姐さんがヒロアカ世界に転生してホークスの妹になる話
・刀剣乱舞×ヒロアカ
姐さんが地獄の鷹見さん家に転生する話。
ホークスが公安に引き取られた後、母親の妊娠が発覚。
生まれたのは『剛翼』を持った女の子。けれど、風切り羽ばかりが発達している歪な形。
それを見ているとどうしても父親を思い出すため、背中を見せると蹴られたり羽を毟られたりしていた。
現状を鑑みて、父親が“敵”に類する人間なのだろうな、と察している。
母も父の被害者なのかもしれないが、自分にとっては加害者なので優しくなれない。
雄英に入ったことをきっかけに、アルバイトをしながら一人暮らしをしていくことに。
ちなみに、雄英からはヒーロー科を打診されたものの、椿の意志で普通科に通っている。
ちなみにホークスは公安に引き取られた後は母親にはノータッチ。そのため、自分に妹が居ることを知らない。
後に雄英体育祭で自分とよく似た翼を持つ女の子を見掛け、よくよく調べてみたら実の妹だと判明。
その際、一緒に集まった情報から、結構苦労していることが分かり、こっそり接触を試みる。
後ろ暗いものがなかったら引き取っていたのにな、と罪悪感を感じている。
椿も椿で、血が繋がっていたら、ホークスのヒーロー活動に悪影響を与えるのではないかと考えている。
関わっていくうちに血縁を確信する。
荼毘の暴露によってホークスの実の妹だと世間に知れ渡ってしまう。
***
書きたいネタ
・雄英体育祭で巨大ロボットを真っ二つに斬り捨てる。
・体育祭の映像を見て、ホークスが椿に面会を申し込む話。
・体育祭の様子を見ていた爆豪辺りが椿に興味を持って、実践形式での対戦を申し込んでくる。
・ホークスの過激ファンに襲われる話。それを目撃したA組の生徒達に助けられて仲良くなる。
・戦争が始まったとき、人命救助に有用な個性と見込まれて駆り出される。その際、“敵”と対峙して戦う。
「人殺しの娘? ―――――否、ヒーローの妹だ!」
「私の剛翼は兄さんの綺麗な翼と違って、人を救うようには出来ていないんだ」
「―――――討ち取ったり」
***
ホークスというヒーローがいる。福岡県を中心に活躍するNo.3ヒーロー。齢18歳にしてヒーローデビューを果たした、『速すぎる男』。
彼の個性は『剛翼』。目の覚めるような緋色の翼を背負い、空を羽ばたき、数多の事件を解決している。奇しくもそれは、この世に二度目の生を果たした、かつて審神者だった少女―――――羽飼椿と同じものだった。
「ねぇねぇ、羽飼さんってもしかしてホークスと知り合いだったりする?」
重大な秘密を打ち明けるように、潜められた声で声を掛けてきたのはクラスメイトの少女だった。椿の背負う赤い翼を見つめ、キラキラと目を輝かせている。その背後には、少女と同じように頬を上気させたクラスメイトが二人。三者三様、それぞれが期待に胸を膨らませているのが見て取れた。
ホークスというヒーローがデビューしてから、椿はよくこういった質問をされるようになった。個性というものは、大抵が遺伝であるからだ。両親の個性が合わさって、新しい個性が生まれることはある。けれど、まったく同じ個性であるとなると、血縁である可能性が非常に高い。それ故か、自分にホークスを紹介して欲しいと頼んで来るものが後を絶たないのだ。自分は無関係だと主張しても、中々信じて貰えないのには困ったものだった。
この少女達がそうでないことを祈りながら、椿が「どうして?」と尋ねた。
「だって、よく似た個性は世の中たくさんあるけど、おんなじ個性持ちって珍しいじゃん? 大抵どっちかの親から受け継ぐか、両親の個性が混じって新しい個性になるかだし」
「そうそう! だから、もしかしたら親戚だったりしないかな~って!」
「まさか。彼はテレビの向こう側の人間だよ」
