パラレルカラー
誰だろう?
多分、俺は背負われてる。
あったかくて、大きな背中だ。
俺は浮上しきっていない意識の中で、そう思った。
1.「トキワいろ」
「ん?起きたか?」
俺のかすかな身じろぎを感じたのか、
俺を背負っている奴が声をかけてきた。
ふと顔を上げると、緑の瞳とかちあった。
あ、こいつ・・・。
「俺はグリーン。お前は?」
グリーンだ。トキワジムのジムリーダーだ。
ジムリ最強なんだっけ?あれ?リーグチャンピオンだっけ?
まぁ、そんなことどうでもいいんだけど・・・。
「・・・・ミハル。」
そうつぶやくと、グリーンはそっか、と呟いた。
俺の意識は、まだ夢うつつだ。
あーくそ。瞼が重い。
「お前、トレーナーか?
よく見たら、傷だらけだけど・・・旅は長いのか?」
「一度も・・・。」
てか、あるわけねーし。
それに、この傷は・・・。
あ、ヤベ・・・。
眠・・・・。
「あ、また寝やがった。」
それが最後に聞いた声だった。
***
(あれ・・・?)
どこだ、ここ。
ゆっくりと意識が浮上してきた。
どっかの部屋・・・みたいだ。
ゆっくりと体を起こすと、俺はベッドの上にいた。
辺りを見回すと、ベッドのすぐ横で、グリーンがベッドにもたれかかっていた。
目をつぶってるし、多分、眠ってるんだ。
あー・・・。
俺がベッド占領してるからか。
目をそらすと、枕の横にHGSSのヒビキのリュックとよく似たカバンがあった。
パルキアの言ってた必要最低限の物ってこれかなーと、手を伸ばす。
(あれ、服・・・。)
黒のタンクトップに、黒のリストバンド。
左手は黒と白の、手の甲に穴のあいた手袋だ。
多分、こっちは手のひらまで切り傷が付いてるからだと思う。
上着は黒と赤の半そでパーカー。
中は黒のタンクトップ。
ジーパンも黒だった。
ハイカットも黒を基調としてるし、俺、黒ずくめだな。
いや、俺、黒好きだけど。
まぁ、いいやと、リュックをあさる。
中には空のモンスターボールと、数冊の地図。
レッドの黒バージョンの帽子。
きずぐすりと、財布。ポケギア・・・そして、一枚の紙。
(まぁ、ほかにも色々入ってるけど省略しとこ・・・。)
紙には「私たちからのささやかな気持ちです。パルキア」と書かれていた。
うざ。
そう思ってリュックを閉めると足に重さを感じた。
前を見ると、そこにはイーブイが乗っていて・・・。
『ようやく起きたね。
君のせいでグリーンと一緒に眠れなかったんだけど。』
イーブイがしゃべった。
いや、まぁ、パラレルワールドなら、ポケモンが話すくらい普通なのかも。
人になるらしいし。
てか、イーブイ怖ぇ。
超威嚇してるし。
「・・・・・・・ごめん。」
一応謝ると、イーブイはベッドを下りて、主人に駆け寄る。
『起きてグリーン。拾ってきた奴が起きたよ。』
そう言って、グリーンにすり寄る。
拾ってきた奴て・・・。
そうすると、グリーンはうっすらと目を開けた。
「ん・・・?イーブイか・・・。」
イーブイをひとなでして俺を見る。
何度かまたたきして俺が起きたことを確認する。
「えっと・・・ミハルだっけ?おはよ。」
「・・・・おはよ。」
ふぁ、と、グリーンがあくびをする。
それから伸びをして、もう一度俺を見た。
「そういやミハル。お前、どうしてあんなとこで寝てたんだ?」
「・・・・どこ。」
「トキワのもり。」
マジでか。
俺、そんなとこに落とされたの。
まぁ、シロガネ山とかじゃないだけマシなんだろうけど。
「お前、旅したことねぇって言ってたけど、本当か?」
二次元で、しかも、ポケモンで人を疑うようなこと言いやがった。
いや、普通そうだけど、まさか、ポケモンで・・・。
うなずくと、グリーンは首をかしげた。
「でも、お前・・・。
トレーナーカード持ってんじゃん。」
そう言って、差された先には、確かにトレーナーカードが光っていた。
***
いつの間に作ったし。
リュックの下敷きになってたカードを見ながら、
手際のいいことで、と、あの三匹を思い浮かべる。
まぁ、手間が省けたということで感謝しておこう。
「手持ちはいるのか?」
「・・・いない。」
そういうと、グリーンは少し考え込んでから言った。
「よし。じゃあトキワのもり行くか。」
何で。
そう聞こうとするまでもなく・・・。
「ポケモン、ゲットしに行くぞ。」
continue.