80年後少女






遡ること80年。
そのときにも、やはり桜は咲いていた。







プロローグ「 出会うべくして 」







東京近郊にある一際大きな敷地地面積を誇る巨大な学校。
外の晴れやかな空に舞い散る桜とは真逆に、入学式は厳かに行われた。


小等部に通っていた少年少女らが、エスカレータ式に中等部へと進学した。

けれど、そこはただの学校ではない。
青空の下ですら、異様な雰囲気をかもし出すその施設の名は王牙学園。


士官学校は15才以上でなければ受け入れられない。
その更に下の世代から徹底した帝王学を学ばせるために作られたのが、この王牙学園である。


濃緑色の軍服を着た学生たちは、ただまっすぐに前を見つめていた。
今、自分たちがここにいることが誇りであるように、直立不動の姿勢を保っていた。

その中で、一際目立つ少年少女がいた。

一人は額に奇妙な紋章を持つ少年。
もう一人は無造作に伸ばしたプラチナブロンドの髪の少女。

二人は壁にかかった鬼を思わせるエンブレムを見つめている。
否、その先を見据えているかのような目をしていた。


その先にあるであろう未来を見つめていたのか否か。
二人の真意をするものは、いない。





***





入学式からの帰り道。
日は高くなり、もう西に傾きかけていた。


日の光に照らされて、少女の細い髪はきらめき揺れる。
少年は自分が王であるかのように、気高く、堂々と歩いていた。

二人の少年少女がお互いの存在を視認した。

少年は少女の柔らかい髪で隠れた燃え盛る炎のような真紅の瞳に見せられた。

少女は少年のその額の異形な紋章に目を奪われた。


それから、視線という名の糸は絡み合い、一瞬にしてぷつりと切れた。


二人は確信したのだ。
今は出会い時ではない、と。
出会うべくして出会う日が来る、と。


少年と少女はお互いわきをとおり、堂々と歩んでいった。



二人はいつか、出会うべくして出会う。










continue.




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