感情バグ個体・日光一文字の記録
刀解処分を待っている間、少し時間があるので、スレを立てた
暇な者、スレタイに心当たりのある者は聞いてくれると有り難い
待って!!?
日光さん!!?
どういうことなの!!?
俺は先日行われた期間限定の鍛刀にて本丸に降りた個体だ
しかし俺にはその時点で重大な欠陥があり、その欠陥というのが「感情バグ」だ
感情バグ?
初めて聞いた……
どんなバグなの?
政府の定義づけによると、感情バグとは、その名の通り「感情」の部分で大きな欠陥があることを指す
例として、一つの感情が必要以上に大きく表れ、振り切れたりするもの
まったく感情が理解できず、周りの反応を見て行動するだけの機械のようなものがいるという
他にもサイコパスになったり、一つの感情が振り切れて、審神者や仲間の刀剣男士を傷付ける場合もあるとのこと
こういった刀剣男士は表面化していないだけで実は多いそうだ
また、人の身に慣れないが故の一時的なものであるケースがほとんどであり、馴染みの刀剣男士の顕現など、何かしらの転機に症状が収まることが確認されている
しかし、この問題が本丸内で浮き彫りになるほど重症の状態で顕現した個体については、症状の緩和事例は未だゼロであるとのこと
むしろ顕現が長引くほどに重症化し、取り返しのつかない事件を起こしているそうだ
そのため錬結や刀解を持って、この問題を解決することが推奨されている
そんなバグあるんだ!?
まぁ、刀剣男士って刀だしなぁ……
そういう不具合があってもおかしくは無いのか……
仲間や審神者を傷付けちまう場合もあるのか……
それは確かに致命的だな……
日光さんもそうなの? そんな感じしないけど
俺の場合、一つの感情が必要以上に強く表れたり、負の感情が長続きする性質を持つ
また、他人の感情に引きずられやすく、それが負の感情であった場合、簡単に囚われてしまう
戦場での高ぶりが治まらず、主を怯えさせてしまったり、苛立ちを隠しきれず、血の気の多い刀と衝突してしまうなど、様々な問題を生じさせてしまってな
「俺らしくない」と不審に思ったどら猫たちが政府に意見を求めたことで、このバグが生じていることが判明したというわけだ
どうにか出来ないか、と主が掛け合ってくれたのだが、主自身が感情の起伏の激しい性質でな
俺とはどうにも相性が悪く、一ヶ月の様子見期間を経ても悪化の一途を辿るばかりで、改善の余地は無いという判断を下さざるを得なかった
俺としても心に振り回されるのに疲れてしまっていたし、一文字の刀の矜持が感情一つ制御できない自分を許せなくてな
この処分に不満はない
だが、この処分を哀れんだのか、政府の刀に「最期くらい心穏やかに過ごせる場所で休むと良い」と、とある本丸を紹介されたんだ
それが「姐さん」と呼ばれる審神者の運営する本丸だった
知ってた
やっぱりかー
途中からそんな気はしてた
え、有名なの、この審神者
一部の審神者には有名
掲示板常連とか、情報収集が好きな奴とかは知ってるんじゃないか?
俺は本丸に着いた当日の近侍だった薬研藤四郎が『姐御』と呼んでいたので、『姐御』と呼んでいる
初めは違和感しかなかったが、すぐに慣れるものだな
しかし、お頭まで「姐さん」と呼んでいたのには驚いたな
山鳥毛が「小鳥」呼びじゃない、だと……?
いい年したおっさんが「小鳥」呼びに耐えてるって言うのに……
そういや姐さんってどんな審神者?
スペックとか書ける?
どんな本丸なのかも書いて欲しいな
ああ、了解した
姐さん
若い女性の審神者
湖面のように常に落ち着いていて、穏やかな性格をしている
しかし言動は大胆で男前
刀剣たちからも厚い信頼を寄せられており、お頭も彼女の主としての器を讃えている
俺が彼女の本丸で過ごしたのは3日という短い期間だったが、とても良い本丸だと感じた
戦場での高ぶりなども、ここに帰ってくれば落ち着くのだろうと、そう思わせる
「ここに帰りたい」と思わせるような場所だった
これもまた、彼女の心根と技量の為せる技だろう
へぇー、本当に良い本丸なんだなぁ
たった3日の間に「ここに帰りたい」と思わせるって凄いな
そんな本丸なら行ってみたいなぁ
自分の本丸はどんな感じだったの?
