一方通行
「はぁ……」
シューティーは深いため息をついた。
彼の目線の少し先では、サトシとシンジがいる。
手をつないで歩く姿は初々しいカップルそのもので、シューティーは更に深い息を吐き出した。
(いいなぁ、サトシ。僕もシンジと手をつなぎたい……)
シューティーはシンジに恋心を寄せている。
そんなシューティーの目の前で2人が手をつないでいるのは、彼らが照れと浮かれでシューティーの存在に気付いていないからに他ならない。それがシューティーの嘆息を助長させていた。
(デートだって、してみたいな、)
2人は手をつないで、どこかへと向かっている。おそらくデートだろう、とあたりが付けられた。
(今度、買い物にでも、誘ってみようかな、)
「ねぇ、シンジ、買い物に付き合ってくれない?」
「は?」
シューティーがシンジに声をかけたのは、彼がシンジを見かけて3日が過ぎた午後のことだった。
「必需品を買い替えようと思うんだけど、なかなかいいのが見つからなくてさ。君の方が旅の経験が長いし、アドバイスをもらおうと思って」
「買いものくらいならかまわないが、また今度でもいいか?」
「別にいいけど、どうして?」
「……先約がある」
わずかに染まった頬に、シューティーはサトシだな、と眉を寄せた。
(この前もデートしていたくせに、)
ずるい。
シューティーは一歩前に出て、シンジとの距離を詰めた。
「じゃあ、いつならいい?」
「え?」
ぐっと距離を詰めてきたシューティーに、シンジが戸惑ったような声を上げる。
――サトシが近寄っても、こんな風に困ったりはしないのに。シューティーは顔をしかめた。
「お、おい……?」
「いつ?」
「あ、明日なら……」
「駄目だよ」
シンジの背後から、手が伸びてくる。
グローブをはめた手が、シンジの腕をつかみ、そのままシンジを引き寄せた。
「さ、サトシ……」
「駄目だよ、シンジ。俺以外の奴と2人きりで出かけるなんて」
「な、何言って……」
腕を掴んでいた手を降ろし、サトシがシンジの指に自分の指を絡める。深くつながれた手に、シンジが赤面した。
(ずるい……)
繋ぎたくてもつなげないのに、自分のライバルは、あっさりとシンジの手を握る。
目の前の2人がお互いを想い合っていることは事実だが、だからと言って、諦められることではない。
シューティーがサトシが握っている手とは反対のシンジの手を握った。
サトシと同じように指を絡めて、強く握りしめる。
「僕は諦めない。必ず君からシンジを奪って見せる」
「渡すつもりはないけどな」
「そう言っていられるのも今のうちだよ」
戸惑いついていけないシンジに、シューティーが笑いかける。
「そういうわけだから、覚悟しておいてね?」
おまけ
「シンジ、俺以外になびくの、許さないから」
「なびいてない、いい加減、手を離せ……!」
「やだ」
「痛いから、噛むな……っ」
「い や だ」
(薬指の噛み痕は独占欲の証)
おまけ2
(あああああああああ何やってんだ、僕うううううううううううううう!!!)
(でも、真っ赤になってたシンジは可愛かったなぁ……)
「よし、」
(次は絶対デートに誘おう。あわよくば手をつなぐことを目標に!)
(少年よ、諦めることなかれ)
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