ジャミルの友達が姐さんだったら 番外編 原作邂逅 2






「サニワと言ったか? お前から僕の魔力を感じるが、向こうの世界の僕と仲が良いのか?」


 そう言って声を掛けてきたのは、ツバキ達とは異なる世界に生きるマレウス・ドラコニアだ。3年生との合同授業で、グループワークを行っている最中のことだった。一人残ったマレウスを見かねて、ツバキとジャミルが一緒にどうかと声を掛けたことで、彼等は三人で一つのグループとして資料作成をしていた。その質問が落とされたのは、資料制作が一段落付いたときのことだ。
 資料を整えていたツバキは一瞬きょとんと目を瞬かせ、それから納得したように頷いた。こちらの世界に来たときに持っていた持ち物の中に、シルバーを助けたときにマレウスから贈られた万年筆があったのだ。それにはマレウスの加護が掛けられており、こちらの世界のマレウスは、その魔力を感じ取ったのだろう。


「仲が良いかどうかは分かりません。至って普通の先輩後輩だと思います。でも、顔を合わせれば雑談くらいはしますよ」


 なかなか肝の据わった後輩だな、と近くに座っていたグループの三年生が内心で驚く。そもそも、同学年の生徒達ですら敬遠するマレウスを相手に、平然と会話をしている時点で相当な度胸の持ち主だ。ロイヤルソードアカデミーのくせに、と苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。


「その割には、僕の加護を受けているようだが」
「迷子になっていたシルバーを助けたお礼に貰ったんです。ちょっと迷子の規模がでかくて、殿下でも連れ戻すのに苦労しそうな場所に居まして。そこに偶然居合わせたのが私だったんです」
「僕でも連れ戻すのに苦労しそうな場所、とは?」
「異界です」


 ツバキの言葉に、マレウスが目を見開いた。
 ツバキの隣で、ジャミルが「言っていいのか?」と視線で問いかける。「どうせすぐ帰るだろう」とツバキが視線で答えると、彼は納得したように頷いた。


「それは……確かに僕でも苦労しただろう。そちらのシルバーが世話になったな」
「いえ、大したことではないので。お礼も十分貰いましたし」
「確かに、めちゃくちゃ貰ってたよな……」


 ちょっと遠い目をして宙を見つめるジャミルとツバキに、教室内は静まりかえった。
 「マレウス・ドラコニアのお気に入りとか、何なんだ、このロイヤルソードアカデミー生は!!!」と叫びたかったのを、何とか我慢した生徒達だった。



***



「あ、シュラウド先輩、レオナ殿下。お疲れ様です」
「こんにちは、イデア先輩、レオナ先輩」


 午後一番の授業は、飛行術であった。3年生との合同授業で、C組に振り分けられたレオナとイデアの姿を見掛け、ツバキとジャミルが駆け寄った。


「お、あ、じゃ、ジャミル氏、ツバキ氏。お、乙……」
「お前らはE組に振り分けられたのか」


 寮長陣とも顔見知りかよ、と2-Eの生徒達が天を仰ぐ。本当にこいつはロイヤルソードアカデミーに通っているのか、とツバキに疑いの目を向ける。
 けれど、彼等がこの学園に現れたとき、確かに着ていたのはロイヤルソードアカデミーの真っ白な制服だ。やたらめったらキラキラと輝く、王子様のような出で立ち。魔法石だって、ナイトレイブンカレッジのものとは異なるものだ。ツバキは正真正銘、ロイヤルソードアカデミーの生徒だろう。だというのに、何故こうもライバル校に顔見知りが多いのか。


「ねぇ、あなた、ツバキ・サニワで合っていたかしら?」
「はい。合っていますよ」
「ロイヤルソードアカデミーの生徒よね? 随分とナイトレイブンカレッジに馴染んでいるようだけど」
「ジャミルとカリムを通して知り合ったんです」
「ふぅん……?」