俺の本丸は真逆だったように思う
海のように常に変化する本丸だった
主は善良な性質の人間だったが、気分の浮き沈みが激しい
切り替えが早い、とも言えるのだが、俺の性質とは相性が悪かった
俺に生じたバグの性質上、一度負の感情を持つと、それがずっと燻ってしまうんだ
故に一日中、不機嫌で過ごす羽目になることも珍しくはなかった
他にも、戦場での昂ぶりが治まらず、主に怯えられることも少なくはなかったな
本丸内で殺気立っていることを咎められることもあったが、感情をリセットすることが出来ないんだ
それが元で若い刀と衝突しかけたこともあったな
致命的なまでに相性が悪かったんだな……
一日中ずっと苛立ってなきゃいけないとか、それって凄い疲れるやつじゃん……
切り替えが早いって言うのは美点だし、それに助けられる刀もいるんだろうけど、日光との相性は……って感じだったんだな
姐さんの本丸では落ち着けた?
ああ、あんなに心が凪いだのは初めてだ
そう言えば、山鳥毛が「小鳥」呼びじゃないって話題にしてたけど、そこら辺も聞きたいな
俺は姐さんの本丸でどんなことがあったのか聞きたい
うちの一文字一家がめっちゃ難しい顔してるから、安心させてあげられるようなエピソードないかな?
ああ、それについては話しておかなければならないと思っていたんだ
是非聞いて欲しい
安心させられるような内容かは分からないが、思い出になったものを書いていこう
ではまず「姐さん」呼びの件から行こうか
「初めて来る本丸では落ち着かないだろう。けれど出来る限り心穏やかに過ごして欲しいと思っているから、馴染みの刀と過ごすと良い」と姐御に言われてな
俺は一文字の刀とともに過ごすこととなった
そのときに姐御のことをどら猫ならまだしも、お頭まで「姐さん」と呼んでいるものだから驚いてな
俺「お頭も彼女を『姐さん』と……?」
お頭「ああ。例え比喩でも彼女を『小鳥』などとは呼べん……」
どら猫「姐さんを『小鳥』って呼べる個体が本当にいるなら、見てみてぇ気もするな」
お頭「ははは、私以外が『小鳥』と呼ぶことを許すとでも?」
お頭の顔は笑っておられたが目は本気だった
刺青も真っ赤になるほどで、その怒りに俺も引きずられかけたな
それに気付いてすぐに怒りを収めてくれたが、なかなかの苛烈さだったぞ
「小鳥」って山鳥毛にしたら「主」って意味だからな
姐さんの刀でもない奴が呼ぶのは許せないよな
ところで、山鳥毛が姐さんって呼んでも違和感無いような審神者なの?俺的に違和感しか無いんだけど
姐御の漢気を知ってる身としちゃあ、『小鳥』はあまりにも可愛らし過ぎる
あの剛気を『小鳥』などとは呼べまいよ……
正直、山鳥毛の「小鳥」呼びを知った時、姐さんをどう呼ぶのか気になってた
俺も
姐さん呼びで正解
マジか
俺も最初はお頭の言うことが理解出来なくてな
思わず困惑したものだ
姐御はあまりにも穏やかすぎる
彼女は審神者に向いていないのではないかと、そう思うくらいに
その旨をお頭に伝えると、お頭は苦笑した
どら猫も乾いた笑みを浮かべていたな
どら猫「日光の兄貴……。ありゃあ、俺達の手に負えるもんじゃねぇ、にゃ……」
お頭「ああ。彼女を侮ると痛い目を見るぞ?」
俺「侮っているつもりはないのだが、彼女が戦に向いているとは思えず……」
お頭「ああ。私もそう思い、我が翼の庇護下に置こうとしたことがある。だが、それはあまりにも愚かで烏滸がましいことだったと気付かされたよ」
どら猫「俺は止めたんだけど、お頭がよぉ……」
お頭「ああ。きちんと忠告を聞いておけば良かったと反省している」
俺「それは……どういう……?」
お頭「彼女があまりにも危ういのでな。戯れに『私の炎で焼かれてしまうぞ』と脅かしたことがある」
俺「彼女は何と?」
お頭「『ならば、私を灰にするつもりで私の前に立つが良い』と言われたよ」
お頭「『そのくらいの気概で向かって来られる程度で丁度良いんだ、主という立場は。現状は少し、生ぬるくてな。今一度、気を引き締めたい』」
お頭「『一文字の長として、私の刀として、一切妥協せずに私を裁定しろ。そして私が主としてふさわしくないと思ったならば、その刃を持って私を斬り伏せ、その炎で焼き尽くせ。血の一滴さえもこの世に残すな』」
お頭「『私に異論がないのなら、私の刀として私とともに果てろ』」
お頭「『改めてここに誓え。私の刀、無銘一文字 山鳥毛よ』と」
お頭「試すようなことを言った自分が恥ずかしくなったな。だが、同時に誇らしくもあった。彼女を主と定めた私の目は間違っていなかった、と」
お頭「彼女は間違いなく刀剣男士を率いるに足る、立派な審神者だ。普段は春のように穏やかな人だが、気を引き締めていなければ、私とて簡単に呑まれてしまう」
お頭「故に、その心配は不要だ、日光一文字。なに、彼女の行く道を阻むものは我らの刀の錆にするだけのこと」
お頭「彼女の敵は私が斬る」
一文字の長の本気を見せられた
うちの本丸では見ることが叶わなかったので、胸の動悸が酷かったのを覚えている
ひええ……
流石姐さん、最高にかっこいい
山鳥毛相手にこんなん言えねぇよ、普通……
そんでもって山鳥毛相手にここまで言わせちゃうのかぁ……
姐さん最高だな???
