姐さんにガチ恋男士






大般若と元見習いで現在政府役人(霊力の調整が出来なくて、一振り顕現させるのも、それを維持するのも命がけ。なので役人に)
ケア専門とか、そういう審神者になりたいと思っていて、経験のある審神者のもとで研修を志願
それで姐さんに白羽の矢がたった
その為他の見習いより姐さんの内情に詳しい
けれど審神者にはなれず、政府役人で保護課に所属することに

大般若はグレー本丸出身
審神者が特定の刀剣男士を贔屓するものだから内部分裂してしまい、その仲を取り持つために扮装していた
疲れ果てていた時に姐さんと出会って、恋に落ちた





他の女の人は「素敵な女性」って言うんだけど、姐さんの事だけは「いい女」って表現するんだよ
それで気付いたんだ、大般若にとって姐さんは特別な人なんだなって
えもい

あと、ふと呟いたのを聞いたんだ
姐さんが腰に佩く紅紫苑を見て「羨ましいな……」って
その後すぐにハッとして、頭抱えてたよ
あれは姐さんの守刀だ、嫉妬するのは違うって
ここら辺からかな
色々と考えてるようだった
思い詰めてるようにも見えて心配だったよ
そんな俺の心配を他所に、大般若は吹っ切れたような顔をして言ったんだ
「姐さんと別の国の審神者で、俺の引き取りを希望する審神者を教えてくれ」
って

えっ!?
いや、姐さん本丸には既に大般若いるから別の審神者の元に行くのは分かるけど、何で別の国???

姐さんの本丸には既に大般若がいる
それに、もし姐さんの本丸に引き取られても、上手くいかないだろうって
引き取られず、このまま交流を続けても、この関係が破綻するのは目に見えているって
大般若は姐さんを独り占めしたくて、姐さんの特別になりたいと思ってしまっている
姐さんの刀剣男士に明確な嫉妬を抱えてるんだ
姐さんの刀剣男士たちは、姐さんの幸せが大切だ
だから彼らは自分が姐さんを幸せに出来ると思ってくれたら、味方になってくれる奴も出てくるだろう
でも全員がそうとは限らない、反対する奴も当然居るはずだ
そうなると本丸は二分することになるだろう
けれどそれは自分が苦しめられてきた状況に、姐さんを追い込むことになる
だから、もう二度と会わないって約束したんだ
いや、誓いを立てたんだ
姐さんを不幸になんてしたくないから
別れを告げられた時の姐さんは、凄く印象的だった
口をぽかんと開けて呆然としててさ
頭では理解してるけど、感情が理解したく無いって拒んでる感じだった
それでさ、どんなに辛い境遇でも、苦しい状況でも笑顔を絶やさない姐さんが、今にも泣き出しそうな程に目を潤ませてたんだ
まるで道に迷って、ひとりぼっちって気付いた子供みたいだった
大般若も予想外だったらしくて、普段からは考えられないくらい慌ててたよ

大般若の話は可能性の話でしかない
けれど実現してしまったら、本丸崩壊に繋がりかねない
姐さんは審神者として、刀剣達の主として、少しでも危険の芽を摘まなければならない
それは分かっている
分かっているんだけど、主としてではなく、一人の人間として納得し切れていないようだった
だって姐さんからしたら、昨日まで仲の良かった友人に、いきなり「今日から絶交ね」って言われたようなもんだ
納得出来るだけの理由があっても、納得したくはないだろう
どうしてそこまでしなければならないんだって
もっと他に選択肢があるはずだって
そんなふうに思っているのがはっきりと分かる表情だった

色んな別れをして来た姐さんにとって、一番残酷な言葉だろ
それ
別れを告げられる系は姐さんの地雷の一つ
むしろ一番駄目なやつ
姐さんのトラウマな感じする
そりゃあな
姐さんは不本意な刀解も経験してるし、会いたくても会えないやつは多い
生きてていつでも会えるのに、会いたくても会えないなんて、姐さんにとっては何より辛いことだろ

