山姥切国広中心のネタプロット






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本丸到着時
「えっと、今日はよろしくお願いします」
「……よろしく頼む」
「まず傷の手当てね! 薬研、お願い!!」
「おう、任せろ!」
「こんのすけもしっかり休もうね! お部屋用意したから、専門の術師さんが来るまでそこで休んでて!」
「ありがとう。こんのすけ、大丈夫か?」
「申し訳ありません……」
「気にするな。お前のお陰で蒼火さんと出会えたんだ。謝る必要はない」

手当てをしてもらって、こんのすけを部屋に寝かせて、広間へ行く途中に厨がある

「何か手伝うか?」
「いいよ、いいよ。休んでて。疲れてるでしょう?」
「ありがとね。でも、台がちょっと高くてね、君には危ないかもしれないから」
「そうか。出過ぎた真似をした。楽しみにしている」
「ううん。その気持ち、とっても嬉しいよ。美味しいもの、いっぱい作るからね!」
「ありがとう」

と言うやり取りをして広間に行くものの、落ち着かない

五虎退の虎が紫苑に興味を持ち、近寄ってくる
「えっと、撫でてもいいか?」
「ぎゃう!」
五虎退の虎を撫でて頬を緩ませる紫苑を見て、山鳥毛が微笑む
(笑った……)
頬が緩む
「どうした、小鳥。嬉しそうだな?」
「ああ。あんたが笑っていると、俺も嬉しい」
「―――、」
「ほら、あんたも撫でてみてくれ。ふわふわだぞ」
「そうだな」
「俺じゃなくてだな、」
「ふふ、」
楽しそうだからいいかー、とされるがまま

(((かっわいい……)))
と周りの刀剣達が死ぬ

「お、俺の鵺も触るか? ふわふわだぞ!」
「亀吉はふわふわじゃないけど、ツルツルだよ! 触ってみない!?」
「! いいのか?」
と山鳥毛の手を引いて鵺達に近寄る
「離れるな」の約束をしっかり守ってる〜! 可愛い〜!
「ふわふわだ」
「亀吉もいい子だな」
とふにゃふにゃ笑う
それを見て、小狐丸が髪を触るかと声を掛けてようとして山鳥毛が殺気をぶつけてくる
三日月も撫でようとして、同じく山鳥毛の殺気に断念

「お、温度差〜!」
「こっわ……」
「山鳥毛がセコムと化してる……」
「他の奴らもあんな感じなのか……?」
「いや、顕現してないし、そもそも今日の出来事でしょ。流石に無いんじゃない?」
「でも、山鳥毛だって出会って間もないはずだぜ?」
「もしそうだとして、長船と一文字一家が背後を固めてるのか……」
「完全にそっち系じゃん……。ヤのつく自由業の方々だよ……」
「風評被害だ!」
「とばっちり!!!」
「でもあの子、割と隙だらけだし、ちょっと心配……」
「しかもめちゃくちゃタラシだし、変な人に目を付けらそうで怖い……」
「確かにスレで見た言動は、誰彼構わず言っていいものではないな」
「見目が良いから、勘違いする奴とか出てきそう……」

「わたくしめも撫でて下さいませ!」
「お願いしていい……?」
「こちらも、」
と鳴狐と白山
「こ、こんな感じか?」
「はい! とってもお上手ですね!」
白山の狐が自分も!と手に擦り寄ってくる
「わ、わっ、じゅ、順番な?」

「癒される〜」



「ご飯できたよー」


「ご飯食べたら、術師の人が来てくれるから、こんのすけを治して貰おうね」
「ああ!」
「その後で小竜くんたちを顕現しようか」
「ありがとう!」
「どういたしましてぇ!!!」







顕現時
審神者が刀に触れようとするとガタガタ揺れ始める

「えっ!? なになになに!!?」
「ど、どうしたんだ? この人は怖くないぞ?」
と宥めるように撫でてやると落ち着く
けど審神者が触ろうとするとガタガタ
「「「…………」」」
「……もしかして、顕現拒否?」
「えっ」
ショックを受けた顔をするとガタガタ
「お?」
「違う、って事かな?」
「……小鳥以外が触るな、と言いたいのでは?」
「えっ」
カタッと揺れる
どうやら肯定の様で、そのあとは大人しい
「しかし、俺は顕現出来ないんだぞ?」
「いやいやいや、それよりもっと感想あるでしょ!?」
「陥落早くない!!? この子が凄いの!? こいつらがちょろいの!!?」
「えっと、俺のことは怖くないって事だろ? 嬉しいな」
「おっぐ……。可愛いがすぎる……」
「だから早く話とかしてみたいなぁ……」
「触れなくても霊力流せないか方法探してきます」
「えっ、いいのか? ありがとう!」
「その笑顔プライスレス!!!!!」
「主ホント学習して」
「ごめん、ホントごめん、山鳥毛。気持ちは分かるけど落ち着いて」
「私は至って冷静に敵かどうかを判断しているが」
「割と正確なんだけど、一応俺たちの主だから!!! この人守る為に応戦しなきゃいけなくなるから!!!」
「え? もっと積極的に主守って???」
「自分の言動省みて???」
「山鳥毛に味方したくなるような言動は慎んで???」
「山鳥毛、この人は怖くないぞ?」
「君の害になるか否かで判断している」
「この人はいい人だ。これでも人を見る目はあるんだ。だから、俺を信じて欲しい」
「……そこまで言うなら」
「ありがとう、山鳥毛!」

「ひぃん……。めちゃくちゃ信頼して貰えてるぅ……。あんなに傷付けたのにぃ……」
「うん。その信頼に応えられるような審神者になろうね、主」
「主頑張る。この子に軽蔑されたら心臓止まる」

