ごほうび






 サトシはポケモンセンターにいた。
 街に来る前にバトルを行ったため、ピカチュウたちはジョーイに預けている。
 ポケモンセンターにはいつも以上に多くの人が集まり、ピカチュウたちの回復が終わる前に日課であったジムバッジ磨きも済んでしまった。
ポケモンセンターに入り、たくさんのトレーナーを見てバトルしたいと思ったが、旅の道中で出会ったトレーナーたちとの連戦を終えた後である。ポケモンたちにバトルをさせすぎた自覚があった。


(結構連戦したし、みんなに頑張らせすぎちゃったし、何かしてあげたいな……)


 少々無茶な指示も出した覚えがあり、サトシはポケモンたちにご褒美をあげたいと考えていた。
 しかし、何が喜ぶのかを考えてみると、案外思いつかないものである。
 仲間達に案をもらおうとして、サトシは仲間たちの発言を思い出していた。
 シトロンは発明品を作ると言っていた。ユリーカは散歩に行くと言って出掛けたし、セレナはポフレ作りのために厨房にこもっている。
 ユリーカは行方が知れないため、案を聞く相手はシトロンとセレナに限られた。
 シトロンは外で行うと言っていたため、正確な場所はわからない。よってサトシは厨房でポフレを作っているセレナのもとを訪れることにした。


(ポフレ、か……)


 厨房へ向けて、サトシが歩き出す。


(そう言えば、ピカチュウもヒノヤコマ達も、みんなおいしそうにポフレを食べてたな……)


 サトシやサトシのポケモンたちはお菓子が大好きだ。食後にデザートがあった時は、我先に、とお菓子に飛びついていた。


(お菓子、か……)


 ――作ってあげたら、喜ぶかな……、


「……よし!」


 サトシはにっと笑って、厨房へと駆けだした。





「セレナ!」
「わっ!? さ、サトシ?」


 厨房でポフレを作っていたセレナはいきなり駆けこんできたサトシに驚きの声を上げた。
 セレナはすでにクリームの作成に取り掛かっており、あとはポフレが焼き上がるのを待つのみとなっていた。
 サトシはまだ調理台に木の実が残っているのを確認し、セレナに笑みを向けた。


「セレナ、少し木の実を分けてくれないか?」
「え? あ、うん。いいけど……」
「ありがとう!」


 サトシは早速木の実を選び、セレナの使っている調理台の隣の調理台に器具を並べ出した。
 その慣れている様子に、セレナが驚く。


(サトシって料理できたっけ……?)


 シトロンの手伝いをしているのを見るのは少なくはない。しかし、自分で何かを作っているのは、ポケモンフーズくらいしか見たことがなく、セレナは首をかしげた。
 セレナはポフレが焼き上がり、最後の仕上げに取り掛かっていた。
 サトシはポフレよりも手軽なものを作っているようで、作り始めて間もないが、すでに生地を焼き始めていた。
 何を作っているのか気にかかったが、あまりにサトシが真剣な表情をしていたため、セレナも自分の作業を優先させた。


「よし、できた!」


 サトシが完成を宣言したのはセレナが片づけを終えた直後だった。
 大皿に乗せられているのは、木の実の色があらわれている色とりどりの円形のお菓子だった。


(パンケーキ? に、しては小さいよね……?)


 あれは何なんだろう?とセレナが首をかしげた。


『マサラタウンのサトシ君。アサメタウンのセレナさん。ミアレシティのシトロン君。ポケモンの回復が終わりましたよ』


 ジョーイのアナウンスが厨房に響く。
 片付けもそこそこに、サトシ達はロビーに向かった。
 ロビーには外から帰ってきたらしいシトロンとユリーカが降り、ジョーイに預けていたポケモンたちを抱えていた。


「ぴかっちゅう!」
「ヤッコー!」
「ゲェロ」
「ルチャッ」
「メラ~」
「みんな、元気になってよかったな~」
「ぴっかぁ!」


 一匹ずつ頭をなでて、サトシが嬉しそうに笑う。サトシに頭をなでられて、ポケモンたちも嬉しそうだ。


「みんな、バトル頑張ってくれたから、俺から御褒美があるんだ」
「ゲロ?」


 不思議そうな顔をしたポケモンたちに、サトシは満面の笑みを浮かべた。





「うまく作れたかわかんないけど、みんな食べてくれ!」


 そう言ってサトシが見せたのは、大皿に乗った円形のお菓子だった。
 それを見たピカチュウは歓声を上げたが、初見のルチャブル達は不思議そうに首をかしげた。


「これ、なぁに?」
「プチケーキか何か?」
「これはポフィンだよ。シンオウにあるポケモンのお菓子。人間も食べられるから、シトロンたちも食べてくれよ」
「はい!」


 好きなポフィンを取り、口に運ぶ。甘い木の実を選んで作ったため、口の中には甘みが広がった。


「おいしー!」
「メッラァ!」
「チャブー!」
「ヤッコー!」


 頬を緩めてポフィンをほおばるユリーカの感想に、ポケモンたちもそろってうなずく。
 手放しの称賛に、サトシが照れたように頬を掻いた。


「久しぶりに作ったから、あんまり自信なかったけど、喜んでもらえてよかったよ」
「おいしいですよ、サトシ!」
「ホント!」


 シトロンたちも、彼らのポケモンたちからも、ポフィンは好評で、サトシは嬉しそうに笑う。
 自分のポケモンがおいしそうに頬を緩ませているのを見て、セレナがパン、と手をたたいた。


「これって、木の実から作ったのよね?」
「そうだよ」
「今度作り方教えて!」
「あ、私も作りたーい!」
「じゃあ、今度みんなでつくろうか。多分ポフレより簡単だし」
「「うん!」」


 サトシの作ったポフィンに、シトロンが入れたさっぱりした紅茶。ポケモンたちへのご褒美として始まったお菓子作りは、ちょっとしたお茶会となった。
 丁度、おやつ時のことである。




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