ちょもさんの「私が斬る」発言、頼もしすぎない???
ドキドキがヤバい
ちょもさんに立派な審神者とか言われてみて~~~!
ドキドキしちゃう日光さんに激しく同意
つーか、南泉に「手に負えない」って言わせて、山鳥毛に「呑まれてしまう」って言わせるとかなんなの姐さん
お頭相手に啖呵を切って圧倒し、お頭にここまでのことを言わせるのは、生半可な審神者では不可能だろう
しかしどうにも同じ人物とは思えなくてな……
俺「一文字の長相手にそこまで言えるのか、あの審神者は……」
お頭「彼女の前では皆等しく一振りの刀だ。“私だから”言ったわけではないだろう」
俺「……彼女の印象と結びつかないのだが、」
どら猫「分かるぜ。普段は穏やかな人だし、本当に同一人物か? ってなるのも無理はない。一緒に過ごしている俺達でも、普段はただの子供にしか見えないときがある」
お頭「意図的に見せないようにしているのだろう。彼女は自分をつけあがらせるな、と再三忠告してくるから」
俺「つけあがらせるな、とは?」
どら猫「審神者の中には道を踏み外しちまう奴もいるだろ? 自分をその一人にさせるなってことだ。『道を踏み外しそうになったら殴ってでも止めろ。道を踏み外したら斬り殺せ』って約束させられるんだよ、姐さんの刀はみんな」
お頭「彼女の考える主従の在り方というのが『下が上を正し、上が下を律する』というものでな。それらから察するに、必要以上に主として振る舞うことを良しとしていないのだろう」
あんな年若い娘がこんな覚悟で彼らの前に立っていると知って、思わず絶句してしまったよな……
つまり全刀剣男士に裁定されているってことだろ?
その状態でなお「生ぬるい」って言えちゃう姐さん、控えめに言ってヤバい
姐さんって確か20になったかなってないかくらいだろ?
まだまだ小娘じゃん……
何でこんなこと言えんの……?
うっそ、そんな若いの!!?!?
若いよ
刀剣男士からはよく「子供」って言われるくらいにはね
これは絶句するのも無理はない
なんか印象がちぐはぐなんだけど……
うちの一文字一家も頭抱えてるわ……
「これは確かに庇護下には置けないな……」
「庇護下に置こうにも、自分から飛び出していきそうだにゃ……」
「この娘は守らせてくれそうにないな……」
他本丸の一家の頭まで悩ませちゃうとかすげぇな、姐さん
>>の一文字の見解が全くもってその通りなんだよなぁ……
てか姐さんの南泉くん、あんまりにゃーにゃー言わないね?
うちの南泉くんはもうちょっと猫っぽい気がする
確かに
さては姐さん、まーた姐さん節を炸裂させたなー?
山鳥毛に言ったようなことを南泉にも言ってるってこと?
