80年後少女
「ミカエレ・アスタって、君のことだったんだね。」
第3章「 実力 」
次の授業を行うために、ミカエレのクラスは闘技場に移動していた。
その途中、ミカエレの隣を歩くミストレが突然言ったのだ。
「どんな、憎たらしい顔をした子なんだろうと思ってたけど、案外可愛い子だったんだね。」
ミストレがくすりと笑った。
彼が言うと皮肉にしか聞こえないが、ミカエレに気にした様子はない。
ミカエレはただひたすら前を見つめて、歩いている。
ミカエレは軍帽をかぶりなおした。
ミストレはただ、ふぅ、と息を吐き、こういった。
「顔を隠すのは、顔にコンプレックスを持っているか、表情を悟られないようにするため。」
君はどっちなの?
ミストレの挑発的な言葉にミカエレは言った。
「私はそのどちらでもない。」
小さくだが、はっきりとした言葉にミストレは思わず立ち止った。
何故かはわからない。それは反射というべきだった。
ただ、自然と足が止まったのだ。
「・・・?」
ミストレは自分の足を見つめてから、小さく一歩を踏み出した。
歩ける。ただの勘違いだろう。
そう思って、彼は小さくなったミカエレの背中を追って歩いた。
***
ドーム状の広大な闘技場。
闘技場の最上階にある、職員用観覧席ではバウゼンが演習の様子を見守っている。
実践演習はすでに始まっており、すでに何人かが戦闘を終えている。
これといって目を見張る動きをする者はいない。
先ほどのディベートで、バウゼンの目は肥えてしまっていた。
すると、バウゼンの耳に、ある指令が入った。
「ミカエレ・アスタにミストレーネ・カルス以外を一斉に戦わせろ。」
野太く、よく通る声。
その声の主はヒビキであった。
***
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