住む世界が違う、と暗に告げれば、「だよねぇ」と少女達が小さく笑う。けれど、やはり心のどこかで期待していたのか、その笑みの奥に落胆が見える。それでも、彼女たちはあからさまにそれを見せたりはしなかった。中学校までとは違う態度に、椿がほっと胸を撫で下ろす。何せここはヒーローを目指す学生達の憧れの的―――――『国立雄英高等学校』。ヒーローとなるべく門戸を叩いた学生達は、困っている人を助けたい、誰かの力になりたいという想いを根底に持っている。そう言った心根を持つ子供達が集まる学校であるから、あからさまな落胆を見せれば、椿が気に病むと言うことを考えられるのだ。優しい子達だなぁ、と椿が微笑むと、少女達がほんのりと頬を染めた。
(確かに、子供の個性は親からの遺伝だ。受け継がれ、新たに紡がれるもの。故に、この世の中で、まったく同じ個性を持っているというのは珍しい。だから、どこかで血が繋がっている可能性はあるけれど……)
けれど、それは在ってはならないことだ。椿の家庭は、普通とは言い難い。椿が生まれた頃には家庭にいなかった父親。心の壊れた母親。家ばかりが綺麗な、荒んだ家庭だった。
母親は椿を嫌悪しているようだった。何故自分がこの子供を育てなければならないのかと、憎々しげに見つめてくるのだ。そうであるから、制服も教科書も買って貰えず、椿は同じ学校に通う子供達に声を掛けて、全てお下がりで卒業に至った。給食費などは何日も掛けて頼み込み、説得を繰り返してどうにかお金を出して貰った。
そう多くはなかったが、手を上げられることもあった。特に椿が背負う羽根を見ると、発狂したように暴れ回るのだ。おそらく、PTSD。椿の個性は母親とはまったく異なるものであったから、背中の翼は父から譲り受けたものだろう。母は父に強いトラウマを抱いている。故に、父を想起させる翼がトラウマのスイッチになっているのだろうと考えている。
それに加え、大人達はまだ子供である椿に隠しているようであったが、たまにスーツを着た大人達が母に接触しているのを知っている。険しい顔つきで分かる。あれは警察関係者か、それに類する組織に所属する人間の顔だ。それらのことから導き出されるのは、父が何かしらの罪を犯したと言うこと。俗に言う、“敵”に分類される人間なのだ。椿の父親たる男は。
薄暗い事情を持つ自分の家庭と、ヒーローのであるホークスに何らかの繫がりがあったら、きっと彼は飛べなくなってしまう。彼に何の落ち度がなくとも、世間がそれを許さない。
(どうか、輝く彼と私の間に、血の繫がりがありませんように)
自分とは違う美しい翼が、いつまでも大空を飛ぶことを祈りながら、椿は晴れ渡る空を見上げた。
今日のような晴れ渡る青空には、きっと緋色の羽根がよく映える。
***
面会時の会話
ホークス「雄英の偏差値、めちゃくちゃ高いでしょ? 79だっけ? 勉強とアルバイトの両立は厳しいんじゃない?」
椿「私の父はおそらく、敵に類する人間だと思われます。詳しい話を聞いたことはありませんが、家庭の現状と母の私に対する態度を照らし合わせれば、自ずと答えは見えてくる。私の中に流れる
椿「だから、このくらいのレッテルがないと、私は何にもなれないし、どこにも行けない。大丈夫、慣れるまでの辛抱ですよ」
ホークス「お母さん、君に辛く当たるの」
椿「………これを貴方に言うのは憚られるのですが、父から受け継がれたと思われる
ホークス「それ、公安に申告しなよ。公安の監視下に置かれた家族が虐待家庭なんて、公安の信用問題にまで発展しかねない」
椿「ああ、それもそうですね。一応学校には相談してあって、診断書も取ってあるんですが、他には何が必要ですか? やっぱり音声とか映像がないと駄目でしょうか?」