 他の生徒と同じように疑問を持ったこちらの世界のヴィルが、ツバキに疑問を投げかける。ツバキは多くは語らなかったが、その言葉に誰も反論や補足をしなかったので、その言葉で納得して引き下がる。他にも色々聞きたいことはあったが、もうすぐ授業が始まってしまう。ペアの申し出をしようかとも考えたが、相手の飛行術の実力は未知数だ。足を引っ張られては敵わない。さて、どうしたものか、と思考を巡らせていると、ヴィルが言葉を続ける前に、レオナがツバキに声を掛けた。


「サニワ。お前、飛行術はどのくらい出来る?」
「マジフト部と競えるくらいですかね」
「なら、俺と組め。それが本当なら、楽が出来そうだ」


 あ、取られた、と思わず舌打ちをしそうになる。ジャミルはイデアにペアの申し出をしており、了承を受けているところだった。欲しい情報を持っていそうな相手のペアが埋まってしまい、ヴィルは小さくため息をついた。
 マジフト部と競えるくらい、と言ってのけた言葉通り、ツバキはその日の課題をあっさりとクリアして、自由時間を楽しんでいる。急上昇、急降下、急停止もお手の物。マジフト選手顔負けに、箒を自由に操っていた。


「…………あの子、凄いわね」
「あの方、錬金術でも高評価を得ていましたよ」
「高純度のルビーを生成して、クルーウェル先生を驚かせていました」
「…………とんでもないわね」


 三年生に一人欠席者がいたために、リドルとジェイドと三人で課題をこなすこととなったヴィルが、空を見上げる。ジャミルと共になかなか課題をクリアできないイデアを励ますツバキを見て、ヴィルはそっとため息をついた。まるで完全無欠の主人公ヒーローのような子だと、そう思いながら。



***



「なぁ、ツバキだっけ?」


 ツバキが不意に一人になったとき、声を掛けてきたのは異なる世界のカリムだった。中庭のベンチに腰掛けるツバキの隣に、カリムも腰を下ろした。護衛のはずのジャミルはどうしたのだろう、と首を傾げていると、カリムが伺うようにツバキを見つめた。


「なぁ、ジャミルと友達なんだって?」
「ん? ああ、そうだが。それが何か?」
「んん、いや、こっちのジャミルとちょっと違う気がしてさ。ジャミルは友達の前だとあんな感じなんだなって」


 痛みを堪えるような、寂しさに締め付けられているような、苦しげな表情だった。口元は笑みを浮かべていたけれど、取り繕ったものだ。カリムには似合わない、そんな風に思わせる顔だった。


「そっちのオレも、何か、オレよりジャミルと仲が良い気がしてさ。オレと何が違うのかなって、気になったんだ」
「世界まるごと違うだろう。それに、そちらには私が居ないんだ。私が存在するからこそあった出来事が無くて。君とジャミル二人きりだからこそ遭遇した運命があったはずだ。何もかもが違う。君と、こちらのカリムを比べること自体が間違っている」


 こちらの世界のカリムとジャミルは、ツバキを知らない人間だと言った。会ったこともない人物だと。この世界のツバキは、熱砂の国以外の場所に留学したのだろう。
 故にツバキは、こちらの彼等を知らない。自分と関わったことで変わったものがあるだろう。彼等二人だけで過ごした日々で、育まれたものがあるだろう。だから、ツバキは二つの世界を比べる事は出来ないと考えている。それぞれに良かったと思えるものがあって、それぞれに羨むようなものがあるはずだ。……ジャミルが、神々に目を付けられていない世界線があるという現実が、ツバキにとって泣きたくなるほど希望に溢れた事実であるように。
 隣の芝生は青い、という言葉がある。きっとこちらのカリムの目には、ツバキたちの住む世界が、美しく彩られて見えているのだろう。自分たちの仲よりも、ツバキたち三人の方が、心の距離が近く見えている。