言ってるだろ、絶対
むしろ言われてないわけがないんだよなぁ
それは俺も思ったな
お頭の前だから背伸びしているのだろうと思っていたのだが、どうやらお頭に言ったようなことをどら猫にも言っていたようだ
どら猫「つーか姐さん、誰彼構わずたらしすぎじゃねぇ?」
お頭「ははっ、確かに『ともに果てろ』と言われたときは口説かれているのかとも思ったがな」
どら猫「姐さんにその意図はねぇんだけどな。刺さるんだよなぁ、言葉の一つ一つが」
俺「……お前はどのようなことを言われたんだ?」
どら猫「ええ? お頭の前でこれを言うのは気が引けんだけど……。その、内番中につい、猫の呪いに負けちまったことがあって、昼寝を少々……」
お頭「ほう?」
どら猫「いや、今はもうねぇから! 大丈夫だから!!」
お頭「ふむ、それで?」
どら猫「それで、それを姐さんに見つかって『どうした、猫のようにごろごろと。そのまま鈍に成り下がるつもりか?』って言われてよぉ」
どら猫「『私に鈍を愛玩する趣味はない。』『呪いなど喰らい尽くせ。噛んで、砕いて、飲み下せ。そして呪いを喰らったその身ごと、すべてを私に差し出すが良い』」
どら猫「『私は君を使い潰したい。君だって、私に振るわれたいだろう? ならば、呪いなどに足を取られている暇はないはずだ』」
どら猫「『打ち勝てよ、南泉一文字。私の刀よ』」
どら猫「すべて差し出せとか使い潰したいとかずるくねぇ?」
お頭「それは……ずるいな」
俺「そこまで的確だと、むしろえぐいな……」
胸を打つというか……
心鉄に響くというか……
思わず頭を抱えてしまったよな
えぐい
えぐいな
ずっるい!!!
これ主に言われたい
分かる
こんなこと言われたら呪いも薄まっちゃうよね!!!
姐御の話をしていると気持ちが高ぶってしまうので、一旦打ち切って、本丸内を案内して貰うことになった
姐御の本丸は数こそ少ないが、皆一様に錬度が高く、精神的にも余裕を感じさせるものが多かった
うちの本丸にいたへし切は誰かを叱っていることが多かったように思うが、この本丸ではそのような姿は終ぞ見なかったな
叱られるようなことをする刀がいなかったというのもあるかもしれないが、主が違えば刀もここまで変わるのかと、酷く驚いたものだ
へぇ、うちは一日一回は長谷部の怒鳴り声を聞いてる気がする
うちは歌仙かなー
姐さん本丸はみんな姐さんに似て、男前で穏やかな刀になっちゃうんだよなぁ
中身と外見が一致した鶴丸とかも存在するし、一部では後天的亜種本丸とも言われてる
中身と外見が一致する鶴丸とか都市伝説レベルなんですが、それは
そんな鶴丸がいるなら爪の垢くれ
煎じてうちの鶴丸に飲ませるから
うちにも頼む
ああ、いたぞ
本丸内の案内の途中で偶然会ってな
一応、3日間世話になる訳なので、一同そろっている場で挨拶はしたのだが、一振り一振りと言葉を交わしたわけではない
この本丸の鶴丸国永との対面はこれが初となる
そのとき彼は縁側で何やら針仕事をしていた
鶴丸「おお、一文字が勢揃いしているな。本丸内の散策かい?」
お頭「ああ。3日間とは言え、この本丸で過ごすことに変わりはない。知っておいて損はないだろう」
鶴丸「ああ、そうだな。裏庭に咲いた花の美しさを知らずに帰ってしまうのは実にもったいない」
鶴丸「挨拶が遅れたな。鶴丸国永だ。ここは俺達の自慢の本丸だ。どこを切り取っても美しい。存分に楽しんで行ってくれ」
俺「日光一文字だ。3日間、世話になる」
俺「ところで、それは? 見たところ、貴殿の装束ではなさそうだが」
鶴丸「ああ、これかい? これは姐さんの羽織だ。この間、引っかけて破いてしまったらしい。姐さんは裁縫が得意ではないから、俺が修繕を買ってでたのさ」
俺「そうなのか……」
どら猫「うん? でもその羽織、裏地にそんな刺繍なんてあったか?」
お頭「ああ、もしかして、“驚きの仕込み中”というやつかな?」
鶴丸「ふふ、そうとも。破れた羽織が綺麗になって返ってくる。驚きだろう? ああもちろん、手を加える許可は貰っているから、安心してくれ」
どら猫「そこら辺の手抜かりがねぇことはよく知ってる、にゃ」
お頭「しかし器用なものだな。見事な椿だ。姐さんも喜ぶだろう」
鶴丸「俺はどんな些細な悪戯にも全力を尽くす。相手が姐さんなら尚のこと気合いが入るというものさ」
俺も見せて貰ったのだが、赤い布地に金糸で椿の花を描いていた
とても繊細で美しく、既製品と言われても信じてしまうほどの出来だったぞ
何というか、俺の知る鶴丸国永のイメージとの乖離が凄まじく、思わず首をかしげたな
俺「え、うん? つるまるくにながと名乗られた気がするのだが? え? 俺の知ってる刀と違うぞ???」
どら猫「気持ちは分かる」
鶴丸「今は仕込み中だから大人しいだけだぜ?」
山鳥毛「まぁ、他の本丸に比べたら大人しいだろうが、驚きの追求には余念がないし悪戯もしょっちゅうだ」
お頭達の落ち着き具合に俺も落ち着きを取り戻したが、これは仕方がないと思う
正直、“大人しい鶴丸国永”の存在が一番の驚きな気がするな
あ、なんか動揺具合にホントにバグ抱えてるんだなって思った
分かる
日光さんってあんま動揺するイメージない
でもこれは普通の個体でも動揺しそう
それホントに鶴丸???