ホークス「………十分だと思うよ。そういうのを暴く個性持ってる人だっているし」
椿「そうなんですね。良かった。痛いの、苦手なんです」
***
面会時の会話 2
ホークス「君が体育祭で見せた動きは、怪我をしない、させない動きだ。本当はもっと動けるね?」
椿「…………はい」
ホークス「普通科に所属してるんだっけ? ヒーローは目指してないんだ?」
椿「はい。大学に進学したいと思っています。………学芸員になりたくて」
ホークス「へぇ、学芸員……。博物館とか好きなの?」
椿「はい。刀が好きで、もっとたくさんの人にその魅力を知って欲しいんです」
ホークス「……いい夢だね」
椿「ありがとうございます」
ホークス「でも、そっか。ちょっと残念」
椿「何故?」
ホークス「俺が目指しているのは、ヒーローが暇を持て余す社会なんだ。だから、有能なヒーローになりそうな子が他の道に進むのが寂しくてさ」
椿「………素敵な目標ですね」
***
ホークス「ねぇ、個性を伸ばす訓練はしてないの? 出来ることは少しでも多い方が何かと役に立つと思うんだけど」
椿「日常生活に役立てるくらいで、本格的にはやっていません」
ホークス「まぁ、ヒーローを目指してるわけじゃないから、それでも問題はないんだけどね。でも、残念なことに、今の世の中は平和じゃない。身を守る手段は持っていた方が良い」
椿「……つまり、護身術として能力向上を検討して欲しい、ということですか?」
ホークス「そういうこと」
椿「………剣術が得意です。刀でなくとも、棒状のものであれば。風切り羽もあるので、最悪道具がなくとも戦えます」
ホークス「へぇ、意外。ちょっとやってみようか」
ホークス「いや、つっよいな!? 体育祭、本気でやったら決勝戦いけたでしょ!?」
椿「流石にそこまでのレベルではないと自負しています。そも、力押しや広範囲攻撃に弱いので、轟くんや爆豪くんには勝てなかったかと。緑谷くんのパワーも圧倒的ですし、常闇くんの黒影も汎用性が高く、非常に厄介です」
ホークス「いや、お互い個性無しの剣一本とは言え、プロヒーローと互角にやり合えるのはおかしいんだよ」
椿「刀好きが高じてしまって……」
ホークス「好きなことに一生懸命なのはいいことだよ! そのままの君でいよっか!!!」
椿「はい」
***
事実は残酷だ。過去も未来も脅かす。
***
椿「血縁であることは匂わされていたから、てっきり従兄弟辺りかなぁと考えていたんですけど、兄だったんですね」
ホークス「…………そうだよ。黙っててごめんね」
椿「いえ。私も後ろ暗い家庭なのに、
ホークス「そんなの、俺が一番分っているのに、何もしなかった。勝手に、何かしてあげてる気になってた。卑怯なことばっかりして、延々と先延ばしにして、こんな最悪な形で……」
椿「………キリがないな。この話はおあいこということで終わらせましょう」
ホークス「え、いや、おあいこで終わらせられるような話じゃなか……」
椿「この先は見えました。どうせ、距離を置こうと言うんでしょう? そのくらいの予想は付きます」
ホークス「んぐっ……!」
椿「それは私のためになりません。なので、距離を置くのは無しにしてください。もしそんなことをしたら、私が第二の敵連合を設立してヒーロー社会に殴り込みを掛けますから」
ホークス「……君には無理だよ」
椿「出来ますよ。私が“敵”になる理由は十分にありますし、私のネームバリューは絶大です。鷹見椿の名前を使って自由にして良いよ、と言ったら、“敵”は喜んで暴れ回るでしょうね」
ホークス「………俺を脅すの」
椿「あなたが見当違いな親切を発揮しなければ、私は今まで通りの私ですよ」
ホークス「………………はぁ~~~。分かった。勝手にいなくなったりしないから、今まで通りの君でいて」
