、それがすべてではない。ずっと光に包まれていると、焼けただれてしまいそうで、苦しいのだ。だから、そういうもの全部を理解してくれるジャミルのそばが心地よくて、つい楽な方に逃げてしまうのだ。
(すまない、リュバンシェ。でも、苦しんだ)