うん
研修中にたくさんの話を聞いた俺としてはやめてくれって思ったよ
それは姐さんにとって何より辛い事だって
でも、姐さんは何も言わなかった
分かってるんだ
大般若の決意が変わらないことも
自分が何を取捨選択すべきかも
だから姐さんはとびっきりの笑顔を浮かべたんだ
「新しい審神者の元で戦う選択をしてくれたこと、嬉しく思う」
「辛いこともあるだろう。苦しいこともあるだろう。けれどそれと同じだけ、楽しいことや嬉しいことがあるはずだ」
「君が新しい本丸で幸せにやっていけることを心より祈っている。元気でな、大般若」
大般若はしばらくその笑みに見惚れてた
それから、それはそれは幸せそうに笑ったんだ
「最後にあんたの飛び切りの笑顔を独り占め出来て、その上あんたに幸せを祈られたんだ。幸せになれない訳がないさ」
そう言って最後に握手をして、二人は別れた

別れを告げて、政府に戻ってきた大般若は晴れ晴れとしていたよ
あんなに姐さんを傷付けておいて、この野郎って思ったね
確実に姐さんの傷になったよっていうと、大般若の奴、手で口元を隠してそっぽ向いたから、何事かと思って見やったら、ニヤける口元を隠してたんだよ
「そうか、傷に……。いや、喜んではいけないのは分かってるんだが。それでも、あの人の心に俺が残るのか……」
って、めちゃくちゃ幸せそうにいうんだよ
だから俺は言ってやったね
「あの人がお前を忘れる訳ないだろ!」
って
「でも勘違いするなよ?あの人は全部覚えてる。出会いと別れの全てを」
「どんなに苦しい出会いでも、どんなに辛い別れでも、決して、決して忘れない」
「お前が嫉妬してた紅紫苑もそうだ。悲しい別れの象徴だ。今でも心に残る傷そのものだ。それでも側に置いている意味を、測れないお前じゃないだろう?」
「あの刀は"紅紫苑"。姐さんが名付けた、姐さんの守刀」
「姐さんが何で紅紫苑って名前をつけたか教えてやるよ。"忘れない為"だ。分かったか、馬鹿野郎!!」
「……そうか、そうか。姐さんは覚えててくれるのか……」
「いや、そんなことは分かっていたな。そういうところに惹かれたんだ、俺は」
「自分が傷つくと分かっていて、それでも見捨てられない愚かな優しさや、どうしようもない程に真っ直ぐな心根が彼女の魅力だ」
「そんなあの人の心に、いつまでも残り続けるのか……。ああ、それは、とんでもなく幸せなことじゃないか」
そう言って、大般若は一筋の涙を零した
「だ、大丈夫か……?」
「ああ、俺は大丈夫だ。ああ、まったく。俺は最高の女に惚れたもんだ」

その大般若、うちで引き取ったやつかも
はっ!?
マジで!?
その大般若、あんまり酒強くないだろ?
うん、すぐ酒が回って、割とすぐ寝ちゃうタイプ
えっ、うちめっちゃ呑兵衛なんだけど
うちもお酒強いよ、大般若さん

確実にうちの大般若だわ
酒に酔うと、いつも同じ人のことを話すんだ
「最高にいい女を知ってる」って自慢すんの
「行動力があって、決断力に優れていて、物事の本質を見極める目を持っている」
「他人の良いところはいくらでも見つけられるくせに、自分がどれだけ魅力的なのか分かっていないんだ。そんなところも魅力なんだが」
「人や刀を見る目があってな、彼女の周りは優しい人間と飛び切りの刀剣たちで溢れてる」
「どんな見た目?」
「可愛い?綺麗?」
「顔の造形も悪くないが、あの人の魅力はそんなところじゃない。その心根の美しさだ」
「ああ、でも、俺の幸せを願ってくれた笑顔は、この世界の何よりも、俺にとっては尊くて美しいものに見えたよ」
そう言って「愛しい」って言う感情だけを集めたような、甘く優しくとろけた笑みを浮かべるんだ
からかおうとしてた奴とか、冷やかそうとしてた奴もみんな黙っちゃうくらい、心の底から惚れ込んでいるのが分かったよ

大般若……
お前、良い男だよ……!




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