椿「それは良かった。ところで、兄さんって呼んでもいいですか?」
ホークス「なしてそうなると!?」
椿「同じ血が流れているのだから、私だって“敵”の子だ。世間の風当たりは変わらないのだから、お互いをどう呼んだって構わないじゃないですか」
ホークス「…………流れる血は同じでも、俺と違って、君は何もしていない」
椿「世間はそうは思っていませんけどね。それに、私はちょっと安心しています」
ホークス「…………安心?」
椿「“敵”を殺せるヒーローがいること。それは
椿「
椿「他の誰が何と言おうと、あなたは私の希望になった。それだけは忘れないで欲しい」
椿「それに、あの戦いにおいて、“敵”を殺せるヒーローは必要だった。誰かがしなければいけない役割が、偶然あなたに割り振られただけだ」
ホークス「…………」
椿「それに、私も“出来る”側の人間だと思う。自分の安全が脅かされたとき、私はそれを何が何でも排除するために動く。自分の身は自分で守らなければ、自分の未来を守れない。誰も、助けてくれやしないのだから」
ホークス「…………俺が、これを言ってもいいのか、分らないけれど」
ホークス「助けてあげられなくて、ごめん。俺、こんなでも兄貴で、ヒーローだったのに……」
椿「ふふ、ありがとう、兄さん」
椿「でも、もういいんだ」
椿「これからは、家族として仲良くして欲しい。ずっと、さみしかったんだ」
ホークス「…………俺が、兄貴でもいいなら」
***
こっそり関係を深めている兄妹
ホークス「そう言えば、君はヒーローになろうと思わなかったの? 二足のわらじを履くヒーローもたくさんいるんだし、ヒーローと学芸員を両立することは考えなかった? 俺達の個性って、結構汎用性高いし、空を飛べるのって結構なアドバンテージだよ?」
椿「確かに、この個性は多くの人を救うことが出来るだろう。でも、私の剛翼は兄さんのものより、少しだけ“敵”寄りの個性なんだ」
ホークス「どう言うこと?」
椿「私の剛翼は見ての通り歪だ。風切り羽ばかりが発達している。飛べないわけではないが、飛行は不安定そのもの。スピードも出ない。訓練次第ではマシになるだろうが、空中での戦闘は難しいだろう」
ホークス「………」
椿「そして、この妙に発達した風切り羽、とても鋭利なんだ。音波振動を付与せずとも、岩くらいなら断ち切れるくらいに」
ホークス「………マジ?」
椿「布くらいなら、刃を滑らせるだけで斬れるよ」
ホークス「いや、鋭利過ぎる。何でそんな切れ味いいの!?」
椿「さぁ……。剛翼は剛翼でも、違う人間が持つものだから、それに合わせて変化しているのかもな」
ホークス「ああ、まぁ、同じ個性でも、ちょっとずつ違った形で現れることはあるし、そう言うことかな?」
椿「おそらく」
***
仲を深めてから夢を語っても良かったかな
椿「私はヒーローに憧れるよりも先に、別の夢を見つけてしまったから」
ホークス「……聞いてもいい?」
椿「学芸員になりたいんだ。刀が好きで、その魅力を多くの人に知って欲しい。だから、博物館とか美術館で働きたいと思っていて……」
ホークス「………そっか。いい夢だね」
椿「ふふ、ありがとう」
***
私の存在が、兄さんに過去からは逃れられないのだと突きつけてしまった。
ヒーローをやっている兄さんにとって、消し去りたい過去なのに。
私ばかりが救われている。
***
兄妹バレ後
ホークス「常闇くん、ちょっとお願いがあるんだけど……」
常闇「羽飼のことですか?」
ホークス「私情でごめんね! あの子の好きなヒーロー聞いて欲しくて!!」
常闇「それなら知っていますよ。ですが、貴方と兄妹であることが判明する前の話です。現在は変わっているやもしれません」
ホークス「あ、うん、これ絶対俺じゃないやつだね!!!
