例えその目に映らなくとも
本丸に帰ると、椿はすぐさま刀剣達を広間に集めた。
集めたと言っても、姿は見えず、声も聞こえない。本当に集まったかどうかも分からない。
それでもそこにみんながいると信じて、事のあらましを語った。
「私は今、君達が見えない。声も聞こえない。触ることすら出来ない。おそらくは、役人の呪詛によるものだ」
辺りはしんと静まり返っている。
いつもなら真剣な眼差しが自分を見つめてくるのにそれが無い。
一生懸命相槌を打つ姿があるのに、それが見えない。
こんな話をすれば驚きの声や憤りの言葉が聞こえるのに、それも聞こえない。
ただただ、椿の声だけが響く。
「都さんにもすでに伝えてある。石切丸たちにも解呪を頼んだ。何、すぐに解決するさ」
一抹の寂しさを感じながらも椿は笑う。
そこにいると信じて。この言葉が届いていると信じて。
でも、
「……そこに、いるんだよな?」
見えないのはやっぱり不安で。聞こえないのが悲しくて。触れたいのに触れられないのがもどかしい。
自分の声だけが響くのが、ひたすらに虚しいのだ。
「―――寂しい、なぁ……」
そこにいるはずなのに見えなくて。もしかしたら声を掛けてくれているかもしれないのに聞こえなくて。触れたくても、どこにいるのかも分からない。
「私は、君たちはいないと駄目なようだ」
そう言った声は椿が自分で思った以上に弱弱しいものだった。
―――ああ、いけない。きっと皆だって戸惑っているはずなのに。主たる自分がこんなことでは、みんなを不安にさせてしまう。
そう思って、ゆるりと首を振る。
その時、くん、と袖口が引かれた。
次いで、腰回りや腕に感じる圧迫感。身じろごうにも動けない。
何事だろう、と首を傾げて、ああ、と一人納得した。
抱きしめられているのだ。ここにいるよ、と伝えるように。寂しいという自分の感情を紛らわせるために。弱気な自分を奮い立たせるために。
「温かいなぁ……」
温度すらも感じられないけれど、確かに温かい。胸の内が温かい。
ぽかぽか、ぽかぽか。まるで陽だまりの中にいるように。
「ありがとう、みんな」
寂しい表情が一変、蕾がほころぶように、椿の顔がほころんだ。