「…………オレ、ずっと、ジャミルに我慢させてきてたんだ」


 俯いたカリムが零した言葉は、後悔の念に濡れていた。
 我慢、というものに、ツバキは覚えがある。出会った当初のジャミルは、色々なものに縛り付けられていた。家とか立場とか、そう言ったしがらみに。
 こちらのジャミルはそういったものから逃れることが出来たけれど、また違った鎖で雁字搦めになっている。彼はつくづく、自分の手には負えないものに縛られる運命にあるようだった。その事実に、ツバキは胸が締め付けられる。


「悔しいって思うこともないくらいに、あいつは全部オレに譲ってた。そして、オレはそのことに全く気付くことが出来なかったんだ」


 嘆くカリムが、かつての自分と重なって見えた。何故出会ってしまったのかと、何故ジャミルだったのかと、何度自分を呪ったか分からない。彼でなくても良かっただろうと、何度世界を恨んだことだろう。それは遠い過去になっているけれど、あの絶望は、今でもはっきりと思い出せる。


「そっちのオレは、それに気付けたのか? だから、友達になれたのか? それとも、お前が気付かせてくれたから?」


 縋るような目で、カリムがツバキを見上げる。宝石のような赤い瞳が、涙で潤んでキラキラと輝いていた。友を想う、美しい心を写し取ったかのように見えた。
 「初めまして」の言葉を交わしたばかりの頃のジャミルは、アジーム家とバイパー家で世界を構築しているようだった。本物の世界はもっと広大であると分かっていて、それでも彼はそこには行けないのだと信じていた。自分には関係のないものだと、幼いながらに時分の立場というものを理解し始めていたのだ。彼の背中にはどこにだって飛んでいける翼があるというのに。
 けれど、当時の彼の翼の上に重しを置かれていた。大地を蹴る為の爪を無理矢理抑え付けられて、自身に繋がれた鎖を外そうと必死になっていた。けれど、ツバキにはそれをどうすることも出来なかった。幼いジャミルと同じように、ツバキもまた幼かったから。
 けれど、少しでもその苦しさを忘れて欲しくて、ツバキは祖国に彼を招いたのだ。それが、ツバキにとっての絶望の始まりで、ジャミルにとっての悲劇の始まりだとも知らずに。


「…………違う。そんな風に君達が追い詰められる前に、私が全てを壊してしまったんだ」
「壊した……?」
「私は、取り返しの付かないことをした。彼が私と出会わなければ、負わずに済んだ重荷を背負うことになってしまったんだ」
「重荷……? 出会わなければって、そんなこと……」
「そうだな。彼はきっと、そんな風には思っていないだろう」


 ツバキだって、そんな風には思いたくない。けれど、ふとしたときに、そんな風に考えてしまうのだ。彼が自分と出会わなければ、どのような生き方をしていたのだろう、と。


「けれど、私が背負わせてしまった重荷は、たった一人に背負わせるにはあまりにも重すぎて、アジームの当主が情けを掛ける程のものなんだ。だから、私達のジャミルは、そちらの彼よりも少しだけ自由なのかも知れない」


 彼に後悔の無いように、日々を過ごさせるように。そう言って、まだ幼いジャミルを見つめたカリムの父の目を、ツバキは忘れることが出来ない。憐憫と憤りで染まった瞳は、けれどツバキには向けないようにしてくれていた。厳しくて、優しくて、懐の広い人だった。
 息子が過酷な運命を背負うことになって、嘆き悲しんだジャミルの両親の顔を、ツバキは決して忘れてはならない。それは己が一生抱えていかなければならない罪なのだと、胸の奥に刻みつけている。


「こちらのジャミルと、そちらのジャミルでは、背負っている苦しみが違う。君には眩しく見えているものの裏側は、とても美しいとは言い難いよ」
「そっか……」


 どうして砂漠で生きる子供達は、平穏に生きられないのだろう。世界はこんなにもあたたかくて、美しいのに。


「ままならないもんだなぁ……」
「世界は理不尽で、残酷だよ。だからこそ、泥の中に咲き誇る花が美しく見えるんだろうさ」


 円熟の境地に至ったような物言いに、カリムはツバキの顔を見つめる。出会ったばかりのカリムでは、その顔から読み取れるものはない。けれど、たくさんの傷を抱え、それでも笑ってみせるツバキは美しかった。それこそ、ツバキの言う泥の中で咲き誇る花のように。



