陽だまり集め






『命懸けの覚悟』


 私、こんのすけは政府おかかえの管狐だ。元は妖怪であったが、人間に馴染みやすいよう、少し手が加えられている。
 こんのすけの主な仕事は審神者様のサポート役。審神者業務のチュートリアルや政府から寄越される指令や情報の伝達を行っている。
 審神者一人につきこんのすけ一匹。それが本丸を運営する上でのルールの一つ。当然私にも、お仕えする主様が存在する。
 私の主となる審神者様は、少し特殊な方であると聞かされた。過去からの来訪者であり、ブラック本丸出身の刀剣男士様の主をしておられるのだと。――俗に言う、ブラック本丸引き継ぎ審神者である。
 ブラック本丸出身の刀剣男士様は主たる審神者に手ひどい扱いを受け、心身ともに深く刻まれた傷を抱えた被害者だ。その扱いは難しく、対応を間違えれば彼らが加害者となることもある。
 そして、そうさせないために、私は政府より「厳しい目を持って審神者に接しよ」との命を受けたのである。
 ――こんのすけに厳しくされた程度で刀剣男士様に八つ当たりするようなら審神者の資格なし。
 過去の人間であるというハンデもあり、政府はこの審神者を厳しい目で見るしかないのだろう。敵側に寝返られでもしたら、たまらないから。
 そんな理由もあって、先入観などの余計なものを一切持ってはいけないということで、私は審神者様のプロフィールも、前任の悪行も、何一つ知らされてはいない。
 屑政府め。自分達の汚点を晒したくないだけだろうが、などと思ってはいない、決して。
 とにもかくにも、刀剣男士様の心身の回復に努める審神者様の手助けをしつつ、彼らにふさわしい審神者であるのかを見極めることが、私に下された命だ。私はそれを全うさせていただく所存である。
 そんな覚悟のもと出会った審神者様は、どこまでもまっすぐに相手の目を見る女性だった。


「今日からこの本丸の主となる審神者だ。よろしくな、こんのすけ」


 そう言って膝を追った審神者様は、やましいことなど何一つないというような、澄んだ瞳をしていた。




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