「しかし、あんた気軽に抜刀し過ぎだぞ。相手から攻撃されたり、俺が斬っていい敵だと判断した奴以外には穏便に対処してくれ」
「しかしだな、小鳥よ」
「言い訳しない! 取り敢えず、これで縛っておくからな!」
とリボンで蝶々結びする
しかも緩い
「……これでは、何の拘束にもならないが」
「そんな事はない。何よりも重い枷だぞ」
「ほう?」
「それを俺の許可無しに解いて抜刀したら、俺は自分の刀に言うこと一つ聞いて貰えない主だと見做される」
「―――、」
「あんたがその拘束を解くと言うことは、俺に審神者失格の烙印を押す事と同義。それでも、何の拘束にもならないと?」
「……いや、この上なく重い枷だ」
「分かってくれたら良い」

「……彼、君より主してない?」
「それな!!!」
「少しは見習って???」









「俺の写しだったりしないかなぁ、あの子!!!」
「殺すぞ」
「……いつから居たのかな??? 全然索敵に引っかからなかったんだけど!!?!?」



「山鳥毛的にはあの山鳥毛はどうなの?」
「形容し難いな……。だがきっと、理解には遠く及ばぬ存在だろうとは思う」
「堕ちるって感覚、俺達には分からないもんね」
「ああ」









顕現再び
「壱くんに刀を握って貰って、その上から霊力を流し込むと言うのはどうでしょう!」
「確かにそれなら俺の手を解して行われるものな! よろしく頼む!」
「あっ、待って! このちっちゃいおててに触っても問題ない!? 犯罪にならない!!?」
「その反応がギリギリにしてるんだよなぁ」
「ほらぁ! 小竜怒っちゃったじゃん!!!」
「ひええ、ごめんなさいいい!」
「コラ、小竜! 大人しくしてくれ! そんなんじゃいつまで経ってもあんたと会話一つ出来ないじゃないか! あんたは……俺と話もしたくないのか……?」
「一瞬で大人しくなった!?」
「効果覿面!!!」
「しょんぼり顔は確かに効くわ……」
「持ち刀特攻か???」
「主! 今のうちに!」
「う、うん!」


桜が舞い、小竜が顕現

「ああ、主! 俺の主!」
「おわっ!?」

小竜が紫苑を抱きしめようと手を伸ばす
しかし小竜が紫苑に触れる前に山鳥毛が紫苑を抱えて飛び退る

「……あ゛?」

ビキッと青筋が立ってる

「声ひっく」
「長船がしちゃいけない顔してる……」
「モザイク掛けろ、モザイク」
「って言うか待って。目ぇ真っ赤じゃん……」
「もしかして、こいつら全員……?」

「おい、貴様。主を渡せ。主は俺に会いたいと言ってここまでしてくれたんだぞ」
「手加減もなく小鳥を抱き潰そうとする者に、小鳥を触れさせる訳が無いだろう。小鳥が怪我でもしたらどうするつもりだ」
「そんなヘマはしない。いいから渡せ」

「こりゅう……? さんちょうもう……?」

「ああ、すまない。驚かせたか?」
「大丈夫だが、何で喧嘩してるんだ……?」
「喧嘩じゃないから安心してくれ、主。それより、こっちにも来て欲しいなぁ?」
「そうなのか……? なら、いいか……? 取り敢えず山鳥毛、降ろしてくれないか?」
「……あれの元に行くと?」
「彼が、俺を傷付けると?」
「………………」

「口調変わってんじゃん、小竜」
「てか、めっちゃ長考してる〜」
「分かるけどもね」
「傷付ける感じは無さそうだけど、近寄らせたくは無いよねぇ……」

「……はぁ。仕方ない」
「! 小竜!」
「主!」
「手入れはちゃんと出来てたか? 痛いところとかないか?」
「大丈夫だよ、主。主の手入れは完璧だった。流石俺の主だね」
「そうか、良かった……」
「俺は小竜景光。主を探しさすらう流浪の旅人……。キミが、今度の主かな?」
「ああ! よろしくな、小竜!」

「わぁ、笑顔が眩しい」
「小竜やっば。顔溶けてる」
「声の甘さよ……」
「そして山鳥毛の顔な」
「南泉が見たら気絶しそうな顔してる〜……」

「蒼火さん! 他のみんなも!」
「そ、そうね! 顕現させようね!」
「ええ〜? もうちょっと主を堪能したいなぁ? っていうかそもそも、俺だけで良くない?」
「貴様……」
「ひぃっ」
「待て待て待て! お前らここで暴れるなよ!?」
「誰か人数集めて!!!」

「それは駄目だ」
「どうして? 俺だけで十分でしょ?」
と首に手を掛けられる。

「小鳥……!」
「小竜!? みんな、止めて!!」
す、と手で制される
視線は小竜から離さない
「俺は審神者だ。歴史を守る為に戦わねばならない。だから一振りでは駄目なんだ。戦う為には戦力が必要で、勝つ為には兵力を揃えないと」
「俺だけでは役不足だと?」
「あんたはきっと強い。でも、相手だって日々強くなっている。それに、太刀は夜戦ができないだろう?」
「そんなの、」
「ああ、もう! 文句ばかりだな、あんたは! 俺では多くの刀剣男士を従える力量が無いと侮っているのか!?」
「そんな事……」
「ならなんだ」
「……主を独占したい」
「……はぁ?」
「ご、ごめん……」
「何であんたが俺を独占する。逆だろう。俺があんたを独占するんだ」
「えっ」
「間違えるなよ、小竜。あんたが、俺のものなんだ」
「あ、あるじ……」
「それで? あんたの主である俺が、あんたが必要だと言っている。それ以上の何が欲しい?」
「お、俺も宝物にして欲しい……」
「ふふ、勿論だ。よろしくな、小竜」
「よろしく、主」