***



「…………何か、こちらの世界、神々かれらが遠くに感じるんだよなぁ」


 ツバキがそんなことを呟いたのは、全校集会のために講堂に向かう道すがらのことだった。窓の外の、遙か彼方を見つめながら落とされた言葉の意味を、彼女と同じ世界を生きる生徒達は正しく理解した。詳しく、とジャミルが囁くと、ツバキは歩みを止めずに続けた。


「地上との結びつきが、殆ど感じられないんだ。あちらの世界は、殆どの国は手を離されてしまったけれど、完全に絶たれた訳ではない。繫がりはまだ残っている。けれど、こちらの世界は、その繋がりすらも存在しないんだ」
「えっ? じゃあつまり、東方の国も、彼等の手を離れているって事か?」
「おそらく」


 カリムの問いかけに肯定すると、カリムはジャミルと顔を見合わせて絶句する。少しばかり異なる世界であることは分かっていたけれど、あまりにも大きな違いが見つかって、驚きを隠せない。


「それって、何か問題あるの? こっちの世界のことじゃん。オレらに関係ある?」
「特に問題があるわけではないんだが、神と対話する者わたしが珍しいのか、見られているようなんだよな」
「「「えっ」」」
「だから、挨拶くらいはしないと、と思うんだが……。ここまで繫がりが希薄だと、大々的に事を起こさないといけなくてな……」
「…………そんなん分かるの?」
「焦点を当てられていればな」
「マジかぁ……」


 フロイドが、口元を引きつらせる。先程ツバキが見つめていた景色に目を向けるが、そこにはただ青空が広がっているだけだった。視線なんて、ちっとも感じられない。他の面々も、どこからどのように見られているのか、全く分からなかった。


「…………これ、フラグにならないよな?」
「「「………………」」」


 苦笑交じりのツバキの問いかけに、答えられる者はいなかった。



***



 フラグは、いとも容易く回収されることとなった。全校集会のために集まった講堂に、ソレ・・は降りてきたのである。


「全員顔を伏せろ!」


 集会も終盤に差し掛かった頃、険しい顔をしたツバキが叫んだ。何事かと、講堂にざわめきが走る。
 ツバキの叫び声に続いて、リリアが天井を見上げた。授業終わりをリリアに捕獲され、集会に参加していたマレウスも同じように宙を睨んでいる。


「リリア……」
「ああ。何か来たな……」


 マレウス達の反応に、彼等の周りに居た生徒達は顔を青冷めさせた。彼等二人が揃って睨み付ける相手など、ただ者ではない。何か恐ろしいものが襲来するのだと、ガタガタと身体が震えている。


「目を閉じ、口を閉ざせ! 死にたくないなら跪いて頭を垂れろ!!!」


 最初に従ったのは、ツバキの世界のジャミルとカリムだった。レオナがそれに続く。
 異なる世界とはいえ、レオナがそのような姿勢を取ることに、生徒達は驚いた。こちらの世界のレオナ自身も、同じように驚いている。
 しかし、ツバキと世界を同じくする者達が、次々に膝をつき、目を閉じていく様を見て、こちらの世界の幾人かもそれに従う。反発しようとする者もいたが、妖精族が率先して従うものだから、ただ事ではないと判断する者も多かった。
 ソレがすぐ傍に降り立つまでに半数がツバキの言葉に従い、膝をついて目を閉じていた。そうしていなかったものは、ソレに“不敬”だと断じられ、地面に縫い付けられることとなった。口は閉じた形になったまま動かすことも出来ず、目を強制的に閉じられる。床に頭をこすりつけるような形で動きを制限された生徒達は、内心でパニックになっていた。けれど、騒ぐことも出来ず、身じろぎすらもかなわない。そのような状態で、すぐ傍に降り立った圧倒的な存在に、ただただ恐怖することしか出来なかった。


