かわいいところ






「どうやらこの子は記憶障害を起こしているわね」
「え?」


シンジをポケモンセンターに連れていくと、ジョーイさんが難しい顔をしてそう言った。
シンジは次のジム戦に向けてこの町でポケモンの調整をしていたらしい。
このジョーイさんとは顔見知りだった。
だから普段のシンジを知っているジョーイさんは深刻そうな顔をしていた。


「シンジさんは今、自分の性格についての記憶がなくなっているわ。それに伴う記憶もね」
「自分の性格・・・?」
「そう。詳しくはわからないけど、彼女は自分の性格にコンプレックスがあったのかもしれないわね。それが今回、何らかの原因が合って頂点に達してしまった。それが軽い記憶障害を引き起こしてしまったみたいね」
「そんな・・・」


シンジが記憶障害?
そんなまさか。
嫌でも、さっきのシンジはどう見てもいつものシンジじゃなかった。


「サトシくん。あの子は頭に強い衝撃を受けたわけでもないのに性格が変わってしまった。おそらく精神的なものだわ。あなたはあの子と親しかったのよね?」
「は、はい・・・」
「記憶というのは親しかった人と一緒にいる方が想いだしやすいわ。出来るだけ本来の性格に肯定的に接してあげて。でも、だからと言って今の性格に否定的になっちゃだめよ?下手したらまた新しい人格が形成されて、多重人格障害を引き起こしてしまう可能性があるわ」


難しいことだけど、頑張ってくれる?
ジョーイさんにそう聞かれて、俺は強くうなずいた。
俺は、いつものシンジが好きなんだ。




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