「お、おおう……」
「お、男前〜……」
「ひえっ、山鳥毛、顔やば……」
「これ本当に顕現して大丈夫なの……?」
「残り二振りが怖いなぁ……」

「南泉と大般若も!」
「うん、顕現させようねぇ!!!!!」
「掌返しはやっ!」
「大丈夫なの? とか不安がってたくせに!」
「だってこんな期待に満ちた顔されたらさぁ!!!」
「分かるけども〜!」
「えっと、疲れたのか? 大丈夫か?」
「全然大丈夫だよ〜!!!」
ギュッと握って顕現。

☆紫苑視点
「お初にお目にかかる。俺は大般若長光。長船派の刀工、長光の代表作さ」
「南泉一文字だ。よろしくな、主」
「ああ! よろしくな、南泉、大般若!」
二振りに向かって手を伸ばすと、二振りとも手を握り返してくれた。
「お?」
南泉がその場に膝をつく。
何をするのかと思えば、南泉は握った俺の手に頰をすり寄せてきた。
猫が懐いてくるときの仕草に似ていて、何となく和やかな気持ちになる。
「へへっ……」
俺が頰を緩めると、釣られたのか、南泉がはにかむ。
(良かった……。南泉もまだ戻れそうだ……)

するり、と手を撫でられる。
南泉を撫でている手とは反対の手だ。
そちらを見ると、大般若が笑みを浮かべて俺を見ていた。
「ははは、妬けるなぁ、主。こっちも構ってくれないか?」
「すまん、大般若。放置するつもりは無かったんだ」
「分かっているさ。俺のことも撫でてくれるかい?」
「別に構わないが……」
膝をついた大般若に俺は困惑する。
撫でるって……頭を、だろうか?
上から手を伸ばしても大丈夫な奴なのだろうか。
いや、小竜や南泉も触れられることを恐れてはいなかったし、暴力的な振る舞いで堕ちた訳ではないのかもしれない。
それか、俺の幼い見た目が彼らに安心感を与えているのかもしれない。
幼子の拳で傷が付くほど、刀剣男士は柔ではないから。
しかし、頭を撫でたら髪をくしゃくしゃにしてしまうよな……。
長船の連中は身嗜みを気にしていたし、髪は触らない方がいいよな?
頰を撫でればいいだろうか……?
するすると頰を撫でる。予想外だったのか、大般若がぱちりと目を瞬かせた。
「おや、」
「あ、すまん。髪を崩してしまうかと思って……」
「いや、いいさ。うん、いいなぁ、これ」
「嫌じゃないか?」
「ああ、嬉しいさ。もっと撫でてくれ」

「ひぃん、尊い……。っていうか南泉くんとか大般若さんって、あんな甘い顔出来たの……?」
「猛獣使いかな???」
「てか、あいつと直接話すの今日が初めてなんだろ? 既に好感度カンストしてんじゃねぇか」
「てか、山鳥毛と小竜がめっちゃお互いを抑え付けてるのが視界の端にチラつくんだが……」
「さっきの小竜の様子からして、突撃したいんだろ」
「山鳥毛が苦労しそうな本丸だなぁ……」


とか、やっていたら政府から連絡が来る


「お?」
「どうした、小鳥」
「うんと、政府から連絡が入った」
「……ほう?」
「出た方がいいよな?」
「私が出よう」
「じゃあ、お願いする」

『出たぞ!』
『まさか本当に生きているのか……?』
『やはりあの子供は浄化の力が強いようだな』
『あの本丸の刀剣男士達を懐柔出来たというのなら、どんな刀剣男士でも浄化出来るだろう』
『我々は中々良い拾い物をしたようだ』
『おい、刀剣男士に聞こえたらどうする!』

(聞こえてるんだよなぁ……)
端末を持つ山鳥毛の顔は、正直に言って夢に見そうなくらいの形相だ。
ただの子供だったらトラウマになっていたことだろう。
南泉達の顔も酷い。
お前達、そんな顔出来たのか、と言いたくなるくらいに険しいものだ。
よく見れば、蒼火さんを含む、蒼火さんの刀剣男士達もとんでもない顔をしていた。
「子猫、」
「おう」
山鳥毛が南泉に声を掛ける。すると何かを了解した南泉が、俺を抱えて部屋を出る。
俺が呆けていると、南泉が縁側に腰掛けて、俺を膝に抱えた。
「南泉? あの、下ろして欲しいんだが……」
「んー? 何で?」
「え、普通に恥ずかしいからだが……」
「俺が抱えてたいから嫌だ、にゃ」
「そ、そうか……。なら、抱えていて良いから、部屋に戻って欲しい。通話は俺に掛かってきたものだし、代わりに出てもらったが、話は聞いておかないと……」
「あれは聞かなくて良いやつだ、にゃ」
「……確かに、あまり聞きたい内容では無かったが……」
「そう言うのから主を守るのも、俺たちの役目だ」
「―――」
ああ、そうだ。俺は今、刀剣男士では無くて、彼らの主なんだ。だから彼らは俺を守ろうとする。
それが刀剣男士の当然で、ごく自然なこと。
元が刀剣男士だったから、俺はその事をよく知っている。
けれど、主の側に立って、初めて分かることもある。
ただ守られるだけと言うのはこんなにも不安で、もどかしいのだと。情けなくて、悔しいのだと。こちら側に立って、初めて知った。
(ああ、だから、姐さんも守られるだけは嫌なのだと、頑なに主張していたんだな……)
「分かった。今回は、ちゃんと守られる。でも、あんまり蚊帳の外に置かれると寂しいし、不安だから、次はちゃんと説明してほしい……」
「―――」
「……南泉?」
顔を覆って、天井を向いている。
呆れているのだろうか。
「あの、南泉?」
「ああ、すまん。大丈夫、ちゃんと俺が守ってやるからにゃあ」
「違う! あんた、話聞いてなかったな!?」
「聞いてたって」
「じゃあ、次はちゃんと説明するんだぞ!」
「分かったって」
「本当だろうな? ちゃんと説明しなかったら―――」
「しなかったら?」
「……どうしよう?」
「主は本当可愛いにゃあ」
「可愛くない」
子供だからって舐められてるのか?
「主は可愛いぜ? 喰っちまいたくなるくらい」
「南泉?」
何か、妙にちか―――、