これは仕方ない
一文字一家が口を揃えて「「「誰だお前は!!!?!?」」」っつったわ
途中から一緒に見てる長谷部も口ぽかんだわ
みっちゃんに見せたら「疲れてるのかな……?」って哀愁漂わせ出した
姐さんの鶴丸は鶴丸国永が御物であることを思い出させてくれる個体だから
とんでもねぇな姐さん本丸
そう言えば、日光は姐さん本丸について、どこまで知ってるの?
うっすらとした概要だけなら
詳しいことは何も
心穏やかに過ごすことを目的としているから、知る必要はないと言われてな
俺は刀解処分を待つ身
深入りする気はないので、追求はしなかった
そっか
え、何? なんか問題ある本丸なの?
姐さん達に問題はないよ
うん、姐さん本丸は誰が見ても優良本丸
でもトラブルに巻き込まれやすくてさ
まぁ、ホワイト運営なら文句はないけどさ
ああ、それについては俺も保証する
あの本丸は良いところだ
さて、続きを語ろうか
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俺「すまない、お頭! 失礼する!」
慌てて廊下に出たので被害は無かったが、お頭が手ずから料理を作ってくれたという事実に誉桜を爆発させてしまってな……
廊下から庭に掛けて凄い事に……
お頭「ははは、これほどまでに喜んでくれるとはな。作った甲斐があった」
どら猫「いやでもこれ、広間で食べるのは難しいんじゃ……?」
お頭「確かにそうだな。どうしたものか……」
どら猫「もういっそ廊下で食おうぜ。姐さん! 一文字一家は廊下で食っていいか?」
姐御「そんな寂しいことを言うな。みんなで庭で食べよう」
へし切「では、何か敷くものを用意しましょう」
姐御「頼む」
と急遽庭で食べる事になった
庭に咲いていた花が丁度見頃だったこともあり、ちょっとした花見をすることになった
うちの本丸とは違い、穏やかなものだったよ
けれど静かだが楽しくて、誉桜が止まらなかったな
俺と一緒に過ごすという決まりのあったお頭達に、その日のうちのほとんどを廊下で過ごさせる羽目になったのは本当に申し訳ないと思っている
この本丸に日光さんはいないの?
ああ、いないようだ
姐御は刀個刃との縁がないと、なかなか刀剣男士を降ろせないらしい
この本丸で引き取って貰うことは出来なかったの?
姐さんの本丸なら、心穏やかに過ごせそうじゃん
いや、多分無理だ
>>どういうこと? さっきいってた意味深なやり取りに関係ある?
>>ある
だからあんま追求すんなよ
この本丸は負の感情を持つことが少ない
姐御の心根が負の感情を持つことに適していないからな
だが、その分外部からの悪意に晒されやすいんだ
食い物にしようと考えるものは決して少なくはない
その感情を俺が食って、それを姐御達にぶつけない保証はない
それに、俺は主の刀だ
いくら姐御が優れていようと、俺には主と定めた審神者がいる
故に、これでいい
俺の他にも、このような事で悩んでいる者はいると思う
そういう者は隠さずに打ち明けた方が良い方向に進むこともある
また、周囲の者が少しでも違和感を感じたら、放置せずに誰かに相談してやって欲しい
俺は対処が早かったから大した問題は起きなかったが、少しでも対応が遅れていたら、取り返しのつかないことが起こしてしまっていたかもしれない
俺の話で少しでも理解を示してくれる者や、勇気を持ってくれる者が増えることを願う
では、そろそろ時間だ
話を聞いてくれてありがとう
そっか……
日光の決意は固いんだな
やっぱり刀と人間は違うんだな
もっと注意してみんなのことを見るようにするよ
さよならとか言いたくないから、こう言うな
いってらっしゃい
そうだな
話しにくいことだったと思うけど、話してくれてありがとな!
いってらっしゃい
またな!
ああ、行ってくる
行かないでくれ
某月某日、日光一文字
刀解処分、完了
