かわいいところ






俺――サトシ――は昨日久々にライバルのシンジと再会した。
調整中ということでバトルは断られてしまったけど、またシンジと出会えて嬉しかった。
口と目つきが悪いことをユリーカたちには少し怖がられていたけれど、本当はシンジが可愛い女の子だってことを俺は知っている。
それを誰かに教えてやるつもりはないけれど。


「(そういえば、シンジの髪、伸びてたな~・・・)」


首筋ほどまでしかなかった髪は、もうすぐ肩につくくらいにまで伸びていた。
少し大人っぽく見えて、すごくドキドキした。
シンジは髪を伸ばしてもきっとすごく可愛いんだろうな。


「ぴか?」
「ん?どうしたピカチュウ?」
「ぴかぴ!」


ピカチュウが驚いたように俺の前方を指さす。
欲目を凝らして見ると、マニューラがこちらに駆けてくるのが見えた。
多分、シンジのマニューラだ。


「マニュー!」
「ど、どうしたんだ?シンジに何かあったのか?」
「マニュ!マニュマニュー!」


俺の服の裾を引っ張るマニューラはひどくあわてているようで、俺とピカチュウは思わず顔を見合わせた。


「マニューラー?どこー?」
「!!マニュ!!」


シンジの声だ。
いつもと違って、語尾が伸びてて違和感があった。
けれど、マニューラが慌てるようなことがあったとは思えないしっかりとした声だ。


「そこにいるの?」


茂みの間から、シンジが顔を出す。
マニューラがシンジに駆け寄ると、シンジは嬉しそうに笑った。


「えっ・・・?」


そう、嬉しそうに笑ったのだ。あのシンジが。
普段、感情の起伏なんてほとんど見せないシンジが。
それはもう、嬉しそうに、可愛らしく。


「あ、おはよう、サトシ。サトシがマニューラを保護してくれたの?」
「え?あ、いや、その・・・」
「ふふ、ありがとう、サトシ」


シンジだ。その女の子は確かにシンジだ。
顔も服も、いつもと変わらない。
ただ、性格だけが、まるで違う。まるで、別人だ。


「し、シンジ・・・?今日、どうしたんだ?」
「え?何が?」
「なんか、今日いつもと違うっていうか・・・、別人みたいで・・・」
「ええ?私はいつもこんな性格じゃない。サトシこそ変だよ?」


具合でも悪いの?と心配そうにシンジが俺の顔を覗き込む。
やっぱり、今日のシンジはおかしい。
いつものシンジじゃないみたいだ。


「シンジ、」
「うん?」
「一緒にポケモンセンターに来て!」
「いいけど・・・。どうしたの?」


首をかしげて不思議そうに眼を瞬かせる。
ピカチュウもマニューラも、そんなシンジを不安げに見上げた。
きっと、俺も同じような顔をしてるだろう。


「とにかく来て!」
「わっ!?ちょ、待ってよ!」


手を引いて走る。
旅をしているうちに傷ついてぼろぼろになった手は、確かにシンジのものだ。
昨日まではいつも通りのシンジだったのに。
一体、何があったんだ・・・?




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