常闇「はい。ベストジーニストとギャングオルカが好きだと」
ホークス「ちょっと分かるのが悔しい!!!」
常闇「どちらも素晴らしいヒーローですからね」
ホークス「でも、ギャングオルカが好きなのは意外だな……。あの人、見た目で損するタイプだからさ」
常闇「確かに異形型は見た目で敬遠される事もありますが、羽飼は見目で人を判断する人間ではありません。また、彼女はどんなに見目が良かろうと、相手が外道であれば心を動かすことはない。ですので、安心なされよ」
ホークス「……あれ、二人ってもしかして、結構仲良い?」
常闇「友人に分類して問題ないかと。クラスが違うので、話す機会にはあまり恵まれませんが」
ホークス「………ふぅん。そっか」
***
↑の後日談
常闇ギャングオルカとベストジーニストが好きな理由を聞いてきました」
ホークス「マジか、常闇くん」
常闇「まずギャングオルカが好きな理由は、学校行事で彼の経営する水族館に行った時に親切にしてもらったから、だそうです」
ホークス「親切?」
常闇「はい。見たい水槽の前に人だかりが出来ていて、諦めようとしたときに、ギャングオルカが抱えて見せてくれたそうです」
ホークス「そう言えばあの人、結構子供好きだったな……」
常闇「そしてベストジーニスト。彼はいい人の周りにはいい人が集まる、と言うのを体現しているような人だから、だそうです」
ホークス「あー……。あの人、不良の矯正したいのに、事務所に入ってくるのはいい子ばっかりって言ってたな……」
常闇「ですが、彼女は彼らをヒーローとしてではなく、人として好ましいそうです」
ホークス「人として……?」
常闇「彼女は言っていました。ヒーローでなくていいと。どこにでもいる、何でもない善人が好ましいのだと」
***
エンジェルウイング(翼の奇形)でも良かったかな……。
***
椿「あ、兄さん!」
ぶわり、と羽が広がり、バサバサと羽ばたく。
ホークス「んぐっ……! 羽パタパタしとう、ばり愛らしか……!」
椿「だって、兄さんに会えるの嬉しいんだもの。当然だろう?」
ホークス「んんん……!」
***
耳郎「感情が翼に現れちゃうって恥ずかしくない?」
椿「そうだろうか? "家族に会えて嬉しい"は悪い感情ではないのだし、恥ずかしがるようなことではないと思うのだが……」
耳郎「あー、ウチの言い方が悪かったね。家族に素直になるって照れない?」
椿「ああ、なるほど。面映いと言うのは確かにあるけれど、私はそれ以上に"会えて嬉しいよ"と伝えたい気持ちの方が大きいな」
耳郎「そっか。本当はそう言う気持ちって、素直に伝えるべきものだもんね。ウチももうちょい素直になれると良いんだけど、やっぱり気恥ずかしい気持ちの方が勝っちゃうかなぁ……」
椿「ふふ、大丈夫だよ。きっと素直になるのが難しいだけだと、君のご家族は理解して下さっているさ」
***
ホークス「そう言えば、困ってることはない?」
椿「今はないかな。あの人とは離れられたし、バイトも出来るから」
ホークス「…………あの人と暮らしてて、嫌なこととか、辛いことが多かった?」
椿「まぁ、機嫌が悪いときに当たられたりはあったよ。でもそれより、お金を出してくれないことの方が大変だったな……」
ホークス「は?」
椿「教科書や制服は兄弟の居るご家庭にお下がりを貰って凌いだし、給食費は頼み込んでどうにか出して貰っていたんだ」
ホークス「は?」
椿「後は学校の先生とかに相談して、中学生でも働ける所でバイトをさせて貰ったり……」
ホークス「は?」
椿「だから、今は本当に困ってないんだ。たまにバイト代の無心をされるけど、わざわざこちらに足を運ぶ気はないみたいだから、こちらから接触しなければ問題ない」
ホークス「……………(頭抱え)」
***
ホークス「え、何その羽。何があったの」
椿「あー……。ちょっと、色々あって……」