「初めまして、黎明の国の神よ。私は神意を汲む者。尊きお方と語らう者。姓を清庭、名を椿と申す」


 凜とした、美しい声が講堂に響く。身体に染み渡るような、心を落ち着ける声だった。その声に答えるように、そよ風が吹いた。


「本来ならばこちらから伺わねばならないところを、わざわざご足労頂き、感謝致します」


 また、そよ風が吹く。あたたかくて、柔らかい風だった。春の陽気を思わせる、優しさだけで満ちたもの。そんな風と、ツバキは語らっている。
 ああ、これがこの神の声なのか。ツバキの声に耳を傾けていたジャミルが、今度は風の音に耳を澄ませる。何を言っているのかは分からないけれど、この神は人に好意的なようだった。柔らかな風に頬を撫でられ、ジャミルの口元が緩んだ。


「―――――ジャミル」


 そっと、ツバキがジャミルの肩に手を添える。何かしてしまったか、と肝が冷える思いだったが、あたたかい風に髪を撫でられる。粗相を犯したわけではなさそうで、僅かにほっとした。


「黒曜石をお望みだ。名乗りはいらない。顔を上げて、挨拶を」


 ツバキの言葉に、ジャミルはゆっくりと顔を上げる。そっと目を開けると、風を纏った光の塊が見えた。それが神そのものなのか、それに類するものなのかは分からない。けれど、自分たちとは次元の違うものが自分を見つめている事だけは分かった。


「お初にお目にかかります。お望みの黒曜石です」


 頬や髪を撫でる風は、この神の腕なのだろうか。髪を後ろに払われ、顎を持ち上げられる。光の塊がぐっと近づいて、柔らかい光と言えど、少し眩しい。けれど、瞳を見せることを望まれており、目を閉じることは出来ない。眩しいのを我慢して目を開けていると、ふいに光が離れていった。


「お褒めの言葉を頂いた。感謝を」
「恐縮でございます」


 光の塊を見つめたまま感謝を述べると、もう一度風に頬を撫でられた。そして風を纏った光の神は、来たときと同じように、唐突に講堂を後にした。
 威圧感が消え、講堂の空気が軽くなる。ほっとして力が抜けてしまったジャミルは、その場に座り込んだ。


「尊きお方はお帰りになられた。もう顔を上げても構わない」


 ツバキからの許可の言葉に、カリムがすぐさま顔を上げてジャミルに駆け寄る。


「大丈夫? ウミヘビくん」
「ああ、問題ない」
「いきなりジャミルに声が掛かったから、びっくりしたな~」


 カリムとフロイドに背中を撫でられる。ジャミルの身体は緊張からか、体温を失っていた。
 恐ろしげな神ではなかったとは言え、神威に当てられて体温を失っていたジャミルの身体に、温かみが戻っていく。僅かに強ばっていた表情も、少しずつ緩んでいった。
 カリム達がいつものように話している声を聞いて、ナイトレイブンカレッジの一同が恐る恐る顔を上げる。けれど、いつまで経っても顔を上げられない者達が居た。


「―――――ああ、」


 ―――――不敬と断じられた者は、もう少しそのままかな。
 ツバキの言葉を素直に聞かなかった者達は、それから半日ほど、床に額をこすりつけたままの状態から解かれることはなかった。その中に教師の姿も見受けられたものだから、ツバキはため息をついてしまった。


「………この学園、危機感が欠如していないか?」


 誰も大いなるものの襲来に気付かなかったのか。気付いていて、舐めた態度を取っていたのか。
 どちらにせよ、説明を求められることは確定してしまっている。こちらの世界の人達は必ず道連れにしよう、と心に決めて、動けないものを残して、ツバキたちはさっさと講堂を後にした。




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