ゆっくりだけど確実に
『デートを終えた帰りに、ジャリボーイの服の裾を握って目を閉じてみなさい。幾ら鈍感なジャリボーイでも、雰囲気的にわかるでしょ』
――自分からキスをねだるくらいしないと、いつまでたっても進展しないわよ。
そう言って意地悪く笑ったら、相手の少女は酷く赤面した。
同年代の中では大人びているが、自分たちから見ればまだまだ幼い子供。初々しい反応にムサシが笑うと、少女は慌てて走り去った。その時の情景を思い出しながら、ムサシがぽつりと呟いた。
「デート、どうなったかしらねぇ?」
「成功したんじゃないか?」
「きっと成功したのにゃ」
ムサシたちは街外れの森で野宿をしていた。
ロケット団は万年金欠状態で、宿代は掛けないようにしていた。
アルバイトを終えた3人は、野宿先で星が輝き始めた空を見つめていた。
あの後2人がどうなったかは知らない。けれどもなんやかんやでうまくおさまってきた2人だ。今回も多少の失敗はあるかもしれないが、ひどいことにはなるまい、と確信していた。
「ん……?」
闇夜に、一羽のポケモンがロケット団に向かって飛んでくる。そのポケモンには見覚えがあり、ムサシたちは顔を見合わせた。
「ア゛アー!!」
一羽のポケモンがロケット団に向けて、何かを落とす。
一羽のポケモン――ドンカラスは一声鳴いて、また元来た道を戻り始めた。
振ってきた何かはコジロウが受け止め、受け止めたものを確認した。
「バスケット?」
「で、ドンカラスなんて?」
「受け取れ、とだけ言ったのにゃ」
「じゃあ、これは私たちが貰っていいわけ?」
おそらくは、と頷くニャースを見て、コジロウがバスケットを開けた。
「「「おお~~~!!!」」」
中身はおいしそうなサンドイッチだった。綺麗に三角に切られたものもあれば、やや台形に近いものもある。一緒に同封された小さな紙切れを開き、コジロウが読み上げた。
「えっと、なになに? ”チケットありがとう。これは俺とシンジからのお礼”だって」
「ってことは……」
「デートは成功ってこと?」
自分のように嬉しそうにムサシとコジロウがハイタッチを交わす。順にハイタッチを交わし、最後にコジロウとニャースでハイタッチを交わしていたとき、ムサシがもう一枚手紙が入っていることに気がついた。
2人に気づかれないようにそれを開き、一瞬目を見開いて、それから口元を緩ませた。
――頬だったけど、してもらえた
不自然に小さくなっていく文字を見て、ムサシが声を立てて笑う。
「何よ、予想以上にいいデートだったんじゃない」
心配して損したわ、と言って、ムサシはサンドイッチを頬張った。
※あくまでリクエスト作品ですので、ここでのデートやら何やらは本編には反映されません。
本編ではなかったことにされますがあしからず。