ホークス「色々って何。普通科は授業で個性使うことなんて殆どないでしょ? あの人に毟られたの?」
椿「いや、あの人には会っていないよ。街中で突然毟られて……。私も何がなんだか……」
ホークス「は??? 相手の顔は分かる? 何か言ってた?」
椿「顔は覚えているよ。相手の行動の理由も判明しているんだが、理解が追いつかなくて……」
ホークス「一から説明してくれる?」
椿「えっと……気に病まないで欲しいんだけど、兄さんのファンだと言う女性が、兄さんと似たような羽を持つ私に嫉妬したと言うのが理由で……」
ホークス「あー、なるほどね……」
椿「何でも、兄さん以外が赤い羽根を背負っているのが気に食わないようで、それはもう凄い勢いで毟られてな。あまりの事に飛んで逃げようとしたら、翼にしがみ付かれて、その状態でも毟られて……。いやぁ、執念という言葉を体現しているような女性だったよ」
ホークス「こっわ……。てか、その勢いで来られたら、他にも怪我してるんじゃない? どこか痛めたりとかしてない?」
椿「頬を引っ掻かれたくらいだよ。もう治っている」
ホークス「女の子の顔に傷を付けたのか、その女……」
ホークス「他にもあるよね?」
椿「まぁ……。兄さんの血縁なのではないかと話かけられて、繋ぎを取ってくれないかと。見ず知らずの人だったし、兄さんと血が繋がっていることは公にしてはいけないと言われているから、他人ですと言って逃げようとしたら、紛らわしいと激昂して……」
ホークス「……………」
椿「ただでさえヒーローは忙しいのに、そこに偶像崇拝まで合わさると、本当に大変だな。いつもお疲れ様です」
ホークス「ああ、うん、ありがとね……。って言うか、そう言うことはもっと早く言って。絶対一回や二回どころじゃないでしょ、それ」
椿「まぁ、両手では足りないくらいには。あと、それがもとで自称ファンと雑誌記者にストーカーされたことがある」
ホークス「分かった。とりあえず今まであったこと、全部紙に書き出してくれる? 顔とか名前とか、出来る限り詳しく書き出してくれると助かる」
椿「記者の人は名刺を取って置いてあるから、今度持ってくるよ」
ホークス「優秀」
***
常闇「羽飼はどのように飛ぶんだ?」
椿「私は翼が歪だから、飛ぶよりも滑空する方が得意なんだ。だから、君の参考にはならないかもしれない」
常闇「問題ない。良ければ一度見せて欲しい」
椿「構わない。高い崖のある演習場が良いのだけれど……」
常闇「普通科はあまり演習場に縁がないのだったな。場所は把握している。先生に使用許可を貰っておくから、都合の良い日時を教えてくれ」
椿「分かった」
***
A組のみんなと!
椿「ホークスのコラボパーカーを買いたいのだけれど……」
常闇「ああ、あの背中部分に剛翼が刺繍されている?」
椿「ああ。でも、私の背中にも剛翼があるから、穴を開けないと着れないんだよな……」
障子「丁度、刺繍が入っている部分だな……」
椿「買っても飾るだけになってしまうから、どうしたものかと」
麗日「背中に羽があると、そう言う事もあるんだね」
芦戸「服選びも大変だね」
椿「もういっそ、よく似たパーカーを買って自分の剛翼でコラボするしか……」
瀬呂「ツッコミ待ちか???」
耳郎「その写真送ったら? ホークスなら喜びそう」
椿「喜ぶかな……」
***
送ってみた
ホークス「無理、尊い」
SK「ホークス、落ち着きんしゃい」
事務員「まぁ、年の離れた妹がかわいいのは分かります」
事務員「でも、そうですよね。妹さんにも剛翼ありますし、背中に柄が入っている服だと、折角のコラボも台無しになっちゃいますよね」
ホークス「……………次のコラボは背面は無地でいきます。いや、いっそオーダーメイドの方があの子に似合うの作れますね。サイズ確認しないと……」
SK「ホークス、大事な事やから二回言うけんね。落ち着きんしゃい」
***
椿「兄さんから服のサイズを問うメールを寄越されたんだけど」
