最強少女
「今日からうちのクラスに転校してきた、豪風零さんです。」
第二章 何故
零は軽い会釈をした。
こっそりと教室内を見渡す。
(このクラスに知ってるやつは・・・。)
いないか。
そう思った瞬間、ある人物を発見した。
深い緑色の髪に桃色の髪留めを付けた少女。
そう、雷門イレブン、マネージャーの木野秋だ。
(何で、同じクラスなんだよ!?お前、円堂と同じクラスだろ!!?)
心の中でそう叫ぶ。
まさか、自分の存在のせいでシナリオが変わってしまったのだろうか?
そんなことを考える。
「豪風さんの席は・・・。」
そう呟く担任らしき女性教師の声が、かろうじて耳に入ってきた。
「女の子同士だけど、木野さんの隣しかないわね。木野さん、手を挙げて。」
すると木野が笑顔で手を挙げた。
零はマジかよ・・・と口に出して呟く。
しかし、まぁ、こうなってしまったものは仕方なし、と隣の席に向かう。
ゆっくりと椅子を引き、座る。
「私、木野秋。よろしくね。」
眩しい笑顔を向ける木野。
零はぎこちない笑みを浮かべながらうなずいた。
二次元のキャラを自分の目で見て、こう思う。
(どういう原理で私はこの世界に来たんだ。)
誰も答えてはくれない質問を投げかける。
しかし、本当にどういう原理で来たのだろうか?
(まっさか、サッカーしてたいって言うアレで?)
現実世界で彼女はきっと死んでいるのだろう。
誰が見ても彼女の死を疑わない。
それ位、悲惨な事故だった。
しかし、あの異常ともいえるサッカーへの想いと執着。
それらが彼女をこの世界に導き、彼女を生かしたのかもしれない。
彼女はため息をついた。
(シナリオなんかなければ、いくらでもサッカーできんのに・・・。)
零はあれやこれやと考えるのをやめ、学生らしく、もう始まっている授業に耳を傾けた。
END