「小鳥に何をしている? 南泉一文字」
「別に? 仲良くお話ししてただけだぜ? なぁ、主?」
「え? う、うん……?」
「そうか。では小鳥をこちらに渡して貰おうか?」
「もう少しいいだろ? あんただけの主じゃねぇんだし?」
「どうやらお前には躾が必要なようだな」
「へぇ?」


「お頭に喧嘩売るのやめてくれ、同位体ぃぃぃ!!!」
「ヤクザの抗争じゃん……」
「一文字一家をそっち系にするのやめてあげなよ」
「これこそ正しい風評被害だよね」
「とりあえず、全振りすでに陥落済みってことははっきりしたね」
「何かヤバい方向に陥落してる気がするんだけど、気のせい?」
「「「………………」」」
「山鳥毛に任せよう!」
「今のところ、大般若も大人しそうだよ!」
「……その私が、果たして任せても良い刀なのだろうか……」
「あの同位体に対しては……俺も自信ないかな……」
「「「不安になるような事言わないで!!!」」」


「それ、俺も混ぜてくれる?」
「主の独り占めをするような刀には仕置きが必要だもんなぁ?」

「来ちゃった」
「でもってガチ切れじゃん……」
「光坊止めろ。同派だろ」
「同派だからって何でも僕に回さないで!?」
「大般若全然大人しく無かった」
「さっきまでの紳士的な態度はどこ行った???」

「躾も仕置きも必要ない。それを判断するのは俺だ。それより、事の顛末が知りたい。報告を頼む」
「小鳥……」
「主、何もされてない?」
「話をしてただけだ。それより、俺はあんた達に物申したいんだ! 主は俺だぞ! 俺を置いて話を進めるな!」
「次からはちゃんと相談するから。それより、そいつから離れようか?」
「本当だろうな?」
「ああ。約束しよう」
「ならいい。南泉、膝を貸してくれてありがとう」
「どういたしまして、にゃ」

「事の顛末は私から話してもいいかな? 私が取り決めとかさせてもらったんだ」
「えっ? 蒼火さんが?」
「あ、もちろん、運営方針とか、そう言うのは口出しするつもりないから、安心して? そう言うんじゃなくて、この年齢の子に今の境遇はあまりにも酷ですよね? っていう話をさせてもらっただけ」
「別に酷だなんて……。あっ! だ、駄目だからな!? 山鳥毛達はもう俺の刀なんだから、取り上げるなんて許さないぞ!!」
「ん゛ん゛ん゛、大丈夫だよ〜!!! むしろ仲良くなったならそのままお願いしますって言ってたから!!!」
「そ、そうか……。良かった……」
「一先ず親権は政府が預かっているようだけど、貴方が親権を預けても良いなって思える人が見つかったら、その人に譲るって言質取ったからね!」
「えっ」
「担当役人も変わったから、間違えないようにね!」
「えっ」
「本丸も、新しい本丸に移動になったから! 話を聞くに貴方の教育に悪そうだし、穢れは毒だからね!」
「えっ」
「紫苑くんは顕現出来ないから、刀剣男士は政府が用意した刀になるらしいけど、どうしても難しいなら、無理に引き取る必要は無いって」
「う、うん……」
「それから、任務のノルマも減らしてくれるって。良かったねー、紫苑くん!」
ど、どこまで取り決めたんだ、この人達……!?
と言うか、ここまでしてくれるのはありがたいが、返せるものが何もない。
「あ、あの……!」
「なぁに?」
「俺、返せるものが何もなくて、お礼が出来ない……」
「え? そんなの気にしないで? むしろ課金させて?」
「それでは俺の気がすまない。だから、俺にして欲しい事があったら、何でも言って欲しい。俺に出来る事なら何でもするから」
「「「何でもするとか軽々しく言っちゃいけません!!!!!!!」」」
ちなみに説教は三時間にも及んだ。



蒼火(そうび)
オタク系審神者。
三十路目前の女性。
初期刀は山姥切国広。
推しへの愛は金額で示すタイプ。
刀剣男士は平等に愛でているが、本当は貢ぎたくて仕方ない。
お小遣いと称して貢ごうとしては怒られるのを繰り返している。
愛する初期刀とそっくりな紫苑に心臓を射抜かれた。
YESロリショタNOタッチを心掛けている。
美少年は信仰の対象。
テンションの振り幅が凄い。
割といつもテンション高め。
普段の態度からは想像も付かないが、優秀な成績を収めている。
家も由緒正しい家系で、かなりの権力がある。
なので普通の審神者では出来ないこともやってのけた。

蒼火の刀剣男士
紫苑の境遇とあまりの無防備さに過保護が発動。
紫苑の刀剣男士達が不穏な気配を隠さないので胃が痛い。
蒼火に引きずられてか、テンションの高い個体が多い。







「嫌な予感がする」
「……君の予感は当たるからな」
「担当から連絡が来た」
「私が出よう」

「小鳥に何か?」
『さ、山鳥毛様!!?!?』
「用件はなんだ。手短に話せ」
『も、申し訳ありません! その、演練への参加要請です……』
「……理由は?」
『あまり外部との接触を絶たれると、その、ブラック本丸の疑いが掛けられてしまう恐れがありまして、その……』
「成る程?」
『きょ、強制ではありません! 是非検討して下さいませ!!!』