耳郎「どこから突っ込めばいい?」
瀬呂「兄妹だからセクハラ案件にはならなそうだけど、どういうつもりで聞いてんのホークス」
椿「どうやら新しいコラボ衣装を作るらしくて、私の分を贈ってくれるんだそうだ」
上鳴「あ、そういうことね」
切島「そう言えば、前に自前剛翼コラボ写真送ったもんな」
芦戸「コラボパーカー買えなかったから自前の羽根でコラボしましたーってやつね」
耳郎「やっぱ自分のグッズとか買ってもらえると嬉しいんだろうね。それが友達とか家族ならなおのこと」
上鳴「今回のコラボパーカーは着られなくて残念ってことだったから、次のやつは背面に柄とか入ってないやつ作ってくれそうだよな」
瀬呂「私情挟みまくり〜!」
芦戸「でも、翼関連の個性の人には嬉しいし、前面に柄のあるデザインが好きって人にも需要あるだろうから、新規開拓って事になるんじゃない?」
***
後日届いた
芦戸「ホークスと色違いのヒロコスじゃん! かっこいい!」
椿「流石に全く同じデザインではないけどな」
耳郎「黒メインに赤の差し色かぁ。超良いじゃん!」
八百万「椿さんにぴったりですわ」
椿「ありがとう」
緑谷「…………」
轟「ん? どうした、緑谷」
緑谷「いや、その……どこを探してもホークスの新作グッズの情報が出てこなくって……」
切島「そんなことあるか? ホークスのグッズなんて即完売する程人気じゃん」
上鳴「情報非公開で商品出すメリットってあるか?」
尾白「俺たちが想像出来ないだけで、何かしらの利益が出るんじゃない?」
瀬呂「事前情報無しに販売して、話題を掻っ攫うとか、そういうサプライズ的な?」
葉隠「普通に試作品を贈ってくれたとかじゃない?」
緑谷「その可能性も捨てきれないけど、もしかしてこの衣装、羽飼さんに合わせてオーダーメイドしたんじゃ……」
瀬呂「いやいやいや」
耳郎「流石にそれはないんじゃない?」
緑谷「でも、裏地を見てよ。よく見ないと分からないけど、花の模様が描かれているんだ。これ、椿の花じゃない?」
「「「………………」」」
椿「…………ちょっと確認してくる」
椿「オーダーメイドだった」
耳郎「わ、わぁ………」
瀬呂「どういう感情で見れば良いの、そのジャケット」
椿「まぁ、色々言いたいことはあったけど、嬉しいものは嬉しいから、ひとまずお礼だけは伝えておいたよ」
緑谷「うん、それで良いんじゃないかな……」
***
轟「羽飼、結構エグいな……」
緑谷「剛翼とピアノ線使ったブービートラップとか凶悪以外の何者でもない……」
瀬呂「そこにとんでも切れ味の風切り羽……。いや、マジでえげつない」
切島「近距離、遠距離、空中からの攻撃も可能。その上サポートも熟せるって、どこの事務所でも引っ張りだこだよな」
上鳴「ぶっちゃけ第二のホークスだからな。スピードない分、攻撃力に振った感じの」
***
爆豪「………おい、鋼女」
椿「ん? 私のことか?」
爆豪「お前以外に誰が居んだよ。………お前、身長いくつだ」
椿「え? 確か、182、だったかな……」
爆豪「チッ! 縮めや!」
椿「そんなこと言われても……。君が背を伸ばしてくれ」
爆豪「ウッセェな! ぜってぇ見下ろしたるからな!!」
爆豪には刀馬鹿か鋼女と呼ばれている。
***
瀬呂「お兄さん大好きね~」
芦戸「ホークスの話すると、いっつも背中の羽がバサバサしてるよね~」
椿「ふふ、そうなんだ。私は兄さんが大好きだよ」
***
椿「兄さんったら、すごく過保護なんだ。私の翼は飛ぶのに適していないけれど、飛べないわけではないんだ。だと言うのに、こっそり羽根を飛ばしてサポートしてきて……」
常闇「ふふ、そう言いつつ、顔は嬉しそうだぞ?」
椿「ふふ、子供のような扱いだけど、大切にして貰っている証拠だから嬉しいんだ」
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