風丸夢






「風丸君!これ・・・。受け取ってくれる?」


風丸は笑顔でプレゼントを受け取った。
ありがとう、といって。

けれど、その少女が視界から消えた瞬間に、氷のような冷たいまなざしで手の中の箱を見た。
ぐしゃり、と握りつぶす。
そのままゴミ箱に入れる。
ゴミ箱の中は風丸宛のプレゼントや手紙でいっぱいだ。


「・・・風丸。かわいそうとか思わないわけ?」


松野が苦笑いしながら尋ねた。
風丸はにっこりと笑って言った。


「思うわけないじゃないか。」


俺の性格、知ってるだろ?
風丸はうっすらと開けた目で松野を見つめる。
笑顔は崩れていない。
けれど、目が笑っていない。

松野は一瞬、恐怖で顔をゆがめ、ごくりと小さく喉を鳴らす。
しかし、すぐに苦笑いしていった。


「君って、ホント、最低だよね。」


それを聞いて、風丸は声を出して笑った。


「最高のほめ言葉、どうも。」


そう言って、くすくすと笑う。
やはり目は笑っていない。





***





「この外道!なんてことしやがる!!」


悲痛な叫び声と高らかに笑う声。
二つの声が廊下から聞こえてきた。


「私、何度も行ったよねぇ?好きでもない奴に言い寄られるの・・・。」


大嫌いって。
美しい少女がそう言って、ビリビリに破かれた手紙を踏み付けた。


「次は君の頭を踏んであげる。」


そう言って、彼女は教室に入ってきた。
丁度風丸と目が合う。


「やぁ、外道丸君。」


少女が笑顔で言った。
風丸も笑顔で返す。


「相変わらず酷いことするな。」


風丸は苦笑気味に言った。
すると少女はにやりと笑う。


「君ほどじゃないよ。だって私は、せめてもの救いで目の前で破いてやってるんだから。」


すると風丸は侵害だとばかりに言った。


「ばれなければ、相手は幸せだろ?」


風丸は目を細めて笑う。
少女も同じように笑う。


「君とはとても気が合いそうだよ。」


君のことなら好きになれるかもしれない。
少女の言葉に風丸は目を見開く。
それから、どす黒くも美しい笑みを浮かべ、こういった。


「じゃあ、俺は頑張ってお前を落としてみせるよ。」


今度は少女が目を見開く。
少女も風丸と同じような笑みで笑う。


「君とだったら、きっと、すばらしいカップルになれると思うよ。」


期待してるから。
少女はそう言って、自分の席に座る。

しばらくの沈黙ののち、松野が言った。


「君らが付き合ったら、ホント、最恐のカップルが誕生するよ。」


その言葉に風丸は笑った。
少女にも聞こえていたのか、可笑しそうに笑っている。



次の日、双方に果たし状が送られてきたのは言うまでもない。





END




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