「聞こえていたか? 小鳥」
「ああ。それにしても、演練か……」
「刀剣男士の訓練の場であり、審神者達の交流の場でもある。繋がりを作るにはうってつけの場所ではあるが、さて……」
「……あんた達が酷い事を言われたり、怖がられるのは嫌だ……」
演練でみんなの戦いぶりを見るのが好きだった。
だから彼らの戦いもこの目で見たかった。
けれど、今の彼らを人前に出すのは憚られる。
けれどブラック本丸の疑いを掛けられて、彼らを取り上げられるような事になるのはもっと嫌だ。
「ありがとね、主。その気持ちが一番嬉しいよ」
「俺は何を言われても気にしないが、斬りかかられたら応戦しない訳にもいかないしなぁ」
「そうなると、主の立場が不利になる、にゃ」
「演練の参加は強制ではないと言っていた。見送るのもありだろう」
「うん……」
どうするべきなのだろう。
かつて政府で協力してくれた刀達も居ないとなると、頼れる場所がない。
尚更演練に出て、審神者同士の繋がりを作らないと。
何より、みんなの戦いも見たいしなぁ……。
「どうした?」
「……あんた達が刀を振るっているところ、見たいなぁって思って。刀はやっぱり、戦場で振るってこそだろう? きっとかっこいいだろうなぁって」
「「「「…………」」」」
「ああ、もう、主め〜!」
「わっ!?」
ギュッと抱きしめられる
「主可愛過ぎー! そんなこと言われたら演練行きたくなっちゃうじゃんかー!」
「小鳥……。君は本当に……」
「期待に応えたくなるなぁ。ああ、でも、少し心配だな。主は可愛いから、誰かに狙われないか心配だ」
「俺としてはそっちの方が心配だ、にゃ」
「……あー」
現世での事を思い出して、ちょっと表情が死にかけた。
「それはどういう反応だ? 小鳥?」
「まさか危ない目に遭った事があるのか?」
「え? 待って? 主に無体を強いた奴がいるって事??? え? 殺す」
「落ち着いてくれ。大丈夫だから」
「主は自分の可愛さをわかってねぇ、にゃ」
「そんな事言われても……」
子供は確かに可愛いけれども、俺にそういう趣味は無いので、イマイチよく分からない。
確かに襲われる事はあったが、それは多分俺が小柄な子供で襲いやすかったからだろうし。
ああでも、美人だった母に似ているとよく言われていたし、母に懸想していた者に身代わりにされそうになったこともあったから、一部の人間には可愛く見えているのかもしれない。
彼らに心配を掛けるのは心苦しいし、少し警戒しておこう。



そうだ、まじないについて習おう。
姐さんに術師の才能は無かったが、全ての審神者が苦手な訳ではないだろうし、目眩しの術なんかもあったはずだ。



結果として、俺はまじないの類は得意ではないが、使うことはできるようだった。
しかし持続時間が無い。
そのため、頻繁にみんなにまじないを掛け直す必要があるらしい。

(そろそろ大般若のまじないを掛け直さないとな……)

「大般若、」
「ん? ああ、おいで」
審神者曰く、戯れてるフリをして掛け直せばバレないだろうと言う。
甘える振りをして抱っこでもして貰えば、周りからは微笑ましい光景に映るだろう、との事。
「ふふ、主は可愛いなぁ」
こつりと額を合わせる。口の中で詠唱を唱え、素早く術を上書きする。
「大般若だけ狡い! 次、俺にも抱っこさせてね?」
「順番な?」
「ふふふ、はぁい」
うぅ……。これ、結構恥ずかしいな……。
人前で甘えるのは注目を浴びるし……。
しかし、何故周りの奴ら、みんな顔が赤いんだ……?

「ひええ、美少年が長船と戯れてる……」
「眼福ですぅ……」
「眩し過ぎて直視出来ない……」
「美しすぎて見てはいけないものを見てる気分……」
「背徳感がやばい……」
「家族引き継ぎかな? 審神者くん可愛すぎる……」

「小鳥、次はこちらにきてくれると嬉しいのだが」
「あ! お頭ずりぃ! 俺も抱っこしてぇ、にゃ!」
「えっと……。じゃあ、山鳥毛から……」
「! ああ、おいで、小鳥」

「おっと、一文字一家だ。これは違う意味でまずい気がするぞ???」
「どことなく犯罪臭がするのは気のせい……?」
「でも主なら合法じゃない? 審神者くんも嫌がってないし。何より眼福だから、是非もっとやって欲しい」
「「「それな」」」

「あ、あの、何か凄く注目されてる気がする……」
「ああ、確かに。少し煩わしいね」
「主は注目されるのが苦手なのか、にゃ?」
「あんまり得意じゃない……」
「じゃあ、これを羽織ってな。主には大きいけれど、隠れるには大きい方が都合が良いだろう?」
と小竜がマントを貸してくれる。
布で埋もれてる状態になる。
「引きずってしまいそうで怖いな……」
「いいよ、いいよ。気にしないで。汚れたら洗えば良いだけだし」
「ありがとう、小竜」
「どういたしまして」






