熱に浮かれて






「だから部屋を移れと言ったんだ」


そう言ったのは元気になったシンジだった。
あの後夕方ごろにはすっかり熱も下がったけど、俺が心配だったからこっちの宿に泊まってもらった。
のはいいんだけど、その翌日、今度は俺が風邪をひいた。


「あはは・・・まさか俺まで風邪引くとは思わなくて・・・。ゲホッゲホッ!」


あ゛ー・・・喉痛い。
風邪ってこんなにつらいものだったっけ。


「ほら、水だ」
「ん、サンキュ」
「薬も飲め」
「はーい」


シンジからコップを受け取って水を飲む。
薬も一緒に流しこんだ。
とりあえず粉薬じゃなくてよかった。あれ苦くて苦手なんだよな。


「・・・って、シンジ、看病してくれるのか?」
「・・・昨日、面倒をかけたからな」


うわ、マジか。うわー、嬉しい・・・。


「・・・一応、おかゆ作ってきたが・・・食べれそうか?」
「!食べる!」


シンジの手料理!そんなに食欲ないけどシンジの手料理なら食べたい!


「ほら、」


一人前用の小さな鍋から小皿によそってシンジがおかゆを渡してくる。
おいしそう。
だけど・・・


「食べさせてはくれないのかぁ・・・」
「はぁ?」
「だめ?」


ちょっと「あーん」ってしてもらえると思ってた。思ってました。
駄目かって聞くとシンジはものすごく不機嫌造な顔をした。
やっぱだめかぁ・・・。


「・・・ほら」
「えっ」
「さっさと食べろよ」


シンジがレンゲに少しだけおかゆをすくって口元に持ってくる。
おかゆを食べてみると丁度いい温度で食べやすい。
味わかんないけどきっとすごくおいしいんだろうな。
元気な時に食べたかったなぁって言うのはちょっと欲張りかな。
まぁ、でも、


「(たまには風邪もいいかもしれない)」

























(後は自分で食べろよ)
(えー・・・)
(一回やってやっただけましだと思え)
(もう一回だけ!)
(・・・ちっ)
((嫌がりつつもやってくれるんだからシンジって優しいよな))




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