神様に愛されている神様たちの話






 干からびて崩れ落ちた男を見降ろして付喪神――刀剣男士達はひたすらに呆然としていた。
 死んだのだ、自分達の主は。殺されたのだ、異形――山神によって。
 苦しかった。悲しかった。主と慕う人間に傷つけられるのは。愛する人間の、その中で一等大切な存在に虐げられるのは。
 繰り返し友を、仲間を失い、振るわれる暴力に心身ともに疲れていたのは事実。けれど、殺したいとは思わなかった。――考えが及ばなかった。刀は、使い手の敵を屠るための存在だから。
 これ以上辛い思いをしなくて済むのは嬉しい。けれど、言葉に出来ない感情に苛まれ、刀剣達は複雑な表情を浮かべた。
 そんな刀剣達を見て、山神がころりと笑った。

 ――ああ、愛しい。

 神は、総じて人間を愛している。愚かでちっぽけながら、懸命に生きる命が大層愛しかった。
 神はまた、同胞を愛している。愛する人を、一緒に愛でることが出来る同士であるからだ。
 その中でも付喪神は人間に一番近い神で、その何もかもが人の影響を受けていた。
 だから神にとって、付喪神は愛すべき存在なのである。同士でありながら、その魂は人と酷似しているから。
 それゆえに神々はこうして怒りをあらわにしたのだ。
 愛すべき存在を傷付けた罪により、しかるべき天罰を与えたのだ。


 ――付喪神とて神の末席。我らが同胞。
   彼らは弱き人の子に手を貸しているのだ。
   忘れるなかれ、人間共よ。


   付喪神は、神である。


 花と生まれ変わった男は、異形の手によって手折られ、授かったばかりの生を終えた。




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