けれど、一人の役人にまじないを掛けているのがバレて、みんなが仮想戦場に降り立ったところを狙われる
頬を拳で殴られて、床に倒れる
「お前、刀剣男士様達に何をした!? 私は見ていたぞ! お前が刀剣男士様達に術を掛けるところを!」
「今すぐ術を解け!!!」
周囲が異変に気付き、山鳥毛達が仮想戦場から駆け付ける
ガン! と音がしたと思ったら山鳥毛がギャラリーに登ってきた音
(えっ、登ってきたのか? このほぼ垂直の壁を???)
驚きで色々と吹っ飛ぶ
いや、刀剣男士時代なら出来たな
「貴様……、小鳥に何をしている……」
「ひぃっ!」
(いやこれ、ガチでその筋の人にしか見えないな?)
と他人事のように思っていると役人が吹っ飛ぶ
追いついてきた南泉が顔面を蹴り飛ばしたところ
しかも追撃でもう一度顔面を蹴り飛ばす
「殺す」
とブチ切れ
まじないが剥がれ落ちる
これは不味い
「ま、待て、南泉!」
「小鳥。子猫に任せておけ。それより傷を」
「そんなのいい。それより南泉を止めてくれ! 殺しちゃ駄目だ!」
「こぉら、主。暴れないの。それより傷を見せて? ああ、こんなに腫れて、可哀想に……」
「主を傷付けたんだから、殺されて当然さ」
「駄目だって! 殺しちゃ駄目だ!」
首に手を掛けて持ち上げる
持ち上げられた身体が完全に弛緩し切っていることから察するに、相手の意識は既に刈り取られている
「殺したら嫌いになるからな!!」
ピタッと止まる
南泉がこちらを振り返る
驚愕を露わにしていて、南泉が傷付いているのが分かった
(俺、酷い事言った)
役人の男から手が離される
ドサリと崩れ落ちる男など気にも止めず、南泉がこちらに手を伸ばす
腫れ上がった方とは反対の頬に手を添えて、顔を寄せてくる
こつりと額が触れ合う
そっと手を伸ばして、俺も南泉の頬に手を添えた
「ごめんにゃ、主……。俺、言うこと聞けなかったな」
「ううん、俺の事を守ろうとしてくれたんだろ? 俺こそ、酷い事を言ってしまってごめんな?」
「……俺の事、嫌い?」
「ううん、好き」
「ならいい、にゃ」
「うん」
ふわり、と南泉が笑う
良かった、とつられて微笑む

「……今日はもう帰ろう。この男は他の役人に引き渡せばいいだろう」
「早く帰って手当てしないとね」
「ああ。でも、相手にその事を伝えないと」

「おい、何があった! 大丈夫か!?」
と相手の審神者や刀剣男士たちが駆けつける。

(あ、不味い)
駆けつけた面子が不味かった
山姥切国広の本科と、兄弟と、かつての本丸で共に戦った仲間たち
情けない所を見られた羞恥もあった
けれどそれよりも懐かしい顔ぶれに心が揺さぶられた
弱っているときに、会いたくても会えない人達の顔を見るのは、どうしようもなく苦しい
(なみだが、)
ポロリ、一筋の涙が落ちる

「「「!!?!?」」」

「ご、ごめん、なさい……。きょ、きょうは、も、帰ります……」
「あ、うん! そ、そうだね! そうだよね! うん、それがいいね!」
「ごめんなさいぃ……」
「謝んなくていいよ! 怖い目に遭ったんだもんね! 無理しないで!」
「そ、そうだぞ! 君は子供なんだから、思い切り泣けばいい!」
「この男は俺たちで処理するから、君は帰って休もう? ね?」
「う、ん……。ありがとう……」
「あ、待って! これ! これだけ貰って!!」
「うん……?」
「おじさんの連絡先! 何かあったら連絡して!!」
「……ありがとう」

「では失礼する」
「お願いします……」
と手を振って帰る






痛ましい傷を負った美少年に泣かれて心臓が潰れ掛けた対戦相手
対戦相手である山鳥毛達がいきなり壁を登り始めたので戸惑っていたら審神者の少年が襲われていると判明。
南泉が蹴りを入れた辺りでガチ切れの気配を察知。
そりゃそうだよなと思いつつ、殺しちゃ不味いと南泉達を追いかける。
すると南泉のまじないが剥がれて堕落刀剣である事が判明。
お前がヤバい奴なんかい! と慌てていると少年と目が合う。
美少年すぎて山鳥毛達の事を忘れて呆然としていると突然の号泣。
泣きながら何度も謝られて心が重傷。
慌てながらも連絡先を渡した審神者が優勝。今回のMVP。間違いない。
取り敢えず訳ありっぽいから様子見。
多分引き離したら泣かれる所じゃない。そうなったら次は死ぬ。




紫苑視点↓

男を処理してくれたお礼をしに行くことに
お礼がしたいと言うと、万屋で会うのは難しそうだから、うちにおいで、と言われる
「良かった。怒ってはいないようだな……」
「誰がだ? にゃ」
「わっ!?」
南泉に後ろから抱きしめられる。
嫌いになる、と言ってから、南泉は事あるごとに俺に抱きついてくるようになった。
彼の傷については触れていない。
けれどこの様子だと、どうやら俺は地雷を踏んだらしい。
好きなように抱きしめさせて、時折撫でてやると、彼はほっとしたように息をつく。嫌われたり拒まれたりするのを怖がっている節があるから、それが彼の傷なのかもしれない。
「あの役人の処理をしてくれた審神者の事だ。あの時のお礼がしたくて連絡を取ってみたんだ」
「ふぅん……」
「それで、相手の審神者の本丸にお礼に行く事になったんだが、南泉。一緒に来てくれるか?」
「俺?」
「そうだ。嫌か?」
「主に選ばれるなんて光栄だにゃ」
「そうか」
ぐりぐりと肩口に額を擦り付けてくる様はまるで猫のようだ。
彼は刀剣男士であって、猫ではない。こんな風に思ってはいけないのだが、動物は嫌いじゃない。だからこうして動物を彷彿とさせるものは無条件で可愛いなーと思ってしまうんだよな。
(南泉と一緒に行く事を伝えておかないと)
ちなみにこの後、この姿が小竜に見つかって大乱闘に発展し。更に一緒に出掛ける約束をしている事が判明し、山鳥毛と大般若まで参戦する事になるとは思いも寄らなかった。
(ああでも、これは俺も悪いかな。俺だって姐さんの護衛はいつだってしたかったし)
次からはきちんと相談してから決めようと心に決めた日だった。




