姐さんにガチ恋男士






うちのやらかした和泉守の話して良い?

今度は兼さんかぁ
兼さんも悲恋ですか???
いや、姐さんが刀剣男士を恋愛対象として見れない時点で悲恋なんですが

ガチでやらかしてるから気をつけてね?
うちの本丸と姐さんの本丸は生活リズムが似てるのか、万屋でよく見掛けたのね
和泉守は最初、男みたいな女審神者だなーって目を向けただけだった
腰に刀を差しているのが珍しくて、他の審神者と違って見えたけど、それだけ
でも何となく印象に残って、見掛ける度に目で追っていたんだって
そうしたら色んな表情が見えてきて、もっと色んな顔が見たいなって思うようになったそうだよ

私たち視点から見て、和泉守が姐さんを気にかけるようになった辺りから、彼の様子がおかしく見えるようになったんだ
仕事はちゃんとするけど、たまにぼーっとしてたり、やたら万屋に行きたがったり
それで話を聞いてみると、和泉守が姐さんに恋をしているのでは、と言う結論に至って、みんなで応援することにしたんだ
でも姐さんの刀剣たちは見るからに姐さんが大好き
恋かどうかは分からないけれど、あれだけ大好きなら姐さんに近付くことを良しとしないかも知れない
だから落とし物を拾って貰ったり、そういうことをして徐々に顔を覚えて貰うことにしたんだ

そういうことを経て関わった彼らは意外にも寛容で友好的
疑っていたことを申し訳なく思うくらいに優しかった
けれどむやみに姐さんの情報を渡したりはしなかった
それがもどかくしく、焦っちゃって、彼らに警戒心を抱かせちゃったんだ
私たちを警戒対象とした彼らは徹底的に姐さんから私たちを排除した
まずもって万屋に来る回数が格段に減ったし、私たちの気配を感じるようなことがあれば人混みを使って撒かれるようになった

姐さん刀剣はそこら辺きっちりしてるから
まぁ、焦る気持ちも分からんでもないかも?
でもそれで相手を怖がらせたりしたら意味ないぞ……

全くもってその通りです……
でね、その辺りから和泉守の思考が不穏な方向に傾いちゃって……
姐さんの刀剣たちへの全幅の信頼に対する嫉妬とか、このまま会えないかもって言う焦りとかで
そして本丸を抜け出して、神隠しを決行しようとしちゃったんだよねー……

そして、神隠しを決行しようとした和泉守に、姐さんは一人で対峙したそうだよ
「私は彼らに心を奪われている。彼らがより美しく、刀らしく在れるなら、この命だって差し出すのは惜しくないと、そう思ってしまうほどに」
「私には、彼ら以上に大切なものはないんだ」
「だから、君の想いには答えられない」
真っ直ぐに目を見て、はっきりと告げられたって
「止めてくれないか、神隠しを。でないと、私は君を斬らなければならなくなる」
「敵として、君と刃を交えることになる」
そう言って、自分を拒むように刀を首に押し付けられたって
和泉守を拒む目は、酷く冷え切っていて、それこそ、自分を害する敵を見るかのような、底冷えのするほど冷え込んだ眼だった
いつも温かく自分を見つめてくれた目が、優しく微笑んでくれた眼差しが、今やその面影を探すことすらできない
こんな瞳は見たくなかった
ずっと、温かく笑っていてほしかった
大好きだから
愛しているから
幸せそうにしていてほしかった
まるで、命のやり取りをする覚悟を持った、悲壮な顔なんてして欲しくなかった
殺すことも厭わないという様な悲しい顔なんてみたくなかった
そんな顔を自分がさせてしまったことが、好きな人から笑顔を奪ってしまったことがショックで……
そして神隠しを行おうとしたことに責任を感じて自ら刀解を申し出たんだ
正直これは許されることじゃないし、私も刀解するしかないのかもしれないって
でも姐さんは未遂だからって和泉守を許したんだよ
「私は、自分に害を為す相手以外を斬るつもりはない。そして和泉守は、寸の所で踏みとどまってくれた。その事実だけで、十分に情状酌量の余地があるというもの」
っていってさ
私は思わず泣いちゃったし、和泉守は姐さんの器のでかさに惚れ直した
本当に良かったのかなって言う考えはあったものの、今後とも友好的な付き合いをしていくことになったんだ

マジか
これ許しちゃうの!?
え!?姐さん刀剣たちも!?

姐さん刀剣たちは渋い顔をしていたよ
けれど万が一があったら斬ればいいかって無理矢理納得させてるみたいだった
ちなみに和泉守も渋い顔をしてたよ
「そんな簡単に許すんじゃねぇよ。……諦められなくなるだろ……」
って
でも姐さんはあっさりと言ったの
「別に諦めなくて良いじゃないか。その気持ちに答えられる日が来ることはないだろうが、その気持ちを否定する気はないぞ?」
って
「私に君の心を制限する権利なんてないし、私が君の心に答える義務もないしな」
「…………諦めなくて、良いのか?」
「そう言っている。それとも何か?君は私にその心を殺して欲しいのか?」
「そんなわけねぇ!俺はあんたを諦めたくねぇ!!」
「ああ、その意気だ」
「他人事だな、おい!!!」
「勘違いされては困るからな。今の私に、君へ傾ける情など無い」
「……っ」
「まずは私や私の刀剣たちの信頼を回復させることだな」
そう言って姐さんは颯爽と帰っていった
後で気付いたことなんだけど、姐さんが私たちを許したのは、和泉守を刀解することによって起こる私たちとの確執を恐れてのことだったんだと思う
警戒は止めない
彼がもう二度と間違いを起こさないと確信するまで
けれど諦めなくて良いってことはチャンスがあるってこと
だから和泉守は
「いつか必ず惚れさせてやっからな!」
ってポジティブに口説き落とそうと感張ってるよ
でも、絶対二人きりにはならないし、人目のある所でしか会わないんだ
あと、本丸に遊びに来てくれた時も会わなかったよ
本丸だと気が緩んでしまうから駄目だって
自分を戒める為にも、自分が罪を犯しそうになった万屋でしか会わないって決めてるんだって
許してくれたのは嬉しいし、寛大な対処に感謝しかないけれど、これだけは言わせて欲しい
心広すぎだよ、姐さん




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