最強少女
憧れてよかった。
第十六章 証明しようぜ
「あ~・・・。冷蔵庫すっからかん。明日は休業っすね、旦那。」
「ああ。」
零と円堂は雷雷軒で行われた宴会の後片付けをしていた。
昨年の優勝校、帝国はシード権を持っているらしく、全国大会にも出場可能だ。
円堂は大いに喜んでいたが、零は複雑な気分だった。
(私だけ未来を知ってるなんて、フェアじゃない・・・。)
零は肩をすくめた。
彼女の存在はこの世界ではインベーダーのような存在である。
不法に侵入してきて、世界をかき回す厄介な生き物。
謎の物体である。
(影山がこの世界を束縛してるのがどうしても許せねぇが、あのサッカーへの執着心は本物だ。何故、憎むことでしか愛せない・・・。)
憎しみさえなければ、零は鬼道たちのように彼について行っただろう。
それくらいに彼はサッカーを愛している。
(あ、違う・・・。支配してるのは影山じゃねぇ・・・。)
と、その時、そんな試行を打ち破るかのようにがらりと音を立てて、扉が開いた。
「すいませんねぇ、今日はもう・・・。」
そこまでいって、響木は言葉を切った。
「浮島・・・。」
浮島と呼ばれた男は席に座りこういった。
「雷門中が帝国学園を倒したって聞いてな。なんかお前の顔が見たくなったんだ。」
響木がそうか、と呟いて円堂を見た。
「こいつがそのサッカー部のキャプテン、円堂守だ。」
浮島は円堂という名、そして、その存在に驚いた。
「イナズマイレブン・・・。」
零が呟くと、円堂は驚いた。
響木がうなずくと、浮島の隣にかけていく。
「俺!じーちゃんとイナズマイレブンの話を知ってから、ずっと憧れてたんです!伝説のイナズマイレブンに。」
「・・・知ってるのか?イナズマイレブンの悲劇は・・・。」
円堂だけでなく、零もうなずく。
浮島はやっぱり来るんじゃなかった、と、それだけを呟いて席をたった。
(逃げるって、そんなに楽しいのかねぇ・・・。)
***
二人は浮島を追っていった、円堂を追った。
「旦那。私、イナズマイレブンが全員そろったら言いたいことがあります。」
多分、
その時はブチ切れてますけど。
怒りをはらんだ声色に響木は苦笑する。
小さく肩をすくめ、呟いた。
「そりゃあ、怖そうだな。」
零はその言葉に肩をすくめた。
そこまでドスを利かせた覚えはない。
嘲笑するように苦笑した。
「響木のおじさんは、監督は帰ってきたよ!サッカーに!
一緒にやろうよ、サッカー!あの河川敷でさ!!」
丁度良く、円堂の声が聞こえてきた。
円堂が浮島を説得している。
響木が微笑むように表情を和らげた。
その表情を見て、零は駆け寄り、円堂の肩に手を回した。
「もういっそ、試合してもらおうぜ?」
「お、脅かすなよ・・・。
でも、やりてぇよな!イナズマイレブンと!!」
そういうと、響木はうなずいた。
「ああ。もちろん、そのつもりだ。やるぞ、浮島。」
彼はにっと笑った。
「日曜の朝、イナズマイレブンは河川敷に集合だ。いいな。」
驚く浮島に響木は言った。
「見せてやろうぜ、伝説を。」
***
河川敷。
OBのユニフォームを着たイナズマイレブンが、続々と集まってきた。
「夢みたいだ・・・。イナズマイレブンとサッカーができるなんて。」
「四十年ぶりの伝説復活か。」
「何が飛び出すか、楽しみだなぁ!」
そんな雑談はさておき、イナズマイレブンが全員揃ったところで、さっそく試合は始まった。
OBからのキックオフ。
民山から備流田にボールが回る。
備流田がキックオフシュートを蹴らんと足を振り上げる。
あの鍛え抜かれた肉体から蹴りだされるシュート。
その強力さを想定し、零は身構えた。
しかし、
彼は派手にこけた。
「・・・・は?」
零は思わず、間の抜けた声を出した。
どこか怒りをはらんだ声。
眉間には深いしわが寄っていた。
(・・・ふざけてんのか?)
半田が隙を逃さず、ボールを奪う。
駆け上がってきた豪炎寺のシュート。
場寅仕がヘディングでクリアしようとする。
クリアされると誰もが思った。
しかし、それは自殺点へとつながってしまった。
***
そのあとも、イナズマイレブンはそれらしい動きなどしなかった。
ボールを奪われても、すぐに奪い返せる。
四十年のブランクはここまで酷いものなのだろうか?
***
ここまでしかデータがありませんでした。