男審神者の本丸へ。

南泉が一緒で身構えられる。
予め南泉と一緒に行く事を伝えていた為、警戒はされない。
「いらっしゃい。この本丸の審神者をやっている緑糸です」
「えっと、紫苑です。この前はありがとうございました」
「良い子だね。でも、敬語じゃなくて良いよ。おじさん敬語苦手でさ」
「ありがとう。じゃあ、普通に話す」
微笑むと「うわ、可愛い……」と呟く。
すると南泉が前に出て、
「刀剣を代表して俺からも礼を言わせて貰う。この間は助かった、にゃ」
「あ、う、うん。どういたしまして……」
目が笑ってない。

「あれ……?」と加州。
「ん?」
「いや、えっと……」
「どうした?」
「切国そっくり……?」
「……先日は、ありがとうございました。これ、評判だっていうお菓子です。良かったら皆さんで食べてください」
「あっ! 急に距離が!!」
「突然の敬語!!!」
「ごめん、地雷だった!? ホントごめん!!!」
山姥切国広で在った事は誇りだ。
美しい本科の写しで、国広の傑作で。姐さんに誇って貰えるような刀剣男士で在れたのだから。
けれど今の俺は人間で、両親が在って俺がある。
だから、その両親を蔑ろにされるような事を言われるのが、どうしても駄目だった。
失礼な態度である事は分かっている。助けてもらったのに、面倒を押しつけてしまったのに。
(子供の体は、ままならないな……)
また、泣きそうになる。
俺が泣きそうになっているのを察した南泉が俺を抱き上げる。
そして刀剣男士から距離を取った。
「おま、何泣かしてんだよ!」
「切国と似てるって言われるって事は、父親と似ていないって言われてるようなもんだ。あれ位の子なら、傷つくんじゃないか?」
「神気もないし、どう見ても人間じゃん! 他人の空似に決まってるだろ、ブス!」
「ブスって言うなって言いたいけど、今回ばかりは受け入れるわ……」
「ごめん、本当にごめん。泣かすつもりは無かったんだ」
「加州がごめんなー」
「ホントごめん! ごめんなさい!」
「大丈夫……」
「んんん、大丈夫じゃなさそ〜!」
「そうだ、お菓子好き? 今日は堀川がホットケーキ焼いてくれる日なんだけど、食べて行かない?」
「あ! じゃあ、君の分は俺が焼くね! めちゃくちゃ美味しいの焼くから!!」
「主、帰ろうぜ? また主が傷付けられたらたまんねぇよ」
「……でも、仲直りしたい」
「主……」
「山鳥毛達には内緒な?」
「…………」
「二人だけの秘密。ホットケーキ、半分こしよう?」
「……仕方ねぇにゃあ」
「ありがとう、南泉」
「加州、ホットケーキ、お願いしてもいいか……?」
「いいよ〜! めちゃくちゃ美味しいの焼いてあげるね〜!」

で、広間で待つ事に。


山姥切視点↓

「おや、いらっしゃい」と山姥切。
「げっ、化け物斬り……」
「こ、こんにちは。お邪魔します……」
「主、あいつとは関わんねぇ方が良い、にゃ」
「言うじゃないか、猫殺しくん。その点君は良い子だね。きちんと挨拶が出来るのは優だよ。そちらの本丸に俺はいるかな?」
「ううん。この前の四振りだけ……」
「じゃあ自己紹介をしよ……、え、四振り?」
「審神者になったばかりで、この前の演練が初めてだったんだ」
「そう。それは怖い思いをしたね」
「南泉達が守ってくれたから平気だ」
「そう、なら良かった。俺は山姥切長義。よろしくね」
「紫苑です」
「畏まらなくて良いよ。途中で敬語抜けてたし」
「あっ」
「ところで、いくら何でも、その……」
距離が近過ぎでは? と言いたいが、めっちゃ睨み付けられてる
刺激したら不味いと言うのは分かるので下手に突かない
そこら辺の良識はある
だって各本丸に評定を下せる元監査官だもの
「ええと、俺が酷い事を言って傷付けてしまったんだ。それから離れたがらなくて。だから、俺が悪くて」
「ああ、責めている訳じゃないんだ。こちらの猫殺しくんとは違うなぁと思っただけで」
「そうか」
ほっとして南泉に頬を寄せる
兄に懐く弟のようで可愛らしいが、その兄役の熱量が兄弟のそれではない
歪んだ口元が見える
うっそりと笑う姿は南泉のものとは程遠くて、寒気が背筋を駆け上がる
(成る程、これが"堕ちる"と言うことか)
その姿は刀剣男士ではなく、甘露を啜る悪鬼に見えた
「じゃあ、俺はこれで」
「えっ」
残念そうな顔に心が痛む
「少し用事があってね。また後で話そう」
「うん」
小さく手を振られる
可愛いなぁと微笑ましく思いたいのに、南泉の視線がそれを許さない
誰かにこの気持ちを共有したくて、足早にその場を去った

長義
「やっっっっっばい。あれはやばい。何がやばいって全部がやばい」
鯰尾
「でも引き離して泣かれたら心が死ぬよね、俺達の」
南泉
「あれが俺だと認識されてんのは複雑だ、にゃ……」
物吉
「というか、あんな幼い新人の審神者に堕落刀剣を預けるなんて、政府は何を考えてるのでしょう?」
後藤
「それに、あの様子だとさぁ、南泉だけじゃなさそうだよな、堕ちてるの」
「「「…………」」」
鯰尾
「そう言えばさ、あの子の初期刀は? 最初の五振り、居なかったように思うんだけど……」
「「「………………」」」

「え? 俺の初期刀か? 山鳥毛だぞ。俺が顕現が出来ないって分かって、政府の役人がくれたんだ」
「その山鳥毛は政府の刀だったのかな?」
「違うんじゃないか? 何か封印されていたし」
「あ? お頭って封印されてたのか、にゃ?」
「言ってなかったか?」
「聞いてねぇな。まぁ別に、興味もねぇけど」
「南泉はもう少し仲間に関心を持ってくれ……」
「「「…………」」」

「審神者が一番やばい奴な気がしてきた……」
「「「それな」」」
「と言うかさ、さらっと流しちゃったけど、山鳥毛と南泉は別の本丸出身なんだね?」
「「「………………」」」
「気付きたくなかったなぁ……」
「本当にね」


緑糸(りょくし)
四十代半ばの男性。
初期刀は歌仙兼定。
一人称は「おじさん」
大柄で筋肉質。見た目は厳ついが性格は温厚。
イメージとしては森のくまさん。
慌てるような事態でも、慌てつつも冷静さを保てるタイプ。
割としっかり者。
ショタコンとかではなく、保父さんになりたかった系の子供好き。
紫苑に泣かれてかなりショックだった。

緑糸の刀剣男士
緑糸と似て、子供好きの個体が多い。
紫苑に泣かれて心臓がギュッとした。
紫苑の境遇とか持ち刀がヤバい奴なのでは? と気付いてからは胃も痛くなってきた。







蒼火が紫苑が怖い目に遭ったと知って、万屋の猫カフェに遊びに行こうと誘う。
それで万屋に遊びに行くことに。
↑を目撃した審神者もスレ立て。


蒼火達が来るのを待っていると一人の女審神者が山鳥毛に擦り寄ってくる。
どうやら女審神者の本丸には山鳥毛が居らず、手に入れたいらしい。
「うちに来ません?」
と誘いをかけるも素気無くあしらう。
「さ、山鳥毛は俺の刀だぞ!」
「ああ、そうとも。君の持ち刀だ。他所に行ったりはしないさ」
「……そんなちんちくりんのどこが……っ!」
「小鳥への侮辱はそこまでにしてもらおう。そうでなければ、今すぐにでも斬り捨ててしまいそうでな」
「ひっ……!」
「駄目だぞ、山鳥毛。俺が小さいのは事実だしな」
「まだ子供なのだから当然の事だ。それを指して嘲るから許せないんだろう?」
「俺は気にしてないからいい」
南泉達を怖がらせないこの体躯は都合が良い。
両親の身長もそこまで低くなかったし、そのうち伸びるだろう。
「そのうち山鳥毛よりデカくなってやるつもりだしな!」
「そうか。それは楽しみだな」

「ちょ、ちょっと! 話はまだ終わってないわよ!」
「なんだ、まだ居たのか」
「なっ……!?」
「私は小鳥以外の者に使われる気は無い。話はそれで済んだ筈だが?」
「納得出来ないわ! そんな子供に何が出来ると言うの!?」
「何が出来る、か……」
「貴様には分からんだろうさ」
「さぁ、行こう、小鳥。今日は猫と戯れるのだろう?」
「うん。蒼火さんたちも、そろそろ来るだろうしな」
「……っ! 馬鹿にして!!」
女審神者が紫苑に向かって荷物を投げる。
それが顔に当たりそうになって、山鳥毛が荷物を受け止めて事なきを得る。
「小鳥、怪我は?」
「だ、大丈夫だ」
「そうか、良かった……」
と安堵して、ぶち切れ顔を晒す
女審神者の足を思い切り足払いして顔の横の地面を踏み砕いた。
「次は潰す」
ちなみに足は骨が折れてたよ
「怖い思いをしたな、小鳥」
「大丈夫だ。あんたが守ってくれたから。それに、あんたが俺以外に使われる気は無いってはっきり言ってくれたの、嬉しかったしな」
「ああ、小鳥よ……。君は本当に私を喜ばせるのが上手いな」
「そうか? それより、彼女の刀剣男士が来る前に逃げてしまおう。本当は彼女の刀剣男士と顔を合わせた方がいいのだろうが、正当防衛とは言え、こちらも手を出してしまったから、謝罪しないといけなくなる」
「珍しいな、小鳥がそんな事を言うとは」
「だって、俺から俺の刀と奪おうとした相手に、謝りたくなんかない」
「―――」
「行こう、山鳥毛」


一緒にいた小豆がめちゃくちゃ頭抱えてるんだけど
あれ多分、普通の感情じゃないと思うって
本丸に帰って山鳥毛の顔を見た第一声が「きみにちごしゅみはないよな……!?」だったからガチでヤバい奴なんじゃないかって気がしてスレ立てたんだ
話を聞いた山鳥毛も頭抱えてたし……








「俺も前に、人が怖くて仕方ない時期があったんだ。その時に俺が乗り越えるのを助けてくれた人がいて、その人がとんでもない馬鹿だったんだ」
「馬鹿?」
「そうだ。馬鹿だったんだ。俺のような者達と関わる事で自分が傷付くことになるとわかっているのに、それでも俺たちを見捨てずに居てくれた。諦めないで居てくれた。乗り越えられると信じてくれた」
「どこまでも愛情深くて、底無しの優しさで包んでくれて、あたたかいもので満たしてくれた。あの人が居たから、俺はまた、人が好きになれたんだ」


(おおっと? この山鳥毛、もしかして、執着が強いタイプか???)
(いや、一文字の執着がやばいな???)

(もしかしてこの本丸、俺のガチ勢しかいない……?)

(め、めちゃくちゃ長船を浴びせてくる……。目がチカチカする……)

「主可愛いー!」
「俺は男なんだよなー」
「男でも可愛いんだよなー」

「可愛過ぎて、舌噛みちぎりそうになった